『うちの男子荘がお世話になります!』⑪
〇EP10『それぞれの思春期』
「晴さんって、反抗期あった? 」
榛くんが去った後、静まった中で、東西くんが切り出した。
「おれ? 」
急に話を振られ、おれは驚きつつも、「うーん」と過去を思い出す。思春期、おれはなにをしてただろうか。もう何年も前の話だし、思い返す機会もなかった。母親がたまに、過去のアレコレを掘り返してくる程度だ。例えば、運動会でリレーの時、バトンの受け渡しのタイミングが合わなくて顔からズッコケて、そのせいで鼻を折ったけど、そのおかげで鼻が高くなった、とか。サッカーの試合、勝てば地区予選進出という重要なゲームで、オウンゴールを決め、それが決勝点になってしまった、とか。今思い出しても苦い記憶ばかりだ。
でも──……
「反抗期かあ……あったかもだけど、特に思い出せないなあ。榛くんみたいに将来の夢もなかったし、結構親の言う通りにしてた気がするなあ。そういう東西くんは? 」
「ボク? 」
人に話を振っておいて、話を振られると東西くんは困った表情を浮かべた。「ボクかあ……」と視線を宙に彷徨わせる。隣で、殿下が意味ありげな視線を向けてるのが気になった。
「ボクねえ」
やっと、視線を前に戻すと、東西くんは話し始めた。
「ボクはそうだなあ。晴さんよりかは反抗期あったんじゃないかな? 一丁前に家出もしたしねえ。まあ、そんな感じだよ。船長は? 」
歯切れ悪く締めくくると、早々に船長に話題を振った。
「船長って、反抗期とかなさそう」
「反抗……しない……」
東西くんの言葉に、船長はゆっくりうなずいた。
「船長のご家族って、どんな感じなの? 」
おれが聞く。船長の家は、ここから10分と歩かないところにあり、大学への送り迎えはもちろん、夕飯のお世話までしてもらっている過保護っぷりだ。どんな環境で育ってきたのか、興味があった。
「家族……」
船長はおれを見てつぶやく。
「ボクも、船長の家族、気になるかな」
東西くんも賛成した。
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