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私が好きなコード進行15パターン

私は日頃からポップス・ロック系の作曲の先生として活動していることもあってコード進行について考えることが多く、またこれまでに仕事として7000曲ほどのコード譜を制作してきた経験から、コード進行についての知見も溜まっています。

そんな中で時折、

「好きなコード進行はありますか?」

と質問されることがあり、そういわれてみると確かに紹介したくなるほど好きなコード進行がいくつかあるものです。

そして、日頃からこれだけコード進行に接していながら「好き」という観点でそれらをまとめたことはなかったため、こちらではその点について改めて整理してみることにしました。

あくまで私の好みになってしまいますが、魅力的な響きを持つコード進行ばかりなので、良かったら作曲に活用してみて欲しいです。

※こちらでは、わかりやすさを優先してキーを「Cメジャー」に統一してご紹介します。


「トニック始まり」の型

1. トニック「I」から順次進行でコードをつなぐだけ

【例】
「C→Dm→Em→F」

まず初めにご紹介するのが、単にトニック「I」からダイアトニックコードに沿ってコードを順次進行でつなげただけの進行です。

とてもシンプルな形ですが、ルートがスムーズに上昇していく心地良さがあります。

また、コードがこのように四個つながることで最終的にサブドミナントコードの「F(IV)」へ行き着くため、ストーリーが適度に展開するところも気に入っています。

実際のところ、これをセブンス(四和音)にして、

「CM7→Dm7→Em7→FM7」

のようにする構成を私は好んで使っています。

【補足】セブンスにすることで、響きがより豊かになります。

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2. ルートを半音ずつ下げる

【例】
「C→GonB→B♭→Am7」

次に挙げられるのが、分数コード(オンコード)を活用してルートのつながりを作るコード進行です。

この例のように、トニックからルートが半音で下がっていくようなコード進行はその代表的なもので、ここではルートが

「ド→シ→シ♭→ラ」

と半音で下がりながらつながっています。

半音進行には独特の響きがあり、ここにメロディが乗るとそれらがとても際立ちます。

また、上記例では「B♭」がノンダイアトニックコードとなっていますが、この部分も分数コードにして、

「C→GonB→C7onB♭→Am7」

のようなかたちとする構成もあります。

この辺りはお好みですが、「B♭」を活用した方がより力強いサウンドになります。

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3. 「VI7」のツーファイブ化

【例】
「C→Em7-5→A7→Dm7」

次は、セカンダリードミナント「A7(VI7)」を活用した構成で、ここではそれをさらにツーファイブ化して「Em7-5→A7」という流れを作っています。

そもそもセカンダリードミナントには独特の味わい深い響きがありますが、ツーファイブにすることでそれをさらにしっかりと味わうことができるため気に入っています。

ここで例として挙げているように、トニック「C(I)」から直接「Em7-5(IIIm7-5)」につながるところも良いです。

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4. パッシングディミニッシュの活用

【例】
「CM7→C#dim→Dm7」

次がパッシングディミニッシュ活用の形で、ここではシンプルにそれを「CM7」と「Dm7」に挟む形で盛り込んでいます。

「C#dim」は「A7」に似た響きを持っているため、このコード進行は

「CM7→A7→Dm7」

の変形とも解釈できますが、それをあえてディミニッシュで表現することにより、ルート音の

「ド→ド#→レ」

という半音進行を作ることができています。

前述したように、やはり私はルートの半音進行が好きなようです…。

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5. オーギュメント(オーグメント)コードを活用したシンプルパターン

【例】
「C→Caug→C→Caug」

次に挙げられるのがオーギュメント(オーグメント)コード「Caug(Iaug)」を活用した構成です。

このようなツーコードの進行はとてもシンプルですが、これをオーギュメントコードとの組み合わせによって行うと、ルート音「C」が保持されコード進行に安定感が生まれます。

それぞれの構成音は、

  • C=ド・ミ・ソ

  • Caug=ド・ミ・ソ#

となっており、上記コード進行は「ソ」の音のみがゆらゆらと変化するような響きを生みます。

コード進行が安定していながらも、このように微妙なサウンドの揺らぎを楽しめる、という点が特に好きで活用しています。

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6. ボサノバ定番進行

【例】
「CM7(9)→D7(9)→Dm7(9)→G7(13)」

「トニック始まり型」の最後としてご紹介するのが、ボサノバの定番として活用されているコード進行です。

すべてのコードにテンションが付加されているのはボサノバならではというところですが、ポイントとなってるのが二つ目の「D7(9)」、そしてそこから微妙に変化する「Dm7(9)」です。

この「メジャー→マイナー」の切り替えがなんとも心地良く、手軽にブラジル音楽の雰囲気を出すことができるため気に入っています。

【補足】私が専門とする楽器がギターであるため、「ギターで弾きやすい」という点もこのコード進行を好む理由のひとつだといえます。

「サブドミナント始まり」の型

1. サブドミナント「IV」からの順次進行でルートを下げる

【例】
「FM7→Em7→Dm7→CM7」

ページ前半ではトニック「I」から始まるコード進行のみに絞ってご紹介しましたが、好きなコード進行を考えるにあたり、同様にサブドミナント「IV」「IIm」から始まるものも無視できません。

ここで挙げているコード進行は、前述した「CM7→Dm7→Em7→FM7」を反対方向に進ませるような構成だといえます。

同じくシンプルな形ながら、サブドミナントコードが順次進行によってトニックコードに落ち着く心地良さを持っています。

2. 上記進行の応用

【例】
「FM7→Em7→Dm7→D♭7→CM7」

次にご紹介するのが上記の応用型で、ここでは「Dm7」と「CM7」の間に「D♭7」が挟まれています。

この「D♭7」は「裏コード」と呼ばれるコードで、向き先の「CM7」に対するドミナントコード「G7」から置き換えられたものです。

「D♭7」と「G7」それぞれの構成音は、

  • G7=ソ・シ・レ・ファ

  • D♭7=レ♭・ファ・ラ♭・シ

のようになっており、「ファ」「シ」が共通して存在していることから、双方が似た響きを持っているとわかります。

この「裏コード」の活用によって、上記コード進行では

「レ→レ♭→ド」

という、心地良い半音のつながりが生まれています。

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3. サブドミナントマイナーへの変化

【例】
「FM7→Fm6→Em7→Am7」

サブドミナントコードをマイナーに変化させた「サブドミナントマイナー」のコードも私は好んでよく使っており、ここで挙げたコード進行はそれを象徴するようなものです。

サブドミナントマイナーコードは、その名の通り「サブドミナントコード(IV)」を単にマイナーコードにすることで作り上げることができます。

この例では、その応用として「Fm6(IVm6)」を活用しており、それによってさらに響きが多彩に、かつ味わい深いものになっています。

【補足】ここでの「Fm6」のように、サブドミナントマイナーコードにはさまざまなアレンジを加えることができます。

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4. 複数の組み合わせ、および応用

【例】
「FM7→Fm6→Em7→E♭7(9)→Dm7→D♭7(9)→CM7(9)」

上記の例は少し長めの展開となっていますが、ここまでにご紹介したいくつかの構成を組み合わせたようなコード進行もつながりがスムーズで重宝しています。

盛り込まれている要素は、

  • サブドミナントコードから順次進行によってルートを下げる

  • サブドミナントマイナーへの変化

  • 裏コードの活用

などです。

このようなコード進行は個人的に大好きで、もはや手癖的によく演奏してしまいます。

5. テンションコードを使った逆循環

【例】
「Dm7(9)→G7(13)→CM7(9)→A7(♭13)」

次に挙げているのは同じくサブドミナントコードの「IIm7」から始まるコード進行で、ここではテンションが付加され、響きが都会的なものになっています。

見るとわかる通り、このコード進行の骨組みは

「Dm→G→C→A7」

で、これは「逆循環コード」などと呼ばれるコード進行の一種です。

私が好むコード進行のひとつに、

「スタンダードな骨組み」+「テンションコードによってその響きを多彩にする」

という種類のものがあり、こちらの構成はその代表的なものといえます。

逆循環コードならではの説得力とテンションコードによる大人びた響きが同居しており、気に入っています。

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6. 「II→V→III→VI」の一部をフラットファイブにする

【例】
「Dm7→G7→Em7-5→A7」

次に挙げたこちらのコード進行も、逆循環コード的な骨組みを持ったものです。

その上で、ここでは

「Em7-5→A7(IIIm7-5→VI7)」

という流れが組み込まれており、前述したようにそれが味わい深い響きを生んでいます。

この例にある「II→V→III→VI」という度数の流れも定番ですが、フラットファイブのコードなどによってサウンドをアレンジすると、それらをリッチなものとして演出することができます。

根本的にフラットファイブ系のコードも好きで、よく活用します。

7. 「IV→III7」に9thテンション付加

【例】
「FM7→E7(#9)→Am7」

次に挙げられるのが、「E7(III7)」をロック的に響かせるコード進行です。

【補足】この「E7」は「Am7」のドミナントセブンスコードにあたるため、このコード進行は「キー=Aマイナー」とした方が解釈しやすくなります。

ここでは「E7」に9thのテンションが付加されている構成となっていますが、このようにドミナントセブンスに付加するテンションは「#」や「♭」をつけて変化させることができます。

それによってテンションの響きがさらに尖ったものになり、コード進行全体から攻撃的な雰囲気が感じられるため、ロック的なムードを強めたい時などによく好んで使っています。

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8. サブドミナントマイナー終止

【例】
「Dm7→Fm7→C」

「サブドミナント始まり型」の最後に挙げられるのが、前述した「サブドミナントマイナー」から直接トニック「I」に落ち着かせるコード進行です。

【補足】この「トニックへ落ち着かせること」を「終止」などと呼び、中でも「サブドミナントマイナー」からそれを実施するやり方は、「サブドミナントマイナー終止」という名称によって特殊なものとして扱われています。

ドミナントコードをあえて排除することで静かな終止の雰囲気が生まれていますが、サブドミナントマイナーコードがそこにさらに切ない響きを加えているとわかります。

サビの終わり部分など、コード進行のストーリーが締めくくられる場面などにおいて、好んでこのような構成を活用しています。

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その他

「I7」のツーファイブ化

【例】
「Gm7→C7→FM7」

最後のひとつとして挙げられるが、セカンダリードミナントコードの「C7(I7)」をツーファイブ化して「Gm7(Vm7)」を導いたコード進行です。

ここでの「Gm7→C7→FM7」は、「キー=Fメジャー」におけるツーファイブワンとも解釈できますが、このように部分的転調のような雰囲気が生まれるところを特に気に入っています。

この「Gm7(Vm7)」には「ドミナントマイナー」という名称が付けられており、数あるノンダイアトニックコードの中でも特徴的なものとされます。

サブドミナントコードに向かう流れの中でよく活用されますが、メロディと組み合わせることでその個性なサウンドをより引き立てることもできます。

まとめ

ここまで私の好きなコード進行を改めて整理してご紹介してきましたが、個人的にR&Bやブラジル音楽などの多彩な響きを持つ音楽を好むため、セブンスコードやテンションコードが多めになってしまいました。

上記で述べた解釈は、以下のページでも解説している「コード進行の分析」によってより深く理解することができます。

これらも含め、是非お気に入りのコード進行を見つけてみて下さい。


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