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誰かの人生の一部になること

中目黒駅から徒歩5分のところにある正覚寺。
この日は天気がよかったこともあり、知り合いとの待ち合わせより30分早く出て、一人でふらっと立ち寄りました。

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中目黒駅からニトリ側に歩き、ガソリンスタンドを左に曲がってすぐのところにある日蓮宗のお寺です。

この日立ち寄った目的は、畜牛供養塔
そう、このお寺には、家畜としての牛を弔う供養塔があるのです。

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目黒区教育委員会による説明が添えられていました。
少し見にくいので、下に書き出します。

目黒には明治中頃から昭和初期にかけて数多くの牧場があり、地域の人々に新鮮な牛乳を供給していました。
しかしそれらも目黒の都市化とともに姿を消し、今日では全くその姿をとどめていません。
橋本牧場は明治20年(1887)頃から大正12年(1923)まで上目黒4丁目あたりに3千坪(約1万㎡)ほどの敷地で存在した牧場で、畜牛供養塔は経営者の橋本寿吉氏により牧場廃業時に敷地の片隅に立てられたものです。
その後、開発等により慰霊碑は移転を繰り返しましたが、平成19年に現在の場所に安置されました。
区内に牧場があったことを物語る数少ない貴重な資料です。
平成21年3月 目黒区教育委員会


・昭和初期まで、目黒区は牧場が点在していた。(乳牛?)
・この供養塔は、大正時代に橋本牧場の経営者が廃業時に立てたもの。

廃業の際に、行き場をなくした牛たちがたくさん死んだのかな。

事前知識ゼロのまま、少しの興味がきっかけで立ち寄った供養塔。
かつて目黒区で使役されていたであろう牛たちに、またこれから自分が口にするかもしれない牛たちに、感謝を込めて手を合わせて帰ってきました。




なぜ供養塔を見てみようと思ったか。

私はビーガンではないです。
付き合いで焼肉に行くこともありますし、肉料理を出されたら食べます。(食べ物を残すのは一番だめ!)

でも最近、自ら好んで肉を選択することはなくなりました。
それは、単純に小さい時から肉があまり好きじゃない(私は食の細いひょろひょろとした子供で、咀嚼するのが面倒臭いと思っていました)ことや、若い頃はよく行っていた焼肉も、年齢を重ねてからは食べない方が体が軽いし内臓の調子も良さそう(私の体にあってないのかも?)といった理由もあるけれど、振り返って考えると人生の折々で、畜産動物の命について考えさせられる局面があったからかもしれないなと気付きました。



少しの興味から立ち寄った家畜供養塔。
立ち寄ろうと思うに至る記憶を遡ってみました。

最初の衝撃は「ブタがいた教室」でした。

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いつだっけと調べたら、妻夫木聡さん主演で2008年公開でした。
実際の大阪の小学校で900日にわたり行われた授業を基に作られた作品です。

※以下少しネタバレが含まれます。
「大きくなったらみんなで食べよう」と担任教師が教室に連れてきた子豚を、生徒たちが「Pちゃん」と名付けて世話をするというストーリーです。
Pちゃんと共に過ごしていく中で、次第に生徒の意見は「食べる」「食べない」で真っ二つになっていきます。
クライマックス、卒業を控えた生徒たちがPちゃんを食べるか食べないかのディベートシーンは、子役たちに台詞は与えられておらず、彼らが自身で悩み考えた意見を反映させたのだとか。

私は昔からこの手の映画にとても弱く、すぐにメンタルが崩壊してしまうので、観ようと決心するまでに時間がかかったのを覚えています。
観終わったあとは、予想通りしんどかった。
当時の私は、「食べない」を主張する生徒たちの可哀想という気持ちにどっぷり感情移入してしまったので、Pちゃんを生かそうと奔走するも、どの案も実らないまま無常にも進んでいくストーリーがただもう悲しくて悲しくて、嗚咽するしかないといった感じでした。
当時大学生だった私は映画が終わってしばらく、ショック状態のたいして回らない頭で、肉を食べることについて考えた末、母親にもう肉は食べたくないなどと安易に言って困らせた記憶があります。(母親の返答は忘れてしまった)

それまで何も考えずに美味しいと食べていた豚をはじめとする家畜動物にも、ペットとして愛されている犬や猫同様に命があり、大切にされるという選択肢もあるのだと意識するきっかけになった映画でした。
でもその時は衝撃の方が強く、深く考えることはできませんでした。



家畜からは少し話が逸れますが、
去年の秋頃Netflixで話題になった「オクトパスの神秘:海の賢者は語る」には強い感銘を受けました。

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原作は「MY OCTOPUS TEACHER」です。
アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞し、少し話題になっていたので、ご存知の方もいるはず。

男性とタコの交流を描くドキュメンタリーなのですが、種を超えた愛情に胸が熱くなると同時に、タコの想像を超える知能の高さに驚かされる作品です。


※以下少しネタバレが含まれます。
人生に疲れた男性が、海の中で出会った一匹のタコ。
タコは魚を相手に、貝殻を纏い己をカモフラージュして逃げ切ります。
(添付したサムネイルがカモフラージュの場面です)
このタコに特別なものを感じた男性。
毎日会いに行ったらどうなるだろう?
一年間同じタコのもとに通い続ける男性とタコの、種を超えたラブストーリーです。
(人間とタコのラブストーリーというとチープに聞こえるかもしれないですが、多くの観終わった方が言うように、観進めるうちにラブストーリーに感じてしまうのです)

是非観ていただきたい。

そして、この映画を観て少し経ってから発表されたのが、
サンフランシスコにある大学の研究チームが発表した
タコには身体的および感情的な痛みがある
という研究論文でした。
痛覚実験の結果、タコが痛みに持続的な負の感情状態を持つこと示しており、それらのタコの反応は、哺乳類に見られる痛みと類似しているのだそうです。

そして今年、2021年11月に、
イギリス政府はタコ以外にもイカやカニには痛みの痛覚があることを認定。
動物福祉の対象に含まれました。

「オクトパスの神秘」を観ていたからこそ目に留まったニュースだと思います。

映画や本などエンタメから入る情報の一部が、無意識下で自分の中に強く根付いているのだということを実感した作品です。

また最近、ふたたび家畜動物の命について考える機会がありました。

現在私は、日本でペットとして扱われている犬猫の現状を、色眼鏡が掛かる前の若い世代に、よりわかりやすく、より敷居が低い状態で認知してもらうべく、絵本の製作を進めています。

ですが今年頭の自主制作映画同様、絵本の製作もはじめてのため右も左もわからず…日々多くの絵本を読み漁っています。

そんな中で「もうじきたべられるぼく」という絵本に出会いました。

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ストーリーはおおかた皆様の想像の通りです。

※以下少しネタバレが含まれます。
自分がもうすぐ食べられることを知り、別の牧場に暮らす母親に会いにいくというストーリーです。
自分もぞうやキリンのように愛されたかったと振り返るシーンなどは、子供でも共感しやすそうな作りになっています。
一方で、食用牛が生後間も無く母牛から引き離されて育つという設定は、人間ではありえないですが、家畜の悲しいリアルを伝えています。

リアルを低刺激な物語として伝える、子供へ伝えることの難しさを感じた絵本でした。




こういった作品が意識下に残り、
家畜供養塔に足を運んだのかもしれません。

記憶を遡って感じたのは、
私のアイデンティティは、私の目に触れたもの・感じた体験でできている。
同じように、映画も絵本も、誰かの人生の一部になる可能性がある。
そう考えると、絵本製作の意欲が高まります。



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