「共同親権」報道訴訟、原告側が最高裁に上告受理申し立て
ニュースサイト「SAKISIRU」(休刊中)で掲載した共同親権の関連記事で名誉を傷つけられたとして、フランス人男性と親権を争った元妻の日本人女性が、運営会社のソーシャルラボ(新田哲史代表)と執筆者のノンフィクションライター西牟田靖氏を相手取り、330万円の損害賠償や記事の削除を求めた訴訟で、原告の元妻側が一、二審ともに敗訴した判決内容を不服として、10日に最高裁に上告受理申立てをしたことが明らかになった。
訴訟の経緯
原告の女性は、SAKISIRUが2022年7月、女性と夫(当時)のフランス人男性が親権を争った離婚訴訟の判決について取り上げた際、女性について「国際指名手配していたのだ」と書いたことを巡って「国際刑事警察機構(インターポール)を通じて各国に手配された事実はない」と名誉毀損を主張。
さらに女性側は、SAKISIRUが記事の中で離婚協議や子どもを連れ去ったことを報じたことについて、親権制度の問題点を読者に伝える意図があったとしても、プライバシーの侵害にあたると主張し、昨年4月7日付で提訴していた。
SAKISIRU側はこれに対し、フランスの裁判所が「ディフュージョン」と呼ばれる制度を使い、国際手配の令状(原文:MANDAT A DIFFUSION INTERNATIONALE)を手配していたことなどを示し、「名誉毀損となる余地はない」と反論。プライバシー侵害については、パリの裁判所で逮捕状が出されたことなど記事内容の公共性を踏まえ、「プライバシー権の侵害となる余地はない」と主張した。
一審、二審の判決
東京地裁は今年3月、SAKISIRU側を全面的に支持する判決を下した。しかし女性側は控訴し、6月に開かれた控訴審は即日結審していた。
東京高裁は8月18日の判決で、記事中の「国際指名手配」の記述について一審判決よりも詳しい評価を追記。「国際指名手配」とインターポールによるディフュージョン制度に相違があると述べ、当該記事について「正確性を欠く部分があった」と苦言を呈した。
それでも判決では、実際にディフュージョンの手続きが取られたことを踏まえ、「本件摘示事実の重要な部分が真実であることの証明があったと認めるのが相当」と認定。原告側のプライバシー侵害の主張も退け、一審に続きSAKISIRU側の完全勝訴の判断を下した。
判決確定日は今月6日だったが、SAKISIRU側の代理人弁護士が高裁に確認したところ、女性側が上告受理申立てをしたことが10日判明した。最高裁への上告理由に多い憲法違反とは別の主張をする模様だ。
当社声明〜厚顔無恥な弁護士の濫訴
昨日(9月10日)、弊社が一、二審とも完勝した名誉毀損訴訟について、原告側が最高裁に上告受理申立てをしたことが判明しました。原告側、特に訴訟代理人を務める弁護団のタチの悪さと厚顔無恥ぶりに驚き、呆れ、これ以上ない憤りを感じています。
一般的に裁判において一、二審ともに片方が完全勝訴している場合、憲法違反や判例からの著しい逸脱等がない限り、最高裁では弁論すら開かれないのが実情です。「令和4年 司法統計年報」によると、2022年の上告受理事件総数2308件(民事)のうち認められた(=判決として破棄)のは16件とわずか0.7%。この数字からも原告側は「敗北必至」の状態です。そのようなことは卑しくも法曹資格を持つ人間であれば常識中の常識です。
一方で、訴訟の長期化が一因となり、SAKISIRUは既に事業休止に追い込まれ、原告側にとっては当該記事どころか媒体ごと消え去り、実質的に過剰な「利益」を得ている状態です。
にもかかわらず、原告側が大逆転勝訴の見込みが極めて乏しい中で上告を強行するのはなぜなのでしょうか。仮に原告本人が当方を「袈裟まで憎し」の余り感情的になったとしても、最高裁で訴えが認められずに“恥の上塗り”になる可能性が濃厚だけに、良識のある弁護士であれば、上告受理の申し立ては諌めるはずです。
貴殿たちはそこまでして弁護士費用を荒稼ぎしたいのか?
あるいは逆に手弁当で引き受けてでも
「政治運動」として共同親権問題に熱心だった媒体やライターを社会的に誅殺したいのか?
真意は不明ながら、裁判での勝敗を度外視したとも言える今回の上告。
原告側弁護団の対応は、弊社に不必要な弁護士費用や時間の浪費、心理的負担を強いる「濫訴」であり、法曹人としての倫理観の欠如があらわになったと言えます。
不幸中の幸いで、訴訟費用については休止前のSAKISIRUを支持する皆さまからのカンパのおかげでなんとか乗り切って参りましたが、以下の通り、二審までの訴訟費用は約237万円で、仮に全面敗訴していた場合の賠償金330万円の7割以上をすでに負担している状態です。もはや相手側弁護団を逆に相手取り、この損害賠償を請求して別裁判を起こしたい衝動にも駆られ始めています。
これでも弊社側の代理人弁護士の先生が旧弁護士報酬基準に基づき、割安に引き受けてくださったことで乗り切れましたが、不毛な裁判闘争に区切りをつけられず、弊社として新たな歩みもままなりません。
また、そのようなことは、原告本人にとっても同じことではないのでしょうか?
今回の上告を諌めなかった原告側弁護団は何をしたいのでしょうか?
すでに民法は改正され、貴殿たちが猛反対した共同親権導入にわが国は道を拓きました。
法曹資格という学識能力の高さがあっても、「恥」や「損切り」という言葉を知らない人間がこの世の中にはいるのだと心の底から軽蔑しております。
最高裁で決着、上等じゃないですか。
2024年9月11日
株式会社ソーシャルラボ代表取締役
新田哲史