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【アニメ感想】小市民シリーズ#3ハンプティ・ダンプティ

アニメ小市民シリーズ第3話です。今回も原作小説と比較しながら感想をつらつらと書いていきたいと思います。
※原作小説を全て読んだうえでの感想なので、ネタバレ要素を含みます。

テスト中に起こった不本意な事件の鬱憤を晴らすべく「ハンプティ・ダンプティの封印」を解いた小佐内さんと、付き添いの小鳩くん。そこで小佐内さんの自転車を盗んだサカガミを目撃し…という内容でした。

本編開始1秒で、題名が違う!となりました。原作の表題は「はらふくるるわざ」です。「おぼしき事言はぬは腹ふくるるわざ」という言葉があるのですが、

心に思う事があっても差し障りがあるからと遠慮してなにも言わずに我慢していると、食べ過ぎで腹がふくれているように、不快な気が腹の内にたまってすっきりしないということ。

という意味だそうです。サカガミの蛮行に思うことがあっても必死に我慢している小佐内さんが、たらふくのケーキでせめてお腹だけでも満たしているのが印象に残るお話です。

どうして題名を変更したのだろうと考えながら本編を見ていくと、今回の謎のトリックが変更されていることに気が付きました。原作で割れたのは花瓶ではなく、中身が空になった栄養ドリンクの瓶です。現場検証を終えた小鳩くんは、割れやすくした瓶を携帯電話の振動で落としたという推理をしました。しかし、その推理の中で以下のようにも考えています。

あとは、都合のいいタイミングで瓶を落とす仕掛けをどうするか、だけれど。まあ、そんなに難しい話じゃない。ぼくたちはケータイを持っている。(中略)別に、氷やドライアイスでもいいけどね。

米澤穂信 春季限定いちごタルト事件 P165

この部分をうまく活用したのが今回の花瓶への改変です。アニメのトリックは氷が解けて水になることを利用しており、水が残ってしまいます。しかし花瓶なら割れて水が零れていても不自然ではありません。また、小市民を目指す小鳩くんは、濡れ衣を着せられた可能性もあるからと犯人を明らかにしませんでした。これも原作にない追加要素ですが、花瓶への変更と同様にすごく自然な流れに感じました。

そして追加された小鳩くんの「割れた花瓶はもどらないってね」というセリフで、私は原作の一節を思い出しました。

〈ケーキショップ ハンプティ・ダンプティ〉。日本語で言うなら、〈洋菓子店 覆水盆に返らず〉といったところか。

米澤穂信 春季限定いちごタルト事件 P153

原作を読んだからわかる仕掛けに、ちょっと得をした気分になりました。

それに対して小佐内さんの機嫌はよくありません。カンニングの犯人を明らかにしないのは見過ごしてあげるから、サカガミの行き先については明らかにしてよねと言わんばかりの目で見上げてきます。そして今までの爽やかさとは一変して、真っ赤に染まった背景から小佐内さんの怒りがうかがえます。
復讐を愛する小佐内さん、復活です。

後半パートは堂島くんとのメッセージのやりとりから始まります。私は原作のこの部分の言い回しが大好きだったので、アニメでそのまま表現されてとても嬉しく思いました。

暗澹たる空模様が、真っ直ぐで潔い堂島くんとのやりとりを経て晴れ渡る描写が美しく、晴れ晴れとした気持ちになりました。おそらく次回は吹っ切れた小鳩くんの推理がさえわたることになるのでしょう。楽しみです!

最後までお読みいただきありがとうございました。


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