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【絵本屋さん日記】 お店ができました

2023年4月22日。お店ができた。

商店街の通りに面していて、大きなガラスのショーウィンドウと黄色の柱が目印になる。入口の両隣りに、青色と桃色のベンチがひとつずつ。アーケードではツバメが次々と巣をつくっていて、カラスや雨風に抗いながら、新しい命を迎えている。

お店の後ろでは五十嵐川がさらさらと流れていて、新緑を纏う草花がまぶしい。

あたたかで、やさしい季節から始められたことを、幸運に思う。

店をつくることは簡単じゃなかった。分かっていたけれど、分かっていたよりもずっとずっと難しかった。忙しいだけじゃなかった。ぶつかってから壁に気づいたり、石がないのに躓いたり、眠るべき夜に眠れなかったりした。

自分の気持ちを見失ったり、新しい感情に出会って恐ろしくなったり、自分を信じられなくなったりした。ずっとここにいたいと思いながら店をつくっているのに、もうここにはいられないと逃げるように東京へ帰った日もあった。何週間も胃が痛んで、キツかった。

具体的なことを書こうとすると筆が止まってしまって、
誰かの店づくりの参考になったらいいなとも思うのに、どうしても書けなかった。。
ただの日記です

オープンまで、頭も心もぐちゃぐちゃのまま、息切れしながら当日を迎えたように思う。達成感も感慨深さも足りなくて、ただ、お祝いの贈りものが届いたときは大好きな人たちへの気持ちが込み上げて少し泣いた。

開店準備の約1ヶ月間、どうにも苦しかったけれど、それでも「終わってしまったのか」と名残惜しく思えたのは絶対にそんな人たちのお陰で、本当に感謝している。

優しい人に、沢山助けてもらった。
自分でやらなければと思ってしまうわたしの側にいつだって人がいてくれた。返しきれないほどの優しさを貰ってしまった。

毎日、車のないわたしを買い物につれていってくれて、釘の打ち方から教えてくれて、汚れも気にせず掃除やペンキ塗りをしてくれて、重いものを運び、ごはんを作ってくれて、ただ顔を見にきてくれた。電話してくれて、メッセージを送ってくれて、うまく話せないわたしの話をずっと聞いてくれた。深夜にひとりで作業していても、応援の声、心配の声、寄り添ってくれる体温がありありとそこにあって、わたしは決して1人にならなかった。


関わってくださった皆さん、本当にありがとうございました。心からの感謝と敬意を込めて。

貰ったものを握りしめて、自分が誰のためになにができるのかを考えながら、これからお店を始めていきます。

「ずっと絵本屋になりたかったんですか?」と よく尋ねられるけれど、わたしが絵本屋になりたいと思い始めたのは2年前のことで。それより前には一切想像できなかった場所に、いまの自分がいることになる。多くの決断の先の、先の、先の、先に、こんな未来があって。奇跡と呼ぶには綺麗じゃなさすぎる自分の人生の手触りを感じて、生きた心地がする。

こんなに特別な日々だって、あっという間に人生の通過点となり、わたしは過去形で語り始めていくだろう。勿体無いけれど、そこに留まっていられないほど、すでに店を営むことが楽しい。これからも、きっと沢山の葛藤を抱えながら、それでも沢山の笑顔をもらって、楽しくお店を続けていくのだと思う。そうありたい。

新しくできたお店を、どうぞよろしくお願いします。


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