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春愁

桜花 今ぞ盛りと人は言へど
我れは寂しも 君としあらねば
大伴池主

万物凋落の秋の、深いもの思いを表す「秋思」とは対照的に、草木が芽吹く春にくる、そこはかとない遣る瀬無さを言い表したのが「春愁」です。

生気に満ちた春ならではの季感をあじわう一方で、胸の奥に叢雲のような寂しさが漂う、あの感じ。

天気は明るく穏やかなのに、まるで灰を押し詰めたように塞いでならない、あの気分。

薄墨色した空に花が咲き溢れるのを見ては、瞼に浮かぶ顔があり、川面に散り敷く花びらを眺めては、ゆらゆらと揺蕩う愛惜の情があり。

なんて感傷は、桜を見た時だけのものなのかしら。と、思い出したこの歌。

桜の花は盛りだけれど、あなたと一緒でないのが寂しい。ですって。

わかります、私もです。今日もいちりんあなたにどうぞ。

サクラ 花言葉「私を忘れないで」

桜の花は盛りだけれど


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