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おそろしい言葉とはちあわせ

かれこれ10年以上、何度も何度も読んでいる本が、いくつかある。その中のひとつが、江國香織著「ホリーガーデン」。小学校の頃から親友同士の女性ふたりが主人公で、はるか遠くのお姉さんたちの話だと思っていたのに、ふと計算してみると、もはや彼女らの年齢を追い越していた。びっくり。

物語の中で、主人公のひとりが、ひとりで都庁の見えるビルの(おそらく)高層階のバーで、男の子との関係に悩みながらお酒を飲むシーンがある。そこで、食欲が湧かないのに、おかわりと一緒に頼んでしまうメニューが、腸詰めの盛りあわせ。

腸詰めの、盛りあわせ?

腸詰めって、とてもインパクトのある言葉に見えませんか?「腸」って内臓だし、そこに「詰め」ちゃうんだもんな…そして、それを盛りあわせる…

三十路の女性がひとりでバーで頼むには、重たすぎるように思え、そのミスマッチもインパクトを強めている。オリーブとかピクルスではこうはいかない。ましてやポテトやフライドチキンなんかはもってのほか。

長く読み継いでいて、慣れた、安心できる場所のように思っている物語にも、まだまだ気付かない毒やクレバスみたいなものが潜んでいる。読む側の年齢や生活習慣の変化で、ちらりと顔をのぞかせる小さな悪魔が、見えるようになる。

一冊の本と長く付き合う楽しさは、こういうところにあると思う。

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