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#嫁姑

心中宵庚申[現代語版]3・近松門左衛門原作

心中宵庚申[現代語版]3・近松門左衛門原作

3.

かるは嬉しげに「介抱をしててね」と千代に言うと、いそいそと障子を開けて台所に立った。
「ごめんください」
 表口から人のたずねる声がした。金蔵のように村の人間だろうか。幸い千代は奥の間にいる。かるは「どなた」と台所から離れた。玄関を開け、そこに立っていた顔を見たかるは胸の底から不快感を覚えた。
「あら、いらっしゃい、リコンさん」
皮肉たっぷりにその男を見た。千代の夫、半兵衛だった。わざわざ

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