見出し画像

【映画メモ】『あの子は貴族』(2021)と東京生まれの上京願望

「東京」が記号として描かれていて、でも「上京願望」みたいなものを別の側面から見せてくれて、男性と家についても描かれていて、「ああ〜〜〜」という声が止まらず2020年ごろから友人ともたびたび話題に出していた原作。

久しぶりに映画を見返してみた。たくさん考えることや印象に残るセリフはあるんだけれど、すごくざっくりしたメモを残す。

『あのこは貴族』は出自も生きる階層も違う二人の女性が、これまでどんな風に生きてきて、これからの日本をどう生きるのかを描いた作品です。多くの選択肢が用意されているわけでもなく、器用にベストな選択ができるわけでもない。それでも自分の足で立ち、生きていく。そんな原作の持つスピリットを、素晴らしい俳優陣が血の通った物語に昇華してくれました。

https://anokohakizoku-movie.com/

印象に残ったセリフ2023ver.

・「ほんとに責めないんだね」
「あそれは私が口を出すことではないので」


幸一郎と華子の婚約を受けて、美紀と話をする際のこの逸子のサラッと感。
もちろんサラッとだけではない事情や思いがあるんだけど、サラッとしているこの感じ。(原作の浄瑠璃の話も興味深かった。)

おひなさま展とか美術館に母親と行くとか、イベントをいかに家族でがっつり行うかとかが表す記号とか文化資本っていうのかなああとなるポイント。

・「女を分断する価値観」

逸子が自分の考えを言った後、美紀の頷きと悟った顔が混在していて好きだった。(原作だとそのまま美紀の勤めている会社の話などにも続く)

この辺は女子校で育った自分と大人になってから感じた自分についてよく考えている。
分断を生むような価値観を感じたことも、仕事の中などで団結を感じたことも両方とも数えきれないほどある。今後ももっと深ぼっていくテーマの1つ。

・「いつでも別れられる自分っていいね」

・「事情は分からないけど、どこで生まれたって最高って日もあれば泣きたくなる日もあるよ。でもその日何があったか話せる人がいるだけで、とりあえずは充分じゃない?旦那さんでも、友達でも。そういう人って案外出会えないから。」

なんか今一番わあと思ったのがこの辺の言葉だった。

本作、下記エッセイ双方の意図とはずれるところがありそうだけど、芸人バービーさんが結婚した時の表現を思い出した。自立しながら人と繋がるということ。

好きな者同士でも、所詮は赤の他人なのだとわからせてくれたのも、私にとっては新鮮だった。自立したまま、異性と繋がれたのは初めての経験だったかもしれない。結局、生まれて死ぬまでひとりなんだ。せっかくだからその間、寄り添える関係でいよう。

バービーが「吉瀬美智子好きな会社員の彼」と結婚することを決めた理由

・「みんなの憧れで作られていく幻の東京」

あるあるある。あと「上京願望」は東京生まれでもあると個人的に思っている。憧れと、幻の両面がいっぱいあり、「東京」が記号として成り立っているということ。

ジェーン・スーさんのお悩みエッセイなど結構「東京というテリトリー」や「上京願望」について言及があるのだけれど、個人的にめちゃめちゃ共感している。

最後のバイオリンのシーンが音楽と共に、上からスーツ姿で男性に囲まれて佇む幸一郎と、ひとりで立つ華子が微笑むシーンが本当に美しかった。

今回改めて観て、映画版はより華子に意志があるし、幸一郎の人間味とか愛もあるように感じた。
もう一度小説も読み直してみよう。

あと同じく山内マリコさんが描く「都市と地方」も久しぶりに読み返したい。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?