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【その女、ジルバ】人生劇場を鑑賞する

また素晴らしいドラマを観た。
大手百貨店から倉庫へ出向になり、仕事も生活も鬱々とした日々を過ごす主人公が、40歳の誕生日に「40歳以上のみ」OKのバーでホステスとして働き始めるというくだり。

草笛光子さん、久本雅美さんを始めとする圧倒的パワフルで美しいお姉さんたち、同僚役は江口のりこさん、真飛聖さんという豪華な顔ぶれ。

コミカルなんだけどああ人生だよねっていうこのドラマ。Netflixでたまたま見つけて一夜で観てしまった。

扉の向こうにいたのは自称50代~80代までの元気な高齢ホステスたち! おいしい料理と軽快なトーク、さらにパワフルなダンスでおもてなしをする特別な空間だった。
戦前戦後、昭和、平成、令和へ、どんな時代も明るくポジティブに生きてきた彼女たちの姿を見て、新も少しずつ輝き始め、職場でも仕事の取り組み方が変わっていく! さらにそんな彼女の前向きな姿を見て、BARに来た客や、同じ境遇だった職場の同僚たちもどんどん生き生きとし始める!

https://www.tokai-tv.com/jitterbug/intro/

包容力や明るさ、そして弱さや語りたくない人生と

「女はシジューから、いや60、70、80、100、300まで!」というこのドラマは、圧倒的な明るさとパワーと包容力がある。

だいぶ減ったものの、「何歳だから」とか「歳を重ねることの重たさ」みたいなものは少なからず感じる中でひたすら元気が出る。

一方でただ明るいだけではなく、登場人物それぞれに語られる大きな出来事や人生がある。
決してお姉さん方に一方的な「明るさや包容力」だけを求めるだけではなく、そこに至るまでの弱さや語りたくない人生も見つめる。

「シジュー」の新たちが聞くことや助けること、世代をつなげることによる「救い」のようなものも描かれているのが推しポイントだった。

戦中〜戦後の凄まじい苦労、ブラジル日系移民、3.11と故郷、家族の形、正規雇用と非正規雇用、年齢への囚われ、病気や老い、コロナ禍での飲食店経営…
主人公やその家族、同僚、お店、お客さんそれぞれにある昭和〜平成〜令和の人生を見せてくる。

ここからは気に入ったセリフを。

「すいも甘いも苦いも全部飲んで女は女になる」

新(通称アララ)がお姉さん方に対して「すいも甘いもあってすごい」と感嘆したところから、「苦いもあったわよ」というこの返し。
色々な感情や経験を通しての包容力や明るさには敵わないなと10話を通してずっと思った。

「それがこれからの人生」

「これからのあなたにはもっと色々なことがあるでしょう。楽しかったり、嬉しかったり悲しかったり辛かったりでもそれがこれからのあなたの人生」
「笑って踊って」
「転んだらまた起きて」
「40 50 60 70 80 」

仕事を辞めて地方の実家に戻り新しい生活をすることを決断したみかちゃんを慰労している場面。
「40という人生の後半ですが」的な件から「40なんてまだまだひよっこ」というこの返し。

世間での「40歳」とこのお店での「40歳」は全然違う、というか本当は世間での「40歳」なんてないんだけれど、それに改めて気付かされる場面がたくさんある。

「幸せになる権利」

「あなた、幸せになるのが怖いのね。
誰でも幸せになる権利はあるのだから勇気を持って目の前の幸せに飛び込みなさい。人を信じるのよ。それでうんとうんと幸せになってちょうだい。」

自分の生い立ちから、大好きな人と家族を作ることに対して望んでいるのに逆を行ってしまおうとするすみれちゃんとくじらママの対面場面。
ナマコさんが向ける眼差しも終始温かかった。

愛ある登場人物

前園課長をはじめとしてイラッとする人物はいるのだけれど、最終的に愛ある登場人物しか出てこない。

それぞれが人生を生きており、時には自分と向き合うことを年代を超えて助け合っていく様子が本当に美しかった。(もちろん人生美しいだけれは済まされないこと大前提で)

原作も読んでみよう。

良いドラマを観たな〜〜と心から思った。

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