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フランス語学習日記④〜渡仏編

愛の不時着を観てオイオイ泣きながらパリの空港に着いたとろで終わった前回の続き。

2020年8月〜2021年3月 レベル:B1-B2

さて、ついにフランスにやって来た。ちなみに私が取得したビザはオペアビザというもので、このオペアプログラムがどういうものか簡単に説明すると、子どもがいる家庭に住み込みその家の子どもの面倒を見る(送り迎えが基本、あとは家庭による)かわりに生活の一切を保証してもらいながら現地の言葉を習得できるという、まあ日本にはあまり馴染みのないプログラムであるが、ヨーロッパにおいてはけっこう盛んである。

空港のあるパリからTGVに乗り、はるばる、私の受け入れ家族が待っているアルザス地方へとやって来た。最寄りの駅にはホストファザーが車で迎えに来てくれ、どきどきの初対面(ビデオ電話やテキストはやりとりしていたものの、) をすませ、ようやく家につくとその日から、フランス人家庭での共同生活のはじまりである。

初めましての挨拶をすませ、家の設備を説明してもらったり、子どもたちとの初対面をすませた私の感想としては、「意外といけるのでは?」くらいのものだった。ネイティブの先生に習ってたとか、このファミリーがこれまで何人かオペアを受け入れていた経歴もあってわかりやすくコミュニケーションをとってくれることに慣れているとか理由はあると思うのだが、意外と言ってることは難なくわかる。※当時まだ言語がおぼつかなかった末っ子2歳を除く、、 しかし外国語学習あるあるで、

「相手の言ってることはわかるけど、なんて返せばいいのかわからない....」

こういった体験は英語圏でも何度かあったが、この段階、もどかしい。分かっているのに「こいつ理解していないな」と勝手思われ、下手くそなGoogle Traduction を見せられる時のあの悔しさ、惨めさといったら。これを乗り越えるには、とにかく慣れに尽きる。この場合、文法やら単語に問題があるわけではない。とにかくネイティブの会話を聞き、話せば、自ずとよく使われるフレーズや構文、表現が学べる。

またネイティブ、しかも子どもとの生活というのも鬼門であった。例えば日本語でも「睡眠」ではなく「おねんね」というように、フランス語にも多く幼児語というものが存在する。(dodo, bobo, pipi, caca, bibi, doudou, etc) いわゆるオノマトペみたいな感じだが、こうした単語を見聞きしたことがなかったし、子どもと暮らすとなると、彼らはモノ投げたり怒ったり泣いたりを毎日するわけだから、他の生活シーンではなかなか使わないフレーズを言う必要がある、これも慣れに尽きる。初めはいちいち辞書を引いたりしていたが、両親がどう子どもに話し開けるのか耳をそばだててみたり、年長の子どもと話したりすること。幸か不幸か?一緒の家に暮らし子どもの面倒を見るとなると、嫌でも毎日顔を合わし会話することになるので、実践の機会に事欠くことはなかった。

そんなこんなで、渡仏当初の私は目の前の必要に駆られ、志高く、机の上でも、リアルにおいてもそれなりに勉強した。1番ぐっと語学力が伸びたのがこの最初の時期かもしれない。とはいえ、フランス人の議論好きレベルからしたら私は十分控えめで大人しく見えるらしく、『さあ部屋から出て、もっと話そう!』と言われたこともある。ちなみに私は外国語学習、ことフランス語みたいに細かなルールのある言語において、実践を重視した習得方法というものをあまり信頼していなかったし、今もその気は強い。よく語学学習のメゾットで『その国の恋人を作るのが一番の近道』などということを見聞きするが虫唾が走る。そもそもロマンチックラブなんてなくても勉強への情熱は持てるものだし、文法という土台ができていなければ、なんとなく話せるようになっても応用が全く効かないからである。ちなみに私はこの類の在仏外国人を少なくなく見てきた。

ちなみに、8月末に渡仏したものの、一番の目的とも言える語学学校に通い始めるのはなんと11月下旬である。(ロックダウンの影響で2週間遅れ。)つまりこの間、私は生活に慣れたり、家族と会話したりしつつ、多くの時間を自習に当てていた。ではこの自習期間、ベースとしては前回までで紹介した教材を使いつつ、新たなスタメンができてくる。ここからはフランスにいるので現地での教材を使う機会も増えてくる。

単語はこれ。私の好きなタイプ、テーマごとに単語がまとまっているので良い。しかし当たり前だが日本語訳がのってたりするわけではないので、どんどん辞書引いて意味を確認する。横に練習問題もついている。

また、正式な教材というわけではないがなんやかんや使う機会が多い/かったのがこれら。

語学学習アプリ、ハロートーク。実態として出会い系アプリ的要素があったり、けっこう気持ち悪いメッセージが届くのも事実であるが、これは使いようで、もちろんマトモな人も沢山いて会話を楽しめたり、また利用者が多いのでいつ何時であっても投稿すればネイティブによる添削や、質問を投げれば秒で返事をくれるので、なんて便利なんだ〜という時もあった。ただし、気をつけなければならないが、ネイティブが言っていたから、といってそれを鵜呑みにしてはいけない。特にフランス語はいろんなところで話されている言語なので、このへんはちゃんと見極めよう。私はあくまで勉強のモチベーションがない時、気晴らしに使ったりした。

オンライン言語学習サイト、Preply。自分で好きなチューターを選びオンラインレッスンを受けることができるのだが、私はこれをロックダウンを機に使い始めた。せっかく現地にいるのにわざわざオンラインなんて....という気もするが、コロナ禍にこんなに適したものはないし、たまたま見つけた先生がとても良い先生で、結局、語学学校にいけるようになったあとも週一ほどのペースで継続している。
いくらネイティブと一緒に暮らすとは言え、子どもとの生活がメインである以上小難しいテーマで議論、みたいなシチュエーションは一向に訪れないし、語学学校だと集団にのまれてなかなか自分だけがペラペラ喋る機会もない。その点、このオンライン個人レッスンだと完全に自分のレベル、自分のペースで好きな時に授業を受けれるのがよい。ただ相性のよい先生に巡り会えるかという縁も大事である。

このころは時間に余裕があったので邦訳で読んでいて好きだった作家の未読の本などをフランス語でじっくり読んだりしながら自習期間を楽しく過ごしていた。

9月〜10月ころには、語学学校のレベル分け試験をオンラインで受け(←この試験が見慣れない形式だったし重箱の角つつくみたいな問題もちょこちょこあった) 最終的なジャッジのために学校の面接にも行った。オンラインで受けたレベル分けはB1-B2 くらい(文法だけB2) 、面接では自己紹介や勉強動機、これまでの学習過程、最近週末をどう過ごしたかなど話して、学習歴があまり長くないこともあり、とりあえずB1クラスで様子を見てみようということになった。

これは後で知るのだが、この面接をしてくれた先生というのがここアルザスに以前あった日本の高校(名前を出しちゃうと、アルザス成城)に勤めていたこともあり、日本/日本人についてある程度の知識を持ち合わせている方だったのだが、この先生に「日本人にとっては難しいだろうに、あなた発音がいいわね」と褒められたのは大きな自信になった。習った先生が良かったです、と答えた。

渡仏編を一気にここで書こうと思ったが、力尽きてきたのでとりあえずここまで。次回に続く。


番外編〜アルザスに語学留学ってどうなん?〜

さて、冒頭でちらっと出てきたが、私が語学留学先に選んだアルザス地方、ちょっとフランスに詳しい人や世界史をちゃんと学んだ人なら簡単にわかるだろうが、そうは言っても日本での知名度はそこまで高いとは言えない。

私がアルザスという場所を初めて知ったのは、やはり世界史の教科書だったと思う(独仏の歴史を語る上で何回アルザス・ロレーヌという単語が出てきたことだろう.....) そう、簡単に言えば、ここアルザスは歴史の中でたびたびフランス領になったり、ドイツ領になったりして、幾つもの戦火に晒されてきた独自のアイデンティティを持つ地域であり、アルザス語という固有の言語もある(滅びつつあるが......) 現在ではアルザスはフランスに属すが、未だに他の地域とは政治・文化レベルで一線を画している。

そんなアルザスの独自性は、到着したその日、ホストファミリーのおばあちゃんに会ったときに「アルザスへようこそ!」と満面の笑みで言われたときにはっと気づいた。散々渡仏、渡仏といったものの、渡仏というより渡アルザスなんだ、と。

ちなみに、「なんでアルザスを選んだの?」とたまに聞かれるが、これに関してはただの偶然で、特に都市を決めずにオペアとしての受け入れ先を探しているころ、なかなか条件が合わず家族探しが難航していたころ一通の丁寧なメールと、家族について説明したこれまた丁寧な資料が届き、それが今のホストファミリーだった。家族探しに疲れていた私はすぐそれに飛びつき、アルザスに来ることとなったのである。ちなみにこの家族、いわゆるお父さんが日本のアニメオタクでしかも一家全員で柔道をならっているという、ああこれがわたし日本人を選んだ理由かと納得した。

さて、本題の語学留学にアルザスってどうなん?という話であるが、以下私の個人的な感想である。

まず、少しネガティブかもしれない面から。
いわゆる「美しいフランス語」「本物のフランス語」的な神話信者からしたら、アルザスのフランス語はその理想とは離れているだろう。いわゆるクセのない、スタンダードとされるようなフランス語は中部、トゥールとかに行けば聞けると思うのだが、ここアルザスは前述した通りつい最近までアルザス語(かなりドイツ語より)が話されていたくらいだから、特にお年寄りになればかなりそのアクセントは強くなる。私が一緒に暮らす子どもたちは、このアルザスなまり全開おばあちゃんを、なんと最近まで「フランス人ではない、外国人」として認識していた。ある意味核心ついてるのだが。そんな子どもたちも子どもたちで、幼稚園ー小学校ではドイツ語のバイリンガル教育(たまにアルザス語も)を受けており、アルザスにはこうした学校がちょこちょこあるので、オペア受け入れにしても、子どもの教育のためドイツ語ネイティブしか雇わない!といった家庭もちょこちょこあるのが現実だ。

ところで、いわゆるフランス人に対するcliché ( 紋切り型)として、フランス語に対する誇りがあるとか、外国人がちょっと文法を間違えたら訂正してくる、みたいなのがある。しかしここはアルザス、多少文法間違えたところで誰も訂正などしてこない。いつも忙しいパリジャンなどに比べ、話すスピードもゆっくりしている。これはポジティブにもとれるところで、私のようなフランス初心者にとって、これはありがたい。私は「本物のフランス語」みたいなものには特段関心もないのでこうした雰囲気のアルザスが心地よいし、あまり構えすぎずにフランス語を話せるというのがとても良かった。歴史、文化的バックグラウンドからか、アルザスには「外国人」「外国語」への懐の大きさみたいなものをちょくちょく感じるのだ。

そしてもっとポジティブ点を挙げるならば、それは特に日本人がアルザスに滞在する場合である。アルザスというのは地理的にヨーロッパの中心であり、その歴史もあって数多くの外国企業が進出してきた場所であり、日本もまた例外ではない。(ソニーとか、ヤマハとか。) 一説にはアルザス人の勤勉な性格(ここら辺やはりドイツ寄りで、プロテスタントも多い)が日本とマッチしたともいうが、まぁこれも分からんでもない気がする。アルザスと日本には少なくない交換が綿々と続いているし、前述したアルザス成城高校もそれを象徴する一つである。

アルザス成城の跡地は、Centre européen  d’etudes japonaise d’alsace という、日本文化に触れられたり、大学生同士の交換を促進したりする機関ができている。
https://m.facebook.com/ceeja.alsace/
また私が今住んでいるコルマールには、Konjakuという日本雑貨を専門にするお店もあり、このお店繋がりで日本語を学ぶ少なくないフランス人と知り合ったりもした。
https://www.konjaku.fr
日本人サイドからすれば、映画「ハウルの動く城」のロケ地でもあるこの美しい街並みの虜になる人も多いのではないか。ちなみにクリスマスマーケットもめちゃめちゃ有名だが今年はコロナで無くなった......悲しい......

てなわけで、全体的にアルザスというのは親日的な雰囲気を感じるし、おかげでとても過ごしやすかった。またアルザスの中でも田舎のほうにいるおかけで、人が優しい。フランスに初めて行ったのは8年前だが、そのときの記憶がフランス=パリ=怖かった!だった私にとって、ここアルザスでの滞在はフランスへのイメージを大きく変えてくれた。

結論、最初は偶然であっても、アルザスにきて本当によかった。これを読んでいるもし誰か、アルザスに行くことを迷っている人がいたらぜひその背中を押したい。最後にいいこと、アルザスは他にくらべて祝日がちょっと多いのだが、これはドイツの祝日とフランスの祝日、両方取りしてるからである。どう、アルザスに住みたくなるでしょう。Hopla ! 

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