フランス語学習日記⑤〜フランス語学学校編

せっかくはるばるフランスまで来たものの、およそ3ヶ月の間特に教育を受ける機会もなく、自習と子どもの世話、家事を繰り返すだけの引きこもりコロナライフを送っていた前回の続き。

2020年11月〜現在 レベル:B1-B2

11月半ば、ようやく待ちに待った語学学校が始まった。引きこもり生活にうんざりしていたので、ロックダウンの中の特別措置で学校に行けるとのメールを受け取ったときは心の底から嬉しかった。ほぼ全てのお店が閉まっていて人通りもなく、コルマールの街は静かだった。学校はそんな街の中心街から少し離れたところにある。

ちなみにこの学校、学校というより市民向けの文化センターと言ったイメージである。授業時間は週に2回、1時間半ずつ。つまり週に3時間しか授業がないので、これなら日本にいるときと変わらないじゃないか、と少し不満に思ったこともあった。

※以前はオペアには最低週10時間ほどフランス語の授業を受けることが義務付けられていたが、近年改定された。オペアの中には学校よりもただ遊びたい子や、他の習い事がしたい子もいるし、結論から言えば、もし私も週10時間だったら子供の生活との両立に疲労困憊していただろうと思うのでまあヨシとしよう... 

指示された時間に学校に向かい教室に入ると、B1クラスには10人ほどの生徒がおり、私の他にも3人同じオペアの女の子がいた。ちなみに同じ町の他のオペアとは9月〜10月ごろの段階で何度か集まったりしていたので既に顔見知りである。
生徒の年齢層は20-30代といったところ。一通り自己紹介をし、各自フランス語を学ぶ目的や目下の目標レベルについて話し、文法の練習問題を宿題にもらい(確か複合過去と半過去、大過去とかいう案外簡単なレベルであった)初回を無事終えた。ちなみに生徒はみな「留学」しているのではなく、さまざまな理由でフランス在住の人たちである。

初回の授業、私は初めての海外語学学校で自己紹介だけでもドギマギしていたのに、周りはアクセントや文法のミスはあっても全くおじけることなくベラベラよく喋る。コロナの影響もあるのか、アジア人は私だけで、ほとんどが欧米圏の出身者だった。
ちなみに私はフランスネイティブ以外が話すフランス語というのを日本人のそれ以外で聞くのがほぼ初めてだった。なんとみんなそれぞれ固有のアクセントを持っていることか。聞き取れない!もちろん私も周りからしたらそうなんだろうけど。(この辺り、日本語は音が少ない言語なので圧倒的不利である。)
日本では多くの場合みんな大人しく先生の話を聞くものだが、みんなよく話す話す、先生の話を遮ってでも話す。せっかくお金を払って学校に来ているのなら授業中に発言したいが、この中だとよっぽど積極的でなければならない。

そんな感じで2回、3回と授業を進める中で、宿題の出来や授業中の様子で先生は各生徒のレベルを測っているようだった。そんな中、隣に座っているロシア人の女の子が先生にもっと下のレベルのクラスに移動を勧められたのにそれを拒否して先生と喧嘩を始めるということもあった。

4、5回ほどそのクラスで授業を受けたころ、先生が私と他二人の生徒(これまたオペア)に、一つ上、その学校では最上級のレベルであるB2に移動することを勧めてきた。私たちの目標レベルや宿題、授業中の様子を見ての判断だったらしい。しかしそのB2クラスのほとんどが、フランス在住歴が長かったり、既にDELFB2を取得していたりしてレベルが高いので躊躇していたそう。クラス移動を告げられ、間も無く私は他二人と共に少し緊張しながら新しいクラスへと向かった。(この辺りの柔軟性、フランスの好きなところの一つである)


新しいクラスは前よりも少ない、私たちが来る前は6人という少人数だった。ポルトガルやドイツ、イギリス、ロシアなどからの生徒で、みんな良いレベルであるように見えた。

ちなみに、当たり前だが私のような日本人に比べ、欧米人がフランス語を取得する難易度は遥かに低い。

スペイン、イタリア、ポルトガル語に関してはフラ語中級者の私ですらなんとなく意味を察せてしまうほどに似ている。
オペアの女の子には多く南米ーコロンビア、アルゼンチン等の出身の子がいるが、彼女らの母語はスペイン語なのでみんなフランス語がうまい。 そもそも南米出身者以外だとしてもオペアをする女の子は外国語を学ぶのを得意としている子が多いので、マルチリンガルなのが当たり前な雰囲気で、私はここフランスで各自の母語に加えてフランス語、英語+αで数カ国語流暢に話せる同世代の女の子たちにたくさん出会った。

私はフランス語を始めてから飛躍的に英語力が落ちていたので、オペア同士の集まりでたまに英語を使う時など苦労した。まあフランス人は日本人同様、英語を始め外国語習得を苦手とする傾向があるので、そんなことで落ち込む必要はそもそもないのだが。

例えば日本にいると、英語やその他外国語ができるというのはもの凄く頭が良いとかエリートの所業のように思われたりする。しかし世界を見渡せばマルチリンガルなんてざらにいるものだと改めて思ったし、それは必ずしもポジティブなことではないかもしれない。つまり、母語以外の外国語を喋らざるをえない環境に育つということだ。私はこれまで生きてきて自分の母語だけでここまでのレベルの教育を受けたり、働いたり、好きなアニメやテレビを観てきたことをありがたいと思っている。

さて語学学校の新しいB2クラス、噂に聞いていた通りレベルが高い。みんなフランスで仕事を持ってたりフランス人と結婚していたりして、年齢層もちょっと高めである。また授業の雰囲気も全然違う。
丁寧な文法の授業などもなく、授業の始まりに最近気になるニュースをシェアし、そこから雑談を小一時間繰り広げていく。一斉に書き取りをしたり問題を解く時間も勿論あるものの、それほど多くない。そしてこんな様子であるから、授業中の発言も、ある程度先生や生徒との信頼関係や話題に割り込んでいく度胸のようなものがないと1時間半地蔵で終わる羽目になる。

私はもちろんフリートークは大の苦手である。
なので、
                      ⒈ちょっと早めに教室に行って先生と雑談してみる
2.フリートーク以外、例えば「この単語の意味は?」「この動詞の活用方法は?」など、答えが明確な質問にはガツガツ答える
3.前の方に座る。
4.他の人が話しているとき大きめにリアクションをとる
5.宿題はちゃんとやる。
などは意識していた。

こうした努力の甲斐あって最初はヨソ者感がなんとなくあったものの、徐々にリラックスして楽しめるようになってきま。

先生は毎回課題として、語彙、文法、読解、作文といったDELF対策を意識したプリントをくれて、次の授業のときにやったものを先生に渡すといった感じ。
試験に向け、クラス全員文法書を購入した。なかなか応用でレベルが高いし、解説もフランス語ななるのでなかなか根気が必要で正直に言えばあまりちゃんとやれてない。質は良いのは確かである。

ちなみにここまで登場ゼロ回だが、フランス語の動詞活用 Conjugaison を覚えるのに大変役立ったアプリがこれである。このアプリを使えるという点だけにおいて日本語話者でよかった。繰り返し綴りを打ち込む必要もなく、素晴らしい。

2月〜3月になると、授業内容もかなりDELF対策を意識したものになり、みんなでリスニングの過去問をやったりもする。
私個人的にはTCF TPを控えていたので、先生におすすめされたサイトを使ってひたすら練習問題を解いていた。こちらである。

RFI savoir の過去問サイト

こちらは第一部のリスニングしかないものの、実際の過去問を本番同様の条件で解けるので、かなりおすすめ。私は全2〜3周くらいした。

本番同様、序盤から後半にかけてだんだん難しくなってくる。

TV5 mondeのTCF対策サイト

こちらはRFIにはなかった文法や読解問題もついてくるし、練習(全40問とか) だけではなく、全80問、制限時間2時間とかの模擬試験もできる。私はまずこの模擬試験をやってから、練習問題に取り組んだ。けっこう問題が重複していたりするが、文法だけ、読解だけ、とパートごとに練習問題を解けたりするのもよかった。

こちらのデメリットとして、RFIにはあったトランスクリプション(音声転写) がない。間違えてもなんで間違ったかが分からないので、そんなとき私はその辺にいるネイティブを捕まえて質問責めにしたりした。しかし問題の質があんまりよくないので、ネイティブですらはっきりしない選択肢がちょくちょくあるという感じだった。

ちなみに作文対策であるが、あまり過去問がなかった。見つけたのはこれ公式サイトの過去問一つだけ。私はこれを例のオンラインの先生と一度やっただけで本番に臨んだが、本番、3つの作文を1時間という少ない時間で完成させるのに焦った。かなりハイスピードで書かないと終わらない。このサイト自体はあまり役に立つものではないけど、TCFはDELFの作文に比べテーマが平凡なので、基礎ができていれば十分対応できるだろう。

こんな準備をして迎えたTCFTPの結果は、この語学学習日記①冒頭の通りである。試験本番はかなりリラックスモード、遅刻者がいたので30分ほど遅く始まったりしたが、特にトラブルなくスムーズに終わった。このTCFTPはDELFと違い、在留カードなどの手続きにのみ使われたりする事務的な側面も強いので、とりあえず名前書いて最低限の点数取りに来ました、みたいな緩い雰囲気の人も多い。

ちなみにここでB2をとった私、こちらの大学の登録手続きにもちゃんと使えたので、取り急ぎ語学証明が欲しい人にとってはDELFより簡単だしおススメかもしれない。


3〜4月になりDELFが近づいてくると、先生が授業後に30分ー1時間ほど、口頭試験の補習を個別でやってくれた。
ちなみにDELFの口頭試験というのは、与えられた複数のテーマから一つ選び、それについてのプレゼンを10分ー15分やって、そのあと試験官が突っ込んでくる質問に答える、というもの。これは少し厄介で、フランス式のプレゼン方法、つまり初めに要約→議論提示→自分のプレゼンの構成を説明→議論に対し肯定意見、否定意見どちらも述べる→それをもっての結論と新たな視点や解決策を提示.....といったスタイルを遵守しなければならない。これに関しては1人では難しいこともあるので、先生がいたのは助かった。先生がいなくても、YouTubeにお手本ビデオが上げられてたりするので、これらを見ると感覚が掴めるだろう。

https://communfrancais.com/2017/02/26/modele-de-production-orale-au-delf-b2/

こういったサイトを参照するのもおすすめ。

またDELF対策でいえば、さきほどTCFの時に紹介したRFIにもリスニングの過去問(delf版)があるので、これは使える。
※しかしdelfの新式に沿って、選択問題しかない。2021年5月段階では、試験場によってはdelf旧式(リスニング記述問題あり)を採用しているので注意が必要

そしてどこで試験を受けるか?という問題でる。もしあなたがコルマール始めアルザスに住んでいる場合、絶対にドイツに受けに行くことを薦めたい。簡潔に言ってその方が安くて易しいからである。

しかし私は当時コロナで国境越えが不安で、フランス国内の近場の都市であるストラスブールに受験しにいくことにした。(当時は国境越えのため «一応»PCR検査が必要で、それが面倒だったのもある。

結局私はストラスブールのAlliance francaise で受験したのだが、ここがもう最悪であった。まず試験の日程は自分では選べず、何月のどの週かは事前にわかるのだが詳しい日程はわりと直前に知らされる。そして面接官の意地がとにかく悪いのなんの。私がくじ引きで引いた口頭のお題は「高校生のオンライン授業についてで、私はわりと逆張りをして「オンライン授業賛成」として、自身の不登校体験談や高校の対面再開をめぐってフランスの高校生がストライキか何かをしていた例などを引っ張ってきたが、面接官はこれが気に入らないようでとにかく意地悪だった(終始睨みつけられているようでとにかく緊張したし、マスクでもごもご喋られたので聞き取りづらかった😢) 

試験は2日に分かれており、1日目に筆記、2日目は口頭だけだったのだが、口頭のためだけにわざわざストラスブールに行くのも面倒だったし、2日とも身分証を持っていかなければならないのに2日目に私はパスポートを忘れ、あやうく受験できないピンチにも見舞われた。
*フランスの「身分証」の定義は日本より狭いことが多く、外国人はパスポート必須である。保険証や定期券では代用きかない。


結果私はそれでも合格するのだが、口頭以外はすべて25点中20点以上とっていたのに対し口頭は15点とかいう低めの点数をつけられて悲しかった。(学校で先生と模擬をやった時は毎回23点とかくれていたので…) これを書いている今はC1受けれたらいいな、と考えているところだが、Alliance francaise だけは避けるつもりである。グッバイ。

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