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俺はこのクソみたいな人生に中指を立てる(後編)

前回のあらすじ

まずは前回の投稿から3ヶ月空いてしまってごめんなさい。「何の話だかわかんねぇよ!」という方は「前編」、「中編」を読んでから再度臨んでほしい。

Yとの関係が深まり、そろそろ告白のことも考え始めた﨑原。しかし次のデート、告白をする場所、タイミング、悩めば悩むほどわからなくなる課題だらけ…はたしてどうなるのか。


俺に未来はあるのか

「これは完全にいける」
そう思っているようで本当は、そうであってほしいという自分の「希望」を「自信」や「手応え」だと錯覚しているだけなのだ。こう考えはじめるとこの考え自体も、自分が傷つくのを恐れて一歩を踏み出すことから逃げる口実になっているのではないかと考えてしまう。なかなか方針が定まらないが、結局はっきりしていることは「自信がない」ということだ。
そんな中、Yからの提案で「昼から新宿で映画を見て、そのあと西荻窪で散歩し、最後に飲む」というイベントが決まった。気持ちは高まったものの「あ~これもうここで告白しないとやばいやつやん…」と少し焦りも感じた。しかしシチュエーションの方から寄ってきてくれたのはチャンスだと捉えることにし、そのための準備を進めることにした。
「準備」と言っても、恋愛が絡むと持ち前の童貞力がオーバードライブしてしまう﨑原がとる行動は決まっている。そう、「絶対OKがもらえる最高の告白!」みたいな胡散臭いタイトルの、そしてまさしく恋愛弱者を罠にはめるために作られたかのようなレクチャー動画(笑)をYouTubeで漁りまくった。こんなので上手くいったら誰も苦労しないだろうと思いつつも、恥ずかしくて友達にも相談できていなかった﨑原は頼るものがこれしかないので、とにかく見まくった。その様はまるで人間がクスリに堕ちていくかのようだった…

そしてついに運命の日が訪れた。前日の飲み会で大量にお酒を飲んでしまったものの帰り道で「ゲロ・スタンプラリー」を敢行しスッキリした目覚めで迎えたその朝は、これから訪れるハッピーエンドを暗示しているようにも思え、﨑原の心はひどく落ち着いていた。

見た映画は「名探偵ピカチュウ」。Yはポケモンが好きだし、笑いあり涙ありの喜怒哀楽を刺激する内容の映画で、まさにイベントのスタートを飾るに相応しい映画だった。そして何を血迷ったか2人は新宿から西荻窪まで徒歩で移動することにした。映画の感想を語ったり、街並みにコメントしたりして、疲れたが楽しい時間を過ごせた。そして西荻窪でラーメンを頂いた。﨑原は「正直ここぞというときには美味いラーメン屋さんへ行けば十中八九上手くいく」という宗教じみた信条を持っている。
ちなみに行ったお店は麺尊RAGE。先輩が働いているお店で、西荻窪のみならず城西屈指の名店なので都内に住んでいるならぜひ行ってほしいところだ。
と、美味いラーメンを堪能したところで2人は大満足。これで今回のデートも大成功だ…と思いきや、ここで﨑原は1つの事実に気付く。「告白の時が迫っている…」
そう、告白までに残されているのは飲むことだけ。そんなこんなで西荻窪に来る途中で見つけたまぐろんちというお店で飲むことになり、高円寺にやってきた。マグロをしっかり堪能するはずが、この後の大イベントのことを考えて緊張し始めていた﨑原は味も分からず「美味い美味い」しか言えないスピーカーに成り下がっていた。そしてついにお店を出ることに…

Yは酔っぱらっていてヘラヘラ笑いながら﨑原の腕を時折ガジガジかじってくる。一旦落ち着くために公園に寄った。Yは公園でもガジガジかじってきた。そして混乱のあまり「かじってくる=告白でOKがもらえる」というレクチャー動画(笑)もびっくりの超理論を導き出した﨑原はYを公園から連れ出し、周辺の住宅地をうろつきながら告白した。「付き合わん?」と。我ながら気持ち悪い告白の仕方だった。
Yの返事は「一旦保留にさせてください。」だった。今までずっとIQ2みたいな行動を取っていたのにそこだけ冷静な判断をされたことに正直戸惑ったが、「お、おう返事待ってるわ!」と﨑原もクールに応答した。

その4日後にOKの返事をもらった。ついに、やっと、彼女ができた。自分が世界から認められた気がした。好きな相手に告白し承諾してもらうことがここまで自己肯定感を高めてくれるとは思いもしなかった。これから2人で楽しいことも悲しいことも分かち合い、充実した日々を送っていこうと思った。

まとめと後日談

これまで三部にまたがって﨑原の恋愛体験談の1つを語ってきた。これを通して感じたことは「自分にいかに自信がないか」ということである。そして「1つの成功体験がいかに人の心を変えるか」ということである。詳しくは書かないが早慶という一般に高学歴と言われている大学に通っていて実生活も充実していたし、就活も特に苦労することなく終えたのに自信がなかった。勉強面や就活に関してはそこそこの自信は持っていたが、「自分」という存在に対して自信を持てなかった。たぶんそれは「恋愛」という「個人の総合能力」を最も問われる(と自分で考えている)フィールドで成功体験が少なかったせいなのではないか。でも今回紆余曲折はあったものの最終的に目標を達成できたことでようやく自分に自信を少しだけ持てた。

そして今はYと幸せな生活を送っている、と書きたいところだがこの執筆を止めていた期間中、つい先日に別れてしまった。別れた理由はYのプライベート保護のため伏せておくが、円満な状態で関係を終えられたことだけは記しておく。たぶんこれからも良い友人としてお互い付き合っていけるだろうと思う。また、正直早く記事を更新しなかったことを後悔していて、「物事は先延ばしにするな」という教訓も得られた。
やや気まずい結末になってしまったが、別れた後にここまで気持ちに余裕があるだけでも自分の成長を感じる。やはり今回の経験は﨑原の人生にとって有意義なものだったのだ。

#日記 #長編 #完結

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