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【全文無料公開】東京都の会社が受けられる制度融資のすべて2022年度版

はじめに あなたの会社に有利な融資制度があるという事実

本書は、融資に積極的な経営者。そして、東京都に本店所在地を置くあなたのための融資に関する書籍になります。

あなたが本書を手にしているということは、融資を受けることに積極的なスタンスだと思います。一般的に金融機関からの融資は、政府系金融機関である日本政策金融公庫、都市銀行や地方銀行、そして信用金庫や信用組合からの融資になり、これは全国共通のことで、よく知られている経営的には一般的な話かと思います。

でも、融資の種類はこれだけじゃないんです。
都道府県や市区町村ごとに置かれる「制度融資」というものがあります。

例えば、二〇二二年頃には「SDGs融資」という制度融資ができました。これはSDGs(世界共通で取り組む持続可能な開発目標)を通じて経営を行う会社に貸し付けをする制度で、SDGsに取り組む企業であれば、申し込むことができます。ここだけの話ですが、新しい制度融資は金融機関も実績がほしく、融資の審査も通りやすいと言われています。

このほか、制度融資は「ストレートに金融機関に対して融資を申し込む」よりも、すんなり融資の審査が通る可能性を持っています。意外と知られていないのではないでしょうか。

本書は、そんな制度融資について、東京都にある制度に絞って解説しました。

もしあなたが、

・東京都内に本店所在地があり、
・もっと融資を積極的に受けたい
・もっと有利な条件で融資を受けたい

と考えていたら、本書は必ず参考になるはずです。ぜひ本書を通じて、積極的な借り入れをして頂ければと思います。

さきがけ税理士法人 代表税理士 黒川明

※本書の内容は、二〇二二年時点での情報をまとめたものになります

第1章 東京の会社なら、東京固有の融資制度を活用しよう

基本構造は全国同じ。でも、地域ごとで融資の仕組みは少し異なる

一般的な融資の仕組みとしては、日本政策金融公庫から借り入れをする、あるいは民間の銀行や信用金庫から借り入れをする、という仕組みなのは説明するまでもないと思います。

制度融資と一般の融資の違いは次の通りです。制度融資の場合は、都道府県や市区町村(以下、「地方自治体」)ごとに個別の融資制度を創設しており、地方自治体の制度を通じて金融機関に融資を申し込むシステムになっています。

これは小さな会社や個人事業向けに、地方自治体と民間の金融機関、信用保証協会が連携して実行するという仕組みで、中小企業が融資を受けやすくする趣旨でつくられています。なお、市区町村独自のものは「融資あっせん制度」と呼ばれて紹介されているものもありますが、要は地方自治体ごとに「借りやすい融資制度」がある、と認識すればおおよそ間違いありません。

細かいことを言うと、この制度融資をつかうと信用保証協会の保証料を補助してもらえたりするなど、いくつか利点があります。ポイントは、地方自治体ごとに制度が異なるというところで、つまりあなたの会社の本店所在地がある市区町村にも独自の制度融資があるかもしれない、ということになります。

ですから、これを使わない手はありません。制度融資のメリットは、各融資制度にもよりますが、中小企業支援の趣旨のもとに比較的借りやすいものになっていること、地方自治体からの補助があるなど、ストレートに金融機関に融資を申し込むよりも利点があること。これに対してデメリットとしては、制度を通じて信用保証協会の審査等を挟むため、金融機関に直接申し込む方法に比べて、やや時間がかかる傾向があることくらいで、決定的なデメリットはないと言えます。

結論を言えば、あなたがより資金調達に力を入れたいと考えていたら、地方自治体の制度融資を使わない手はありません。次項からはさらにこの制度融資についての解説をしていきますので、ぜひ活用の第一歩としてください。

市区町村特有の制度融資を利用しよう

ざっくり分けて考えると、一般的な融資制度としては日本政策金融公庫や民間の金融機関からの融資。そして、最終的には金融機関を通しますが、都道府県と市区町村それぞれ特有の制度融資がある。このような認識で間違いはありません。

ただ、この制度融資は意外と知られていないものです。保証料の補助など、中小企業にとって良い制度なのにも関わらず、知る機会がないのが現実。なぜ、制度融資を知る機会があまりないかといえば、こちらから情報を取りに行かない限り、自然に入ってくるものではないからです。

例えば、あなたが商工会や商工会議所などに加入していれば、自然と通知が送られてくることがあるかもしれません。しかし、未加入であれば情報送付はありません。また、あなたがすでに信用金庫などから借り入れがあり、営業担当などが付いている場合は、逆に提案されることがあります。これら以外の機会では、案外情報は入ってこないものです。

しかしながら、制度融資の種類にもよりますが、中には金利が低いものもあったり、前述の補助があったりなど、使わない手はありません。ぜひ、東京都だけでなく、あなたの本店所在地のある市区町村まで調べてみると良いでしょう。

とはいえ、制度融資も最終的には金融機関を通して融資が実行されるものです。ですから、その対象となる金融機関との付き合いは必要になります。やはりこうした中小企業の融資となれば、頼りになるのは地域に根ざした信用金庫や地方銀行です。付き合いがない場合は、いますぐお付き合いを始めましょう。

最初は口座開設から始めます。近年は、口座開設の審査も厳しくなりましたが、あなたが適切に納税し、個人の信用情報にキズがなければ、口座開設自体はできるはずです(最近は、法人代表者と個人の信用情報の紐付けが強いようで、個人に問題があると口座がつくれないこともあります)。

口座をつくり、小さな積立を始めるとか、あるいは実際に事業用の口座として入出金をするようになれば、関係のスタートです。このように地元に根ざした金融機関と付き合いをつくっておき、それから制度融資の活用を始めていきましょう。

なぜ、地域ごとの融資制度が存在するのか?

さて、ここは簡単に。ただ、知っておくとより借り入れができるようになりますので、参考程度に目を通して頂ければと思います。

なぜ、地域ごとの制度融資があるのかといえば、基本的な考えとして、地域はその地域の発展を考えています。その地域の企業が発展することで、当然納税も増え、地元が潤う。近年はインターネットの発展により、銀行もネットバンキングだけという企業もありますが、やはり原則としては地域振興という源流があるわけです。

例えば、地方銀行や信用金庫などは、基本的にその地域に根ざしています。前掲のような地元の振興もそうですが、互助的な意味合いもあるのです。A社が地元金融機関に売上を入金する。その入金された金額はまた別の会社のB社の従業員の給料の原資になったりする。もちろんこの場合に、直接的な取り引きがA社とB社との間にあるわけではありませんが、同じ金融機関のお金という意味では、関係性があるわけです。そういう意味では、「互助」の精神があるといえます。

ですから、例えばあなたの会社が地元の信用金庫と取り引きがあった場合、あなたの会社の従業員の給与の振込先を同じ信用金庫の口座に指定すると、互助的精神としては正解で、金融機関から評価とまではいきませんが、印象はさらによくなります。こうした金融機関のあらましや立ち位置を考えると、よりお金を借りるということに詳しくなれることでしょう。

メガバンクの取り引き先は、やはり大企業です。最近は中小企業向けの融資を取り扱うメガバンクもありますが、地方銀行や信用金庫のように営業担当までついて親身になってくれるかというと、そうでもないのが実情でしょう。そのため、私たち中小企業はこうした地元の互助的精神を持った金融機関と関係性をきちんと持ち、地元振興の意味合いを持つ制度融資をつかっていくことが重要なのです。

では、早速次章から制度融資の調べ方について、解説していきましょう。

第2章 市区町村ごとの融資制度の調べ方・使い方

東京都・市区町村ごとの融資制度は、どう調べればよいのか?

まず、東京都の制度融資について。どのような制度融資が東京都にあるのかは、巻末にすべてまとめてありますので、いますぐ制度融資の種類が知りたい場合には、巻末をご参照ください。

東京都の制度融資は、東京都産業労働局という機関が情報提供をしています。産業労働局は、産業の活性化や雇用の確保などが目的の機関です。

東京都産業労働局

産業労働局のウェブサイトの中に、「中小企業支援」というページがあり、その中に「融資」というページがあります。ここで東京都の制度融資がすべて紹介されているというわけです。

東京都産業労働局:融資

市区町村の場合は、それぞれの自治体のウェブサイトに「中小企業向け制度融資」などの名称のページがありますので、該当ページを参照してください。次項より、新宿区を例に紹介していきます。

このように、インターネットを通じて調べるのがひとつの方法。そのほか、情報のとり方としてはふたつあります。ひとつはすでに付き合いのある金融機関があれば、その金融機関の担当者にいま自社でつかえる制度融資がないかどうか聞いてみることです。あなたの会社の業績が良く、金融機関としてはいますぐ貸したいというような状況であれば、喜んで情報を持ってきてくれるでしょう。

もうひとつは、税理士に尋ねることです。このあたりは税理士の融資業務への関心度や実力の差などが出てしまいますが、融資業務に積極的な税理士事務所は、こうした制度融資の情報を集めているものです。あるいは、集めていなかったとしても、調べ方を知っているので、融資業務が得意な税理士を顧問税理士にしておくのも、やはり資金調達を成功させるポイントだと私は考えています。

市区町村ごとの融資制度活用のロードマップ/新宿区の例とほかの市区町村での応用

それでは、新宿区を例に制度融資の調べ方やその活用について解説していきましょう。新宿区の制度融資は、新宿区のウェブサイトからたどり着くことができます。中小企業向け制度融資というページです。

中小企業向け制度融資

新宿区では、一般融資として運転資金や設備資金などの融資。そのほか、小規模企業資金や経営応援資金、店舗改装金、債務一本化資金などを制度融資として用意しています。そのほか、政策融資として環境保全資金、ワーク・ライフ・バランス企業応援資金、情報技術活用促進資金などの制度融資を設けています。例えば、ワーク・ライフ・バランス企業応援資金などはほかの市区町村ではなかなか見られることがないような制度融資で、このように市区町村によって差が出てくるわけです。

一般的な運転資金の融資や創業融資などは、おおよそどの市区町村にも制度融資として存在しますが、新宿区の例のように新宿区固有のものもあるわけです。これは市区町村ごとに政策があり、予算があり、そして財源があるということから、同じ制度融資でも趣旨が変わってくると考えて間違いありません。

おおよそ、どの市区町村でも制度融資に関するパンフレットがダウンロードできるようになっているのが通例です。

中小企業向け制度融資のご案内(新宿区)

https://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000335537.pdf

もし、あなたの会社に金融機関の営業担当や顧問税理士のような相談先があれば、これらのパンフレットを渡して、「いま、私の会社で使える制度融資はないだろうか」と相談してしまうのが早いでしょう。自治体によりますが、必ずしもすべてが見やすいパンフレットとはなかなか言えず、こうした制度の素人がすべてを読み解くのは難しいと言えます。ですから、このパンフレットをもとに相談してしまうのが早いでしょう。

ほかの市区町村でも基本的に探し方、進め方は同じです。「○○区 制度融資」というキーワードで検索をかければ、おおよそ該当ページが1ページ目の検索結果に表れます。あとは金融機関の営業担当か、税理士につなげばよいだけです。

新しい制度融資を狙っていこう

無数にある制度融資の中で、もっとも狙い目なのは「新しい制度融資」です。もちろん、二〇二〇年のコロナ禍で実施された「コロナ融資」のような極端に借りやすい融資制度が敷かれることもありますが、こうした災害的なものは例外として、平常時に狙いやすいのは新しい制度融資です。

例えば、「はじめに」で解説した「SDGs融資」などは二〇二二年にはその最たるものになりました。世界的な取り組みとなっているSDGsに取り組んでいる中小企業を支援しようという趣旨で、通常の融資申込書一式に添付書類として「SDGsへの取り組み」を記載する書面が追加されます。「SDGsへの取り組み」というと、大げさに聞こえてしまうかもしれませんが、実務的にはSDGsに則った活動を記載するのみの場合が多く、実態としてSDGsへの取り組みが評価されて融資が実行されるというよりは、これからSDGsそのものを活動として広げていきたいという国家的な政策に影響されているというのが実情です。

そのため、SDGsへの取り組みに関する強いなにかしらの証明書が求められることは現時点ではないようです。ですから、添付書類といっても実際はそこまで難解な書類というわけではないのです。

そして、金融機関としても新しい制度融資は実績がほしいもので、比較的審査も通りやすい傾向にあります(あくまで「傾向」であり、実際は通常どおりの決算書を通じた審査などはきちんと行われます)。ですから、新しい制度融資は狙い目なのです。

言い換えれば、情報収集をきちんとすることが、制度融資を成功させるポイントでもあります。あなた自身が積極的に自分の会社の本店所在地がある自治体のウェブサイトをチェックしながら、金融機関の営業担当や税理士などを頼っていきましょう。

情報を集めながら、専門家や専門機関を活用する。これが制度融資活用の肝です。では、次章からはその専門家について解説していきます。

なお、金融機関に相談すれば、すべての制度融資について知ることができるわけではないことは、事前に抑えておきましょう。正直なところ、金融機関の融資担当者も、担当者によって知識やレベルのばらつきがあります。そのため、担当者に不安を感じたら、やはり専門家に相談した方が良いでしょう。

第3章 失敗しない融資の賢い申請方法

融資の申請はプロに任せよう

本章では、融資をいかに成功させるか。そういう視点で解説をしていきます。

基本的に、日本政策金融公庫であれ民間の金融機関であれ、融資を申し込むのは自由です。特に時期的な制限もありませんし、借りようと思ったらすぐに申し込むことができます。しかしながら、いつでも審査に通って借り放題かといえば、制度融資だとしてもそうとは言えないわけです。

あなたの会社が極めて優秀で、きちんと利益の出ている黒字決算の会社であれば、どの金融機関に行っても、スムーズに借りることができる可能性は高いと言えます。金融機関は業績の良い会社に貸し付け、無理なく返済してもらうのが一番ですから、黒字決算であれば借り入れはそう難しくありません。

問題は、直近の決算書が赤字の場合。または過去三期に赤字決算を挟む場合など、金融機関が厳しい審査をしなければならないようなときです。前述のとおり、金融機関は優秀な会社に融資を行いたいので、業績の良くない会社には消極的になりがちです。こんなときに頼りになるのが、融資の専門家です。

当然、融資を受けるときに借りやすくなるテクニックがあります。例えば、融資を受けるときに事業計画書や資金繰り表の提出は義務ではありませんが、精度の高い計画書を提出すれば赤字決算でも融資の審査が通ることがあります。こういったギリギリのラインの場合には、専門家を活用するのがベターだと言えるでしょう。

また、専門家と通じれば、関係性のある金融機関を紹介してもらうことも可能です。融資の審査自体に、人間関係が考慮されることはありませんが、提携金融機関の内情を良く知る専門家であれば、どのようにすれば審査が通りやすいかを把握している場合もあるわけです。

さらに、業績が良く借りやすい状態だとしても、専門家を活用すれば、より高額の融資が実現できる可能性もあります。より潤沢な資金調達を実現したい場合には、こうした専門家に一度相談してみると良いでしょう。

いずれにせよ、餅は餅屋です。経営者は資金調達のプロではないはず。資金調達もプロに任せるとまた違った結果が訪れるのは、言うまでもありません。
融資を取り扱う専門家の種類とその特長

融資の相談を受けたり、コンサルティング業務をしたりする専門家は多数います。資格者で言えば税理士や行政書士が代表格といえますが、融資に関する仕事には資格の制限がありませんので、無資格で融資コンサルタントを名乗る人もいます。専門家の見極め方については後述しますが、基本は実力・実績を基準に選ぶことになります。資格の有無は絶対ではありません。

まず、融資の専門家に依頼するメリットですが、黒字決算と赤字決算の場合に分けて考えてみましょう。

これまで解説したとおり、黒字決算の場合にはスムーズに借り入れができます。そのため、会社の業績が良ければ専門家に相談する必要はないのですが、借入額を増やしたい、あるいは長期的な借り入れ計画を立てたい場合などには活用すべきです。専門家に依頼することで、より高額そして複数の金融機関から長期的でかつ潤沢な資金調達が可能になる点は注目すべきポイントです。つまり、より会社の資金を潤沢にしたい場合、黒字決算でも専門家の活用が重要になります。

赤字決算の場合には、専門家の活用は必須だと言えましょう。事業計画書や資金繰り表の作成は、赤字決算の場合には必須です。プロがつくった書類がなければ、かなり難しいとお考えください。赤字だからといって借りられないわけではなく、そこはやはりプロのテクニックが必要です。

では、どのような専門家に依頼すれば良いかといえば、やはりその筆頭は税理士だと言えます。もちろん、税理士でなくても融資を専門にするコンサルタントもいますが、融資の基本となるのはやはり決算書です。そういう意味では、普段から決算書の作成に携わる税理士に軍配が上がると言って良いでしょう。ただし、税理士の中には融資に関する相談や依頼を受け付けていない税理士もいますので、注意が必要です。

では、どのような税理士に融資の相談をすれば良いか。次項で解説していきます。

融資を取り扱う専門家の見極め方

基本的な見極め方は、やはり実績です。「融資コンサルティング専門」と「専門」を謳う専門家はいますが、専門なだけであって実績豊富かと言えば、そうとは言い切れませんので注意が必要です。

まずは税理士などの専門家に、融資の実績をきちんと聞きましょう。これまでどのくらいの規模の会社のコンサルティングを行ったのか。資金調達額はどのくらいか。赤字決算から借りられた事例はあるかなど、できるだけ自分の会社の状況と目指すゴールが近い事例を持つ専門家に依頼するのがベターです。

特にあなたの会社が赤字決算である場合には、赤字決算から借りられた事例があるかどうかを確認しておくべきです。「クライアントが融資に成功した総額○億円」などとキャッチコピーを載せる事務所もありますが、黒字決算だけの融資であれば、積み重ねれば実現できる数字です。問題は赤字決算の会社にどれだけ融資を実行させたか。あなたの会社が赤字決算ならば、必ず確認した上で依頼してください。

専門家への報酬ですが、これはスポットで考えないことが重要です。例えば、着手金○万円、成功報酬○○万円、などの報酬形態で依頼を受ける事務所が一般的ですが、短期的に考えると一定のコストに見えますが、融資実行額に対して報酬を考慮することがポイントです。例えば、税理士と顧問契約をして、年間六〇万円の報酬を支払ったとしましょう。六〇万円となれば、決してリーズナブルとは言えません。しかし、この税理士事務所との契約によって、年間一〇〇〇万円、二〇〇〇万円の資金調達を可能にするなら、その手数料としては破格になるはずです。もちろん金利や信用保証協会の保証料などもありますが、それを差し引いても破格だと私は考えます。

なお、税理士などの専門家に依頼する場合は、補助金や助成金などにも明るい事務所に依頼するとなお良いと言えます。長期にわたって経営計画を練るパートナーになり、補助金や助成金も合わせて提案してくれる事務所であれば、報酬を支払った以上の資金調達が実現できる可能性がより高まります。この場合、例えば税理士事務所が助成金を取り扱う社労士事務所を併設していれば、より一層スピーディな対応を実現してもらえます。長期的に、そして視野を広く考えると、融資をスポット的に考えるのではなく、融資を始めとした補助金、助成金など総合的に資金調達を考えていくのが賢い選択だといえるでしょう。

いますぐ相談することが、融資実行率を高める最大のポイント

本書巻末に、東京都の制度融資の一覧を掲載していますが、条件や内容は様々です。あなたの会社が使える制度融資もあると思いますし、また条件に見合わないものもあることでしょう。

効果的な融資を実現するためには、やはり早く動くべきです。例えばコロナ融資のようなものは時限的ですし、瞬間的に手を挙げて始めないとその優遇期間を通り過ぎてしまうことになります。そのため、資金繰りを充実させるのであれば、情報収集を常にしている専門家との連携は重要ですし、専門家の活用こそがスピーディな資金調達を可能にするわけです。

例えば、少し偏った例ですが、こんな事例があります。ある会社は、順調に黒字決算を続け、融資も時折受けていました。ある年の決算期前、ちょっとしたアクシデントが起こり、このままでは最終的に赤字決算になる予測が立ちました。次第に資金も心細くなっていき、私のところに相談に来られました。

この赤字決算が出てしまう前に相談に来られたのが良い判断でした。前期、前々期までは黒字で、今期が赤字見通し。もちろん、赤字決算が出たからといって、絶対に融資の審査が通らないわけではありませんが、黒字決算に比べれば厳しくなることは分かっています。

そこで、決算期は迫っていましたが、前期と前々期の分の決算書。そして直近の試算表のみを持って融資を受けるようにアドバイスしたのです。つまり、赤字決算になる前に、金融機関から良い評価を受けられる時期の書類を元に融資を申請したわけです。赤字決算が出てしまってからでは、金融機関も厳しい審査をせざるを得ないわけですが、黒字決算であればほぼ問題ありません。あとは仮に直近の決算が赤字になったとしても、まだ一年あるわけですから取り返す猶予はありますし、何より融資は実行されているわけです。

もし、その会社が直近の決算で赤字を出してしまったあとに相談に来られたとしたら、正直厳しかったかもしれません。しかし、この経営者の早い判断が、功を奏しました。早ければ早いほど、できることは増えます。もしあなたも資金繰りを改善させたい、より潤沢な資金調達を実現させたいとお考えでしたら、ぜひお早めに専門家に相談されることを強くお勧めします。

無料相談のご案内

さきがけ税理士法人では、本書の読者限定に無料で融資や資金調達に関するご相談を受け付けております。オンライン通話も可能ですので、お気軽にご相談ください。

著者プロフィール
黒川 明(税理士)

さきがけ税理士法人、さきがけ社会保険労務士法人などを中心とする経営支援グループ。融資、創業支援などに定評がある。2021年12月GPTW社「働きがいのある会社」認定。従業員数約80名。税理士業界"トップ0.1%"に入る成長実績。
融資実績:1,000件以上

事務所名:さきがけ税理士法人
代表者:黒川 明
本店住所:東京都多摩市落合1丁目15番2号 多摩センタートーセイビル4階
新宿支店:東京都新宿区新宿四丁目3番30号 ランザンAYビルディング 302号室
税務調査 緊急相談ダイヤル:0120-851-320(年中無休8:30-17:30)
TEL:042-313-8364(代表)/ FAX:042-313-8365

付録:2022年 東京都中小企業制度融資一覧

※()内は融資限度額

・DX・イノベ産業育成(二億八〇〇〇万円)
革新的な製品・サービス等への取り組みに対して

・働き方改革支援(二億八〇〇〇万円)
テレワーク等の取り組みに対して

・ソーシャルビジネス・ソーシャルファーム支援(二億八〇〇〇万円)
認定NPO法人、特定認定NPO法人の認定を取得している等の場合

・脱炭素・ゼロ・エミッション支援(二億八〇〇〇万円)
脱炭素等の環境に際した事業への取り組みについて

・BCP・サイバーセキュリティ対策支援(二億八〇〇〇万円)
BCPやサイバーセキュリティ対策の取り組みについて

・金融機関提案(二億八〇〇〇万円)
金融機関による独自の支援を受けたい場合

・コロナ借換(借換元の融資残高及び事業計画実施に必要な資金の範囲内)
コロナ融資の融資残高がある場合等

・伴走全国(六〇〇〇万円)
・伴走対応(二億二〇〇〇万円)
セーフティネット四号、五号の取得等がある場合

・事業転換・業態転換
コロナ禍によって売上が五%以上減少し、事業転換等に取り組む場合

○小規模事業融資
・小口フリーランス(二〇〇〇万円)
・クイックつなぎ(三〇〇万円)

○一般事業融資
・事業一般・小規模特別(二億八〇〇〇万円)
・クイックつなぎ(五〇〇万円)
・補助金・助成金つなぎ(一億円)

○創業融資(三五〇〇万円)
事業を営んでいない個人(創業時)、または設立から五年以内の中小企業等

○販路開拓融資
・海外展開支援(二億八〇〇〇万円)
・ビジネスチャンス・ナビ(二〇〇〇万円)

○設備投資・企業立地促進(二億八〇〇〇万円)

○経営強化(二億八〇〇〇万円)

○事業承継融資(二億八〇〇〇万円)

○経営安定融資
・経営セーフ(二億八〇〇〇万円)
・経営一般(一億円)
・経営改善(二億八〇〇〇万円)

○借換融資(借換元の融資残高及び事業計画実施に必要な資金の範囲内)

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