詩「月へ帰ろう」

貯まったポイントを使ったから
今夜の夕食は豪華にできるね
その前に公園に寄って
すこしだけ上達した、逆上がりの失敗をみせてよ
白い月がひそかに現れたから
ここをおとぎ話の世界に変えてくれるかな
砂利をふむ私たちの足が
何も急いでいないようにみえること
ゆっくりと石を鳴らして
歩いているのか、沈んでいくのか、
それすらもわからないようになれば
知らぬうちに二人だけがゆっくり消えるような気がする
もう一生、夕ご飯なんて食べなくていっか

笑顔がいいと思ったのは
ありふれた幸せを
そっと拒めた日のことです

春だから、夕方は永く優しくて
もうこれ以上だれかに
してあげられることは何もないような気がする
鉄の匂いと、炒め物の香ばしさと、風の甘やかさ
笑顔がいいよねと呟いた
君は柔らかな手のひらの肉で
石に手をついて
形状記憶している、
どうしてそんなにあたたかいのだろうと胸が
痛かった
だから私たち、笑顔がいいよね




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