詩「明け方の月」

私が揺れているあいだに
あなたの大地は固まり
私の雲は軋んで
今夜は月が二つ見える

だいじょうぶ、どっちが偽物とかないから
同じように美しくても
どちらかを信じなきゃならないのなら
私は先に見えなくなる方を信じるよ
だから明け方までこのまま、ここにいよう

私があなたの瞳を覗き込めば
ちゃんと絶望が見えるように、あなた生きていて
あなたの映す希望が、私には絶望に見えるように
その瞳の弦は
きれいに弧をえがいて光っている
いつか私をさすもの
すこしずつ私をさしているもの
さされてでき上がる空模様を
見てみたくて
私たちは泣き出しもせずに
絶望を示し合った
愛はやっと、その本領を発揮しはじめる
本物なんてなくなった場所で



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