詩「そこから」

朝の4時のラジオなんて
初めてきいた
ナビゲーターの丁寧でどこか親しい口調
わたしがわたしを掴む手を緩めると
もう一人のわたしがまるでオルゴールみたいに
ゆっくりと、その心のことばを紡いでゆく

静かな朝をさやさやと流れる喋りことばは
わたしのまわりを柔らかく漂ってほどける
ただの音として、ほどける来し方や哲学
わたしのことばも、いつかだれかのまわりで
ふわりとほどけて消えるだろうか

人生には、わたしのままではどうしても
越えられない夜があるから
そんなとき、逃げてみたらいい
お腹がすいたから朝の4時だけど
きのう買ったカレーパンを食べたよ

ホテルの朝に、ゆっくりと
人々が動き始める気配がする
わたしはふうっと息を吐いて
ふとんに仰向けになる
白い壁の角で、光が折れ曲がり
それでも光に行けないところはないのだと
羨ましくなった
わたしはわたしを生きていく
いつでも、そのときいるその場所から



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