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映画にまつわる思い出
明治生まれの祖父は、香水の壜をコレクションするおしゃれな紳士だった。耳が不自由だった彼と筆談で会話する日常は私にとって自然だったし、字幕付きの映画とスポーツ観戦で話が通じた。祖父と暮らしたおかげで、私は映像作品と文章を書くことが好きになったように思う。
戦後生まれの父には、よく映画館に連れて行ってもらった。マクドナルドでチーズバーガーセットを買ってもらい、スクリーンを観ながら飲むコーラは格別で、結婚した今も、時折思い出すかけがえのない時間だ。こうして私は、映画が大好きな人間に育った。
平成生まれの娘たちも、映画をたくさん浴びて育った。1人はミュージカル俳優を志し、1人は映像の仕事に就いたほどに。スクリーンに映し出される場景やメロディーは、幼い彼らにとって心の拠りどころになったのだろう。
映画にまつわる思い出は、家族にまつわる記憶であり、自分の辿ってきた道を語る上で、なくてはならないパーツだと分かった。思い出はふわりと記憶に留まり、今を確かなものにしてくれる。大切な人たちと自分の日々を形づくってくれる。そして日々は未来へと、静かに続いてゆく。これからも映画は私のかたわらに、そっと寄り添っていてくれるだろう。
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