“小瀧望”という一番星 ①
あのデスホリが再び上演される
6月22日朝。『DEATH TAKES A HOLIDAY』の上演が発表された。
宝塚歌劇団そして月組がそして、『DEATH TAKES A HOLIDAY』(以下、デスホリ)という作品が大好きな私からすると大きな喜びであった。月組で上演された際には、チケットが取れずのちに円盤での出会いであったため、生でデスホリの音楽を楽しめることが夢のような発表であった。
同時に、元月組トップ娘役の美園さくらの久々の舞台復帰でもあった。
私は、『たまさく』の大ファンであり美園さくらの舞台姿を何度も夢に見ていたこともあり、デスホリへの期待は大きくなった。
ただ、当時退団公演の真っ最中であった月城かなとの死神とサーキ王子には譲れないものがあった。人ではない死神という存在。宝塚歌劇団が創る幻のような男役像に相応しい、神秘的な役。そしてそれ以上に歌唱力を求められるミュージカルスキルの必要な大きな役である。
“小瀧望”
私は彼のことを一ミリも知らなかった。
月城かなとが築き上げた死神/サーキ王子の魅力を壊さないかそれだけが心配だった。しかし同時に、信頼する生田先生が見つけた新たな死神に期待する気持ちもどこかにあったのだろう。
未知の人間について知る
小学校時代のヅカ友もこのニュースを目にしていた。
美園さくらの舞台復帰に胸を高鳴らせつつも、とりあえず3階席の端っこのチケットを取った。
2人で迷子になりながら(主に私が)東急シアターオーブに向かった。
既に宝塚歌劇団を含め100回以上のミュージカルを見ている私だが、毎回舞台に立つ人かのように緊張し、食べ物が喉を通らないことが多いためこの日はモンブランを食べた。
モンブランを味わいながら、友人と“小瀧望”という未知の人間について調べていた。
彼は“WEST.”というグループに所属しているらしい
身長は184㎝。高い。
歌は、、記載が特にない。
薄い知識である。
ぬいぐるみの祭り
東急シアターオーブ
宝塚歌劇団の星組公演『BIG FISH』以来である。
友人は東急シアターオーブが初めてだったため、景色が一望できるんだよ~といいつつエレベーターを上がると、そこにはぬいぐるみの写真会が開かれていた。
“ぬい”というらしい。
お!サーキ王子のかっこをしているぬいもいる。
どうやら“小瀧望”のファンはぬいぐるみを持つらしい。
こちらは特に持ち物はないので、ポスターの写真だけを撮る。
友人は別にいいかなというテンションであった。
毎回プログラムを買う私は絵本のような可愛らしいプログラムを購入した。
宝塚歌劇団のプログラムに比べると高いなぁ、、なんて思うのはヅカオタあるあるだろう。
東急シアターオーブの3階席は見にくいという噂を聞いていたが、手すりがあると元から知っていれば許せる位置だった。
席に着き、オペラグラスを準備しデスホリの世界と美園さくらの再会に心を弾ませて幕が上がるのを待った。
『あのさ、小瀧さん、、』
幕間
トイレに並んだ友人とお互い同じ話をしたいのに、きっと話したいのに、上手く言葉が続かない。
「あのさ、小瀧さん、、」
と切り出すと、とめどなく溢れるミュージカル俳優“小瀧望”に出会った衝撃の数々。我々は完全に“小瀧望”という未知の人間の虜になっていた。
歌声の深さ、ピッチの安定感、そして何より、華やかな舞台姿。
彼には男臭さがなかった。まさにスター。誰もが認める王子だった。
2幕。我々のオペラグラスは同じタイミングに動いていた。
“小瀧望”をひたすら追っていたのだ。
新たなミュージカル俳優の誕生を見届けた達成感でガッツポーズをしながら席を立った。
友人はポスターを反射しないように時間をかけながら撮影していた。
客寄せパンダじゃない。本物だ。
正直、客寄せパンダだと思っていた。
私も友人も正直な意見はこれである。
違う。客寄せパンダではなく、彼は野生のトップスターである。
なぜ早く見つからなかったのかさえ思う。
いや、デスホリという作品が、死神/サーキ王子という役が今の“小瀧望”を待っていたのかもしれない。
月組のデスホリを覚えるほど観ていたからこそ分かる、月組そして月城かなとへのリスペクト。そして超えていこうという力。
私はもっと“小瀧望”を知りたい。
そう思って、YouTubeを開いた。
そこには王子の美しさはそのままに、
面白関西人と出会うこととなる。