見出し画像

夜友達

最初のお店で友達が出来た。かなちゃんだ。
福岡出身で、かわいいといえばかわいい、細くて気の強い女の子だった。
良い子でもなく悪い子でもなく、サバサバした野心家だった。

彼女はNo.1になりたいと言って、昼間も働きながら毎日出勤して頑張っていた。

かなちゃんがNo.1になりたいと話していた時、
「咲ちゃんはなりたくないの?」と聞かれたことがあった。

「全然なりたくないよ!」と私は即座に答えた。
時給で十分だと思っていたし、そんなことを考えたこともなかった。

なれると思ってなかったから考えたことがなかったのか、なりたくないと思っていたのかよくわからないけど、どこかで「私には無理なもの」だと、考えるよりも前に信じていることだったのかもしれない。

そういうことは実はたくさんあるんじゃないかと思う。
特に大人になるにつれて、情報に埋もれて自分で自分に制限をかけているのだろうけど、全く気づけない。
誰かに聞かれて初めて考える。「やりたい」と認識する前に潰したり押し込んだりしているんじゃないだろうか。

って、その頃の私は本当に何も考えていなかったのかもしれないけど。笑

というわけで、ここでは初めての夜のお店の友達が出来たから、お店が終わってごはんを食べに行ったりもした。
もちろん、お店を辞めてそれっきりだけど、それなりに楽しい経験だった。

キャバクラは本業でない子も多くて、出勤日数もバラバラだし、他の人に関わりたくないと考える子も多い。
そもそも名前も違うし色々な事情があって夜の仕事をしている子も多く素性を明かしたくない子もたくさんいる。

売上競争で敵視したりされたり殺伐としていることもあるし、足を引っ張られることもある。
女の子に関わらなくても出来るし、お客さんに気を遣っているから女の子にまで気を遣いたくなかったり、それにキャバクラで働こうとするような子は基本的に強いから一人で平気だ。
無駄に関わって面倒に巻き込まれるのも嫌だし、やたらとフレンドリーに自分のことを話してくるようなタイプはここではあまり好かれない。
仲良くする場所ではなくて、稼ぐ場所だからだろう。

もちろん友達になる場合もあるし、仲が良い方が気が楽でもあるけど、やっぱり信用できないことの方が多い世界だと思う。
というより、信用しない方が上手くいく世界といえるのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?