20年間。昼と夜、2人の私を生きてきた。そろそろ彼女の人生が終わる。 テレビにでるよう…

20年間。昼と夜、2人の私を生きてきた。そろそろ彼女の人生が終わる。 テレビにでるような伝説のキャバ嬢ではないし、お酒も飲めない。 それでも夜の世界が大好きな彼女を、暗闇に隠してきた咲(サキ)という彼女の人生を、 少しだけ残しておこうと思う。

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最初に… わたしと咲

彼女は夜の世界で生きるもう一人の私だ。 夜の世界では「源氏名」を付ける。 本名を使う子もいるけど、本名だと演じ分けることができなくなるので良くないとか、水からあがれなくなるから、などと諸説ある。 ※「水からあがれなくなる」=「水商売を辞められなくなる」 どんな名前を付けるか、特にルールはないけど、 「あ」がつく名前が良いといったりもする。 単純に電話帳の最初に来るからだと思うけど、違うかな。 夜の女は記憶に残らなければならない。残らなければどうしようもない。 だから名前

    • 個性

      お店は黒いソファーでお客さんが20~25人くらい座れる中箱だった。 マミはすぐに人気が出て、私はまあまあという感じで、でもお店に行く前になると行きたくなくなる病を発症して、しょっちゅう遅刻をしていた。 そうしているうちに、クビにすると言われたりして、悔しくなってもう少しやってみようと思ったり、やっぱり辞めたいと思ったりしていた。 マミがよく連絡をくれていたから、行けているような感じで本業としての自覚も全然なかった。 女の子の数はそれほど多くなかったし、暇なお店で、古株の

      • 本業として

        最初のお店は昼間の仕事を変えるタイミングで辞めた。 というのも、昼間の仕事を辞めて少しの間本業にすることにしたからだ。 もう少しお家に近いところで働きたかったから、近所でスカウトされたお店に変えたのだ。 このお店は場末だった。笑 そんなに長く働くつもりもなかったし、少しお金を貯めながら次の仕事を探そうと思っていたからどこでもよかったとはいえ…だった。 お店も綺麗なお店ではなかったし、女の子の装いも失礼ながら良いとはいえないもので、ヘアメイクはなく、何故か白いドレスがルー

        • 夜友達

          最初のお店で友達が出来た。かなちゃんだ。 福岡出身で、かわいいといえばかわいい、細くて気の強い女の子だった。 良い子でもなく悪い子でもなく、サバサバした野心家だった。 彼女はNo.1になりたいと言って、昼間も働きながら毎日出勤して頑張っていた。 かなちゃんがNo.1になりたいと話していた時、 「咲ちゃんはなりたくないの?」と聞かれたことがあった。 「全然なりたくないよ!」と私は即座に答えた。 時給で十分だと思っていたし、そんなことを考えたこともなかった。 なれると思っ

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        最初に… わたしと咲

          最初のキャバクラ

          21歳の時に上京した。 といっても、東京の物価に驚いて多摩川を越えたから神奈川だったけど。 何も考えずにスーツケース1つで友達を頼りに上京した私は昼間のバイトだけで生活できる訳もなく、夜のバイトも始めた。 最初は適当にスカウトされたキャバクラで週3回ほどバイトをすることにした。時給は最初3,000円でポイント制だった。 ポイントは場内指名やドリンクバックで加算されて、翌半期の時給が決まる。 初めてのキャバクラで緊張していたし、ドレスも初めてで、標準語にも慣れていなかった

          最初のキャバクラ

          キャバクラを選んだ理由

          キャバクラで働き始めたのは上京してからだ。 昼間の仕事だけでは生活が苦しかったから、夜も働こうと思っていた。 お酒が飲めないこと、お姉さんに気を遣うのが面倒だったこと、営業時間が長いこと、クラブは初期投資や経費がかかる等の理由があって、キャバクラに決めた。 お酒が飲めないのはクラブでは致命的。お姉さんに協力できなければ、指名をとるのは相当大変だし、それにキャバクラのような1対1の接客の方が楽だと思った。 初期投資とはドレスやヘアセット、お客さんへのプレゼントやアフターの

          キャバクラを選んだ理由

          キャバクラとは

          キャバクラは一人のお客さんにつき一人の女の子がつくのが基本。 お客さんはフリーと指名のお客さんがいる。 フリーは指名がいないお客さんのことで、基本的には15~20分で女の子が変わる。 指名の場合は指名の女の子が席につき、複数の指名が被っている場合は抜けている間にヘルプの女の子がつく。 システムは時間制で1セット50~60分。その後は1セットごとに延長する。 フリーボトルがあるお店、ボトルキープができるお店、色々あるけど、女の子のドリンクはだいたい別に頼む。 このドリンクも

          キャバクラとは

          最悪のスナック まとめ

          ネタにはなるとはいえど、本当に大変なお店だった。 軍歌しか歌わないおじさん。 じゃらっと小銭のチップを胸の谷間に入れてくれるおじさん。 毎回瓶ビール1本で5倍くらいぼったくられる郵便局のおじさん。 Weedをもってくるスーパー遊び人の友達のお父さん。 歌いながらチークダンスを迫って触りたい願望全開のおじいちゃん。 一日中UFOキャッチャーをしている闇金のおじさん。 格好つけて懐メロ熱唱なのに音痴すぎるチンピラさん。 卵を使った卑猥なプレイの話を大声でするヘルプに来てくれたお

          最悪のスナック まとめ

          最後の危機(後半)

          親分さんと私は、田舎の深夜のファミレスでコーヒーを飲んだ。 その後のことが気になって落ち着かず、何を話したのかなんて全く覚えていない。 もちろんコーヒーを飲んで、すぐに帰ることになった。 当たり前だ、目的はコーヒーじゃない。 ついに車に乗り込んでエンジンをかけてしまったけど、気が気じゃない。 というのも、ファミレスからの帰り道はラブホテルの前を通らなければならなかった。 違う道を通る理由を一生懸命探してみたものの、結局理由は見つからず、 ついにそこにさしかかってしまっ

          最後の危機(後半)

          最後の危機(前半)

          もう1話だけ、このお店での最後について書きたいと思う。 色々と限界だったけど、結局逃げることもできず、 学校卒業で地元を離れるタイミングを待つしかなかった。 お金をとられ脅されながら、やっと最後の日を迎えた。 最後の日はお店の面倒見屋さんが来てくれるという! 私なんかのために皆さんで来てもらえるなんて!と、とても嬉しかった。 お店を閉めた後、皆様の事務所に場所を移しみんなで鍋パーティー。 いずみさんやもう一人私と入れ替わりで入った女の子、ママと一緒にお邪魔した。 トッ

          最後の危機(前半)

          いずみさん(後半)

          いずみさんは過去について話し始めた… 話は3年前に遡る。 ある日、いずみさんの携帯に間違い電話がかかってきて、ロマンチックなことにその相手と仲良くなり、遠距離ではあったが交際に発展したのだそうだ。 そこから、遠距離恋愛は2年ほど続いたらしいのだけど、1年ほどたったころ、お金を貸してほしいと言われるようになり、彼の借金が発覚。 もちろんいずみさんは、お金を貸した。 そして自分が借金をして、彼の借金を返すようになった。 結局カード会社を8社に渡りキャッシングをして、彼の借金

          いずみさん(後半)

          いずみさん(前半)

          スナックの話に戻る。 お店にはもう一人女の人が働いていた。 いずみさんという10歳年上の幼稚園の先生で公務員だった。 本当に消えそうな声で話す華奢な体系でとても優しい人で、公務員なのに、水商売をする感じではないのに、どうしてここで働いているんだろうと疑問に思っていた。 だんだんと劣悪な環境でお互いを気に掛けるようになり、 プライベートな話もするようになっていったけど、どうしてここで働いているのかはわからないままだった。 ある日のこと、常連のお客さんが来ていていずみさんが

          いずみさん(前半)

          オフライン

          スナックの話は少し休憩して、最近思うことを挟んでみたい。なと。 最近、オフラインとオンラインという区分けが生まれて、普通に誘われた時にも「オフラインで?」と聞いてしまうほどだ。 そこでオンラインとオフラインの良さについて考えてみた。 オンラインで人と交流することに最初は違和感があるものの、慣れてしまえば普通になってくる。 きっと最初に電話ができたときもこんな感じだったのだろう。 オンラインでは顔は見えるものの、基本的には声(文字)の情報に偏ってしまうので、デメリットを考

          オフライン

          最悪っぷり

          結局、私は辞めることも出来ず、恐怖を感じながら働かなければならなくなった。 その実態は、とてつもないものだった。 お店は8時にオープンし、1時くらいには終わる。 他のスナックにはお客さんが入っていても、うちにはほとんどいない。 ほぼほぼ常連の人だった。 ママはお世辞にも綺麗とは言えず、下品で酒癖が悪く口も悪い。 そして、残念なことに性格も悪かった。 確実に幅広い方面から嫌われているようで、そんなところに来るお客さんもお客さんだった。 私は触られ放題で、ママはむしろ推奨

          最悪っぷり

          最悪の始まり

          そんなわけで、スナックでバイトをすることになった。 数日たったころ、出勤前にコンパニオン会社の社長から連絡があった。 「今から出勤なんで。」と電話を切ろうとした私に 「どこに?」 と、低い声が響いた。 声のトーンから、何かやばいことを言ったんだとわかった。 それでもとっさに嘘が思いつかず、 「こないだ紹介してもらったお店です。」 と答えてしまった。 「それはまずいな。まあ、とりあえず切るよ」 と言われ電話は切れた。 一気に血の気が引いた。 今までの人生でもこれほど血の

          最悪の始まり

          スナックへ

          スナックで働くことになったのは宴会コンパニオンを始めた少し後だった。 コンパニオン会社の社長に1日だけバイトをしてほしいと紹介されたのが始まりだった。 そこにはママと女の子が一人働いていた。 もちろん、場末の場末のスナックで、ママはバブルの匂いがむんむんする 化石のような人だった。 酒やけした声と、ワンレンロングの黒髪で、ムチムチとした体型。 酔って下品に笑い、声が大きく、口が悪い。笑 女の子は消えかけそうな声で話す、10歳年上の保育士をしている華奢な女性だった。 お

          スナックへ