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いずみさん(前半)

スナックの話に戻る。

お店にはもう一人女の人が働いていた。
いずみさんという10歳年上の幼稚園の先生で公務員だった。
本当に消えそうな声で話す華奢な体系でとても優しい人で、公務員なのに、水商売をする感じではないのに、どうしてここで働いているんだろうと疑問に思っていた。

だんだんと劣悪な環境でお互いを気に掛けるようになり、
プライベートな話もするようになっていったけど、どうしてここで働いているのかはわからないままだった。

ある日のこと、常連のお客さんが来ていていずみさんが接客をしていた。

60代後半くらいのそのお客さんは飲食店を経営していて、
いずみさんも私も鍋パーティーにも呼んでもらったこともある人だ。

そのお客さん、ママ、いずみさん、私がお店に残った。
ママはお店を閉める準備をしている。

もしかして、お客さんとこの後ごはんを食べにいかなきゃいけないのかな…。帰りたい…。

と思いながら、いずみさんと一緒に片づけていたら、
ママがお客さんを送っていくようにいずみさんに頼んでいた。
前にも同じようなことがあったので、ごはんは行かなくていいんだと思い、私はほっとした。

そしてその日はママを家まで送って帰宅した。

翌日。
今まで連絡がきたことがない、いずみさんからメールがきた。
「お店の前に少し会える?」

何か起こったんだと思い、途端に不安になった私はすぐに返事をして、
夕方に会うことになった。

どうしたのかと、聞く私にいずみさんが話し始めた。

まずは昨日何があったのかというと、彼女は売られたとのことだった。苦笑
ママと常連さんの間で取引が行われ、ママはお金をもらって、
いずみさんの体を売るということで合意し、ことが起こる様に促した。

昨日送っていく車の中で「聞いているんだろ」と話しをされたそうだ。
もちろん何も知らないいずみさんは断って帰ってきたらしい。

そしてどうしてそんなことになったのかというと、いずみさんの借金が原因だった。
お金を貸してやるから体で返せ。という取引だったようだ。
ママはその仲介料をもらったというわけだ。

なんというママ…。ママらしい…。

そこからいずみさんの男運のなさというか、なんとも言い難い話を聞くことになった…。

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