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児童40人引率し富士山登山した時のこと

コロナ禍による行動自粛が解除され、今年の夏は行楽に勤しむ姿が散見される一方で、問題になる行動がいくつか散見されるようになりました。

この投稿で取り上げるのは富士山登山について想うことです。

山小屋のSNS、台風7号が近づいているにも関わらず入山を試みる登山者。SNS上で非難を受けていたことは記憶に新しいところです。その他にも弾丸登山で力づき救助されるにいたる様。有料トイレ建造物内に居座る姿。登山計画に慎重を欠いた事例が頻発している様が報道されました。

富士山。世界文化遺産にも指定され、世界的にも知名度が高い山です。登山者を多く受け入れる宿泊施設があることから難易度が低い登山に見られがちです。

2013年8月に撮影した富士山。頂上付近では夏でも夜明け前相当冷え込みます。軽装備で行くとたやすく低体温症状が現れる厳しい山です。

青年会議所に在籍して副委員長(青少年事業担当)を任された年に夏休みこども企画で富士山登山を計画しました。内部会議においては稟議を通すために様々な資料を作成し、合意形成に努めました。

実施日は土日でいいのか。不都合があれば平日にずらすことも考えなくてはなりません。結局本番は金曜日、土曜日の1泊2日で行いました。

宿泊地も考慮しました。宿泊により酸素の薄い場所に長時間留まることから何合目に泊まるかは喧々諤々の議論になりました。結果、標高3,000mの山小屋に宿泊することになりました。

そして迎えた保護者説明会、第1回子ども会議。それまでに大学の山岳部をくまなく回りボランティアへの協力(旅費は青年会議所で負担)を得るべく日々行脚し、2大学から協力を得ました。他にも子ども44人をサポートする大人を全力で集め、会議に臨みました。(ちょうどこの日にユネスコ会議において世界遺産登録が決定され、会場は大盛り上がりでした。)

会議実施後、主要メンバーで現地下見登山を1泊2日で実施。実際に登山し、事業が実施可能であることを確認します。

子どもたちはいきなり本番を迎えさせるわけにはいかないので、地元の山で登山体験と第2回子ども会議。会議時には大学の山岳部の方に解説もいただきました。小学6年生をリーダーに5班の編成を行い、子どもたちで助け合う意識を醸成しました。

この時は標高500m弱の山を登りました。初夏の猛暑日でした。山登りが極度に大変なことを身をもって味わっていただきました。

そして迎えた当日。5合目で準備体操です。当日は富士山専門の山岳ガイドを複数雇用しました。(業務委託です。)5号目の高度に順応させてから登山を開始しました。

宿泊は元祖7合目。標高3000mの山口山荘です。ここまで子ども44名、大人35名全員たどり着きました。総勢80名の大所帯。山小屋1棟貸切でした。

2日目の朝。体調不良を覚えるものは下山。速度が遅いものは別班編成。つらいですが仕方ありません。それでも子ども40名以上、大人30名以上が頂上に向かいます。しっかりした装備で出発します。(ビニールポンチョとかは許可しませんでした。)

雲海が眼下に広がります。それだけ厳しい環境です。草木は当然ですが生えていません。その環境で急斜面や崖を登ってくるのが富士山登山です。

頂上には子ども40名近く、大人も30名近くたどり着きました。他の青年会議所の実績を大きく上回るものでした。ペースの遅れた子供には大人や大学山岳部、山岳ガイドがマンツーマンでフォローしました。通信環境がそこまで整備されていなかった時代。重要担当者同士は無線で通信を行いました。ゴアテックスの雨合羽を防寒着代わりに着用し頂上で腕組み写真。それなりのことを行事担当副委員長として、しっかり成しとげることができたという気持ちで写真を撮影してもらいました。

頂上の景色。荒々しい光景は空気の薄い厳しい状況を物語っています。

9合5勺。胸突きというくらいです。心臓破りにふさわしい登山道でした。

山頂まで登っても下りがあります。下りは下りで足の皮がむけたとか散々な子どもも多くいました。自分も児童2人の荷物を背負い、手に持ちました。なだめすかして何とか5合目まで全員無事に降りてくることができました。

ここまでやるかというくらいに安全策をとり、装備もしっかり準備しましたが、それでも厳しい判断をする時もありました。山のぼりは極度の自己責任です。安易に救助に頼ればよいというものではないように思慮します。安易な行動が取り返しのつかない悲惨な事態を招く。身をもって悲惨な体験をする前に気づきたいものです。

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