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【祝6周年】編集長が語る、「SAKETIMES」が歩んできた6年間

日本酒専門WEBメディア「SAKETIMES」が誕生したのは、2014年6月19日のこと。それからちょうど6年。2020年5月には月間純ページビュー(※)が100万PVを突破し、SAKETIMESは堅調に成長してきました。

そこで、編集部スタッフの熊澤(トップ画像左)が編集長の小池(トップ画像右)に、月間100万PV達成に大きく関わった施策やメディア運営のポイントなどについてインタビューしました。

※ 自社サイト内のPV数

▼ 【2014年6月】 「SAKETIMES」リリース

熊澤:小池さんにインタビューをするのは初めてですね。今日はよろしくお願いします!

小池:よろしくお願いします!

SAKETIMESの歩み_0617

熊澤:2014年6月にSAKETIMESが始まったんですが、日本酒専門のメディアって当時から多くはありませんでしたよね。立ち上げ当時はどんな体制で記事を作っていたんですか?

小池:今もそうなんだけれど、SAKETIMESの記事制作を量の面でも質の面でも大きく支えてくれているのが、「SAKETIMESライター」の存在。

全国各地のオリジナルな日本酒情報を持っている方々を「SAKETIMESライター」として採用して、彼らに記事の企画・取材をお願いできるのは、メディアとして強い。現地の1次情報を、鮮度の高いままに記事化できるからね。この仕組みは立ち上げ当初からあったんだ。

熊澤:やっぱり、これって珍しい仕組みなんですか?

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小池:他ではあまり聞いたことがないなぁ。この仕組みの特徴は、SAKETIMESライターのほうから「こんな企画どうですか?」と提案してくれること。編集部だけでは思いつかないような企画があがってくるのは、本当にありがたい。

この仕組みの最大のメリットは、全国各地の日本酒情報を書き手が実際に五感で体験して記事化できるところ。それが記事の鮮度と深みにつながって、他にない精度の高い記事になる。SAKETIMESライターの存在は、SAKETIMESの発展を語る上では絶対に欠かせない。

熊澤:たしかに、ライターさんからあがってくる記事の企画は、どれもユニークなものばかりです。

小池:ユニークだし、すごく愛情のある記事が多いよね。あと、SAKETIMESの記事制作の特徴としては、1本の記事を複数のスタッフで編集することかな。

ライターから記事が入稿されたら、まず、2〜3人の編集会議で読み合わせて編集方針を決める。その後、編集会議の内容を記事に落とし込む1次編集、細かい表現をさらにブラッシュアップする2次編集と、別のスタッフがそれぞれ作業を進め、公開前の最終チェックがもう1人。

記事に触れる人数を増やすことで、不適切な表現や間違った情報が掲載されていないかをチェックしている。正しくない情報を世の中に出してしまうのは、メディアとしては絶対にやってはいけないことなので。

▼ 【2015年6月】 「SAKETIMES PRESS」/【2015年8月】 「SAKETIMES パートナーズ」開始

熊澤:SAKETIMESがリリースしてからちょうど1年後、現在のSAKETIMESの主力サービス「SAKETIMES PRESS」が2015年6月に始まりました。それから2ヶ月後、2015年8月には「SAKETIMESパートナーズ」がリリースされました。

「SAKETIMES PRESS」は、日本酒関連のプレスリリースを配信するサービス。「SAKETIMESパートナーズ」は、連載記事を中心に、主に酒蔵の中長期的なブランディングをサポートするサービスですね。

小池:「SAKETIMES PRESS」を始めたことで、新商品やイベントの情報など、日本酒の最新情報が編集部に集まるようになったのは大きかったね。

熊澤:情報を出し続けることで、逆に情報が集まってくるわけですね。

小池:最新情報が集まってくることによって、日本酒業界のトレンドに対する編集部の知見が深まっていったことは大きな財産だよね。

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熊澤:「SAKETIMES PRESS」の定期的な配信が、PVの安定的な土台を支えてくれてますもんね。

あと、初めて小池さんと面接で会った時にも話したんですけど、「SAKETIMESパートナーズ」は本当に素晴らしい仕組みだと思っていて。やっぱり、1本の記事だけで酒蔵の魅力を伝えきるのは難しい。でも、連載という形で色々な角度から魅力を伝えることで、長い目線で好きになってもらうことができる。

どんな歴史を持った酒蔵なのか、どんなお酒を造っているのか、どんな人たちが働いているのか......そのすべてが酒蔵の魅力です。1本の記事では伝えきれない魅力を、連載という形で読者に伝えられるのは、ひとりの日本酒ファンとしても本当にうれしく思っています。

小池:そうだね。酒蔵の数だけ魅力が存在するし、その背景には心を動かすストーリーがある。それを読者にとってわかりやすい形で伝えて、日本酒のことをもっと知りたいと思ってもらうことがSAKETIMESの役割だね。

▼ 【2016年5月】 「SAKETIMES International」リリース

熊澤:SAKETIMESのリリースからおよそ2年後、2016年5月にはSAKETIMESのグローバル版となる「SAKETIMES International」がリリースされました。現在ディレクターを務めている古川さんは、まだいないころですよね。当時はどのようなメンバーで運営してたんですか?

小池:生駒さん(SAKETIMESを運営する株式会社Clearの代表)と、今も「SAKETIMES International」の運営に関わってくれているジャスティンだね。もともとは、日本語版の記事を英語に翻訳していて、ジャスティンが外部スタッフとして翻訳作業をリードしてくれていたんだ。

熊澤:なるほど、当時は翻訳記事がメインで、今のようなオリジナル記事はなかったんですね。

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小池:2017年11月に古川さんが担当ディレクターとして加わって、日本酒に詳しい海外出身のスタッフで編集チームをつくって、今の形に。

熊澤:それからしっかり成長してるんですよね。今年の5月には海外からの閲覧者比率が81%と過去最高を記録して、世界172ヵ国で読まれていて、ずっと右肩上がりです!

小池:「SAKETIMES International」には、ニーズがあることをしっかりと感じるね。PVを伸ばすことも大事だけれど、それ以上に、海外でどれくらい読まれているかの割合も重要。読んでほしい人に読んでほしい情報を届けて、それでいてメディアとして成長していくのが理想だね。

▼ 【2017年9月】 サイトリニューアルと「日本酒用語集」「酒蔵一覧」設置

熊澤:2017年には、もうひとつ大きな節目がありました。SAKETIMESのサイトリニューアルと「日本酒用語集」と「酒蔵情報一覧」のコンテンツ追加です。

「日本酒用語集」と「酒蔵情報一覧」は、むしろそれまでなかったのが不思議という印象なんですが、このふたつのコンテンツを追加するのは、どのような流れで決まったんですか?

小池:サイトリニューアルの時に、「SAKETIMESに必要なコンテンツは何か?」というのを見直したんだよね。そこで読者からの要望の多かった酒蔵情報と日本酒用語を整理しようということになって。

当時、全国の酒蔵情報がデータベースとしてまとまっているものはたぶんなかったと思う。あっても酒蔵名と所在地ぐらい。そこで各酒蔵のホームページをひとつひとつ確認して、代表銘柄や創業年、酒蔵見学の可否などをリストにまとめたんだよね。編集部スタッフ、総出でね。

熊澤:ほとんどゼロからの作業だったんですね。それってめっちゃ工数かかりませんか?

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小池:うん。めっちゃかかった、ほぼ手作業だから(笑)。でも、全国の酒蔵情報がまとまっていれば絶対便利なのはわかっていたし、サイトリニューアルの目玉にもなるからやりきったのよ。

熊澤:1,500蔵ぐらい載ってますよね。

小池:そうそう多い。海外の酒蔵も載ってるしね。

熊澤:日本酒用語集はどのように進めていったのですか?

小池:これまでにSAKETIMESで公開した記事や編集部内に散在していた資料を整理して、用語集として使えるように加筆修正をしてデータベースを整えたんだよね。こちらもほぼ手作業です(笑)。

熊澤:すごい......。このふたつのコンテンツをちゃんと使いこなしていきたいですよね。

小池:そうだね。「酒蔵情報」も「日本酒用語」もデータベースとしては立派なものができあがったなと思うけど、もっと活用できるはず。良い使い方を見つけていきたいよね。

▼ 【2017年12月】 小池潤が編集長に就任

熊澤:ここから本題というか、2017年12月についに小池さんがSAKETIMESの編集長に就任します。編集長就任はどのような経緯で決まったんですか?

小池:うちの会社は、それまでSAKETIMESというメディア事業のみでやってきたんだけれど、日本酒の新しい市場を開拓するために、2017年の夏ごろから高級日本酒ブランドを立ち上げる準備を始めたんだよね。それが2018年7月にリリースした「SAKE100(サケハンドレッド)」なんだけれど。

そこで社内の体制変更があって、編集スタッフ歴の長かった自分が編集長になった。

熊澤:編集長指名を受けたとき、実際どうでした?

小池:編集長っていうものが、どういう仕事をするのかわかっていなかったんだよね、当時は(笑)。理解していなかったから、編集長っていう仕事に対して不安とかポジティブさもなかったかな。それまでの編集業務の延長線上に編集長の仕事もあるものだと思っていたから。もちろん「編集長っていう肩書きはかっこいいな」っていうのはあったけれど。

それ以上に編集長就任のタイミングでアルバイトから社員になったことのほうが、個人的にはインパクトが大きいかも。

熊澤:編集長になる前と編集長になった後では、どんな変化がありましたか?

小池:意識的な変化といえば、「視野を広く遠くに持つ」というのが編集長の仕事だと思っていて、編集長になる前は、目の前の記事のクオリティーを高めるのが仕事、という認識だったかなぁ。

ある意味、職人的として作業すればOKだったんだけど、編集長になってからは、目の前の作業に集中しつつも、オフィス全体を見渡すことを意識しているよ。たとえば、編集部スタッフが困った顔していないかとか、忙しそうにしていないかな、とか。

熊澤:なるほど、広い視野......。

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小池:あとは、自分自身がSAKETIMESというメディアの顔になるわけだから、そのあたりの責任感も強くなった。自分の一挙手一投足がSAKETIMESのイメージに直接つながるので。

「広い視野を持つこと」と「未来に対して思考を巡らせること」が、編集部スタッフのころと比べて圧倒的に意識の持ち方として変わったこと。SAKETIMESというメディアだけでなく、日本酒業界全体、もっと広く社会全体のことまでアンテナを張らなきゃならないなと思う。

「明日どの記事を公開しようか」という日々の編集作業はもちろん大事な仕事なんだけど、「5年後、10年後にSAKETIMESはどうなっているべきか」を考えて、それを社内外に旗を振って示すというのが、編集長の仕事なんだと思う。Clearの行動指針として「未来視点で発想する」というのがあるんだけれど、それにもつながる話。

編集長になって1年目のころは、職人的に編集業務をすすめる部分と、作業にハマるんじゃなくて編集長として編集部全体を見ようとする部分のバランスがとても難しくて。それまでやったことがないから、当たり前なんだけれど。

熊澤:目の前の仕事だけに集中することから、メディアを通して日本酒の未来を考えるようになったってことですね。

小池:SAKETIMESは、編集長である自分が想像できるSAKETIMESにしかならないんだよ。

例えば、PVの話でいうと、自分が「SAKETIMESは月間100万PVぐらいが精一杯かな」と思えば、そのくらいのメディアにしかならないし、「1,500万PVいけるよ!」って心から思えたら、きっと到達する。自分自身の思考と視野がメディアの成長にそのままつながっているということに気づけたのは、ここ1年ぐらいの話なんだけれどね。

▼ 【2019年4月】 メディアポリシーの設定

熊澤:次に編集部的に大きな動きでいうと、2年飛んで、2019年4月、SAKETIMESのメディアポリシーをつくったことですね。

・日本酒のストーリーを伝える
・発信はゴールじゃなくスタート
・正しく、おもしろく、そして誠実に
・変化を前向きに捉える
・最高の日本酒ファンでいよう

小池:SAKETIMESが読者に提供できる価値を明文化したものとして「日本酒をもっと知りたくなるメディア」というタグラインを新しくつくったのだけれど、そういえばメディアポリシーがずっとないなぁと思っていて。

熊澤:そもそもの質問になるんですが、メディアを運営する上でメディアポリシーがあるとどんな効果があるんでしょうか?

小池:SAKETIMESのアイデンティティー、自分たちはこれを目指すんだっていうことを社内外に示すためのものなんだと思う。

熊澤:行動指針のような?

小池:そうそう、行動指針。SAKETIMES編集部はこれまで人数が少なかったけれど、メディアが大きくなるにつれて、関わる人数も増える。そうしたときに「SAKETIMESらしさとは何か」が明文化されていれば、自分たちが取り組んでいることへの理解がより深まるよね。

メディアポリシーという行動指針があるとひとつの方向を目指しやすいという一方で、メディアとしてやらないことも決めやすいのよ。

ブランドのアイデンティティーがどうやって決まるかって思った時に、それは「やらないことで決まる」と思ってるのね。SAKETIMESをブランドとして捉えた時に、行動指針となる基準が正しく設定されていれば、そこからずれてないか、正しく歩けているかがわかると思うんだ。

例えば、「SAKETIMESで新たに人材サービスをやろうか」というアイデアが上がったとき、会社に「日本酒の未来をつくる」というビジョン、つまり判断基準があるから、やるかやらないかを決めることができるわけ。「日本酒の未来をつくる」ことだったらやるべきだし、そうでなければやらない。100万PVを達成したといっても、社会全体でみたらまだまだ成長途中のメディアなわけで、正しく成長するためには正しく歩む基準は絶対あったほうがいい。

熊澤:物事を考える指針のひとつというか、根底の土台みたいなところですか。

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小池:月間100万PVを達成して6周年を迎えた今をSAKETIMESの第二創業期と捉えて、事業ミッションも改めて見直す必要があると思う。

「SAKETIMESが社会に対して何をもたらすのか」とか、「SAKETIMESがある世界とSAKETIMESがない世界では何が違うのか」とか、僕らの存在意義をアップデートしなきゃね。

熊澤:社会に対しての影響力を意識する、みたいなことですか?

小池:そもそも、あらゆるサービスや企業活動は社会のためにあるはずだからね。僕らが社会に何をもたらすのかっていうのは、改めて考えなければいけない。特に6周年の節目を迎えて思ったね。

熊澤:編集部の週例会議のときにメディアポリシーを振り返るじゃないですか。「くまちゃん、今週は意識できてた?」って。この振り返りの時間があるから、普段の生活に落とし込めるなって思うんです。

たとえば、メディアポリシーのひとつに「日本酒のストーリーを伝える」がありますが、編集をしている時に「これはちゃんとストーリーを伝えられる文章になっているのかな」って自問自答しています。ひとつひとつの編集作業でも目指すものがしっかりと見えるから、メディアポリシーがあってよかったなって、すごく思います。

小池:そういってもらえるとありがたいね。新しいスタッフも含めてこういうことを伝えていくことが自分の仕事だから、メディアポリシーをつくって終わりじゃないんだよね。みんなにわかるまで何度も何度も話すことが必要だと思う。

▼ 【2019年12月】 「SAKETIMESサロン」開始

熊澤:2019年12月には新しいチャレンジとしてオンラインサロン「SAKETIMESサロン」が始まりました。今までのメディア運営で培ってきた知見を共有する、とてもSAKETIMESらしいコンテンツです。

サロンを運営するにあたって、サロンメンバーの反応で、小池さんがすごくうれしかったものがあれば教えてください。

小池:業界のキーパーソンにお声がけしてオンライン配信をしたとき、とあるサロンメンバーが「この配信1本だけでも月額分(5,000円)の価値がある!」と言ってくれたんだよね。これはとてもうれしかったなぁ。基本的にすごくポジティブな反応が多いし、勉強になってると言ってくれる人が多いから、そこはやってみてよかったなと思ってるよ。

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熊澤:「SAKETIMESサロン」のメンバーのほとんどが、本気で日本酒産業にビジネスとして関わりたい人や自分で事業を起こしたい人ばかりなんですよね。そんな人たちが100人以上も参加しているのは、SAKETIMESならではのサロンだと感じます。

小池:日本酒のことを本気に考えてる人たちばかりだから、学びが多いしね。

熊澤:サロンメンバーがfacebookグループにいろいろな話題を投稿してくれるので勉強になることも多いです。こんな日本酒のニュースがありましたよ、とか。

小池:あらためて自分たちが持っているノウハウや考えを整理する機会になったね。

SAKETIMESの視点から見えること、日本酒業界の中の視点から見えること、日本酒業界の外から見えること。オンラインサロンには、さまざまな視点を持つメンバーが集まってるからそこに集まる情報が重なり合って、新しい価値が生まれると思う。

▼ 【2020年4月】 「オンライン日本酒市」スタート

熊澤:2020年のトピックとしては、4月からMakuakeさんと協力して「オンライン日本酒市」を始めました。これは新型コロナウイルス感染拡大による影響で飲食店の休業やイベントの中止が増え、売上が大幅に減ってしまった酒蔵や酒販店を支援しようするものですね。プロジェクトをはじめてみて、酒蔵さんや購入した方からはどんな反応がありましたか?

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小池:プロジェクトを立ち上げていろいろな酒蔵さんにお声がけしたときに、「業界のために動いてくれてめちゃくちゃありがたいです」って言ってもらえたんだよね。それが素直にうれしくて。うれしさ半分、期待に応えなきゃと気持ちが引き締まるのが半分くらいっていう感じで。SAKETIMESに対しての期待感というのを強く感じたかな。

熊澤:SAKETIMESでは、4月ぐらいから新型コロナウイルス関連で酒蔵を支援する記事、たとえば「飲食店関係者向けの支援策まとめ」や「期限付酒類小売業免許の申請ポイント」などの情報を出しているんですけれど、「オンライン日本酒市」もそのひとつですよね。

必要な情報を必要なタイミングでしっかり届けることがメディアとしてのSAKETIMESの使命だし、記事を読むだけで終わるのではなく、「テイクアウトサービスを始めてみよう」とか「税務署に免許申請をしてみよう」と、そこから行動へとつなげることができてよかったなと思います。実際読まれてますしね!

小池:そうだね。メディア側が伝えたいものを記事にするのも大事だけど、生活者が潜在的に求めているものを掘り起こしてきて、それを適切な形で生活者に伝えるのもメディアの役割。この新型コロナウイルスが広まった状況の中で、一定の役割を果たすことができたと思う。

▼ 【2020年5月】 月間100万PVを達成

熊澤:そして2020年5月、SAKETIMESは月間100万PVを達成しました。率直に、今の感想はいかがですか?

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小池:やっといったなっていう感じ。

熊澤:月間100PV達成までにかかった期間でいえば、長かったほうですよね。

小池:そもそもSAKETIMESは、PVやUU(読者数)をそれほど重要視してないからね。メディアの成長を計るために定期的にチェックはするけれど、会社の至上命令ではない。もし、PVを増やすことにこだわってやっていたら、もっと早く達成できてたかもしれないけれど、今のSAKETIMESとは別のものになっていたかもしれないね。

だから、月間100PV達成まで時間はかかったほうだから、一般的なメディア論でいえば、実はあんまりすごくない。日本酒業界に新規参入したメディアが堅調に成長しているという事実には大きな意味があると思いつつ、まだまだこれからという気持ちのほうが強いかな。

熊澤:月間100万PVを達成したことは、それに比例してSAKETIMESを読んでくれる読者も右肩上がりに増えたことでもあると思うんです。それはつまり日本酒に興味を持ってくれた人が増えたということ。これってすごくないですか?

小池:確かにそうだね!

熊澤:このことは好意的に受け止めていいと思うんです。ちゃんと日本酒産業に対して貢献できてるなって。

小池:そこは素直に喜びたいところだね。ただ、忘れちゃいけないのが、SAKETIMESはメディア全体のなかで考えたら、まだまだ小さなメディアでしかないこと。

SAKETIMESは日本酒専門のバーティカルメディア。だからといって「日本酒専門だからこのくらい充分かな」とならないように常々に思ってる。「月間100万PV達成、すごい!」に満足していたら、自分たちが想像している範疇でしかSAKETIMESは成長しないからね。

熊澤:月間100万PV達成はまだまだ通過点に過ぎない、と。

小池:そうそう。世界中の人たちに日本酒ファンになってもらうのが、SAKETIMESの究極の使命だからね。

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熊澤:月間100万PVを達成したことについて、これをやったから達成できたと思える具体的なポイントってありますか?

小池:要因はいくつかあるんだけれど、一番大きいのは、社会が求めている潜在的なニーズをSAKETIMES独自の取材によって記事として出し続けてこれたことだと思う。最新ニュースだけじゃなく、「ワインと日本酒ってなにが違うの?」みたいな、生活者の疑問にしっかりと答えるような記事もたくさん出してきたよね。

あとは、どんなときも記事を出し続けられたことかな。特に2020年3月以降、新型コロナウイルスの影響で飲食店の休業など、日本全国で経済活動が縮小するなか、SAKETIMESは変わらずに記事を出し続けることができたよね。

もちろん、メディアとして情報発信を控えるという考えもあったんだけれど。こんな状況のなかで「今、この日本酒がおいしいです!」と紹介しても、世の中はそんな気分じゃないかもしれない。

熊澤:確かに3月の自粛要請が始まったころは、これからどうなるのか不安でした。

小池:だからといってなにもしないのも違うかな、と。飲食店も苦しんでるし、酒蔵も苦しんでる。でも、日本酒はこういった非常事態でも、いや、非常事態だからこそ、人々の心に安らぎとポジティブな気持ちを与えてくれるということは信じていたから、今まで通り変わらずに活動し続けることを選んだんだ。

それがきっと日本酒業界にとって必要なことだろうし、日本酒に関わるすべての人たちの生活を明るくしてくれると思ってね。

熊澤:そう考えると、コロナ禍の2020年5月に月間100万PVを達成したことは、本当に意味あることですね。

小池:そうだね。もし、あのとき記事の本数を減らしていたら、世の中に送り出される日本酒の話題の数も少なくなっていただろうし、SAKETIMESのPVも伸びてなかったはず。それが、月間100万PV達成の最後のひと押しになったんじゃないかな。

▼ 編集長として大切にしていること

熊澤:小池さんがSAKETIMESの編集長として一番大切にしていることはなんですか?

小池:SAKETIMESの記事はだいたい3,000~4,000文字ぐらいの長さで、最後まで読み終わるのに2分半から3分くらいかかるのね。たかが2,3分なんだけれど、世の中には楽しいことがたくさんあって、たとえば、YouTubeの動画をみたら2,3分なんてあっという間。そんな風にいろんな時間の使い方がある中で、人生の大切な時間をSAKETIMESを読むのに使ってくれるのは本当にうれしいし、ありがたいこと。

だから記事を読んでくれて、「読者がポジティブになってくれたか」が一番大事かな。

熊澤:記事を読んでもらって、怒りがこみ上げてきたりとか、悲しい気持ちになってもらったりするのは本意ではないと。

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小池:大前提として、日本酒ファンが今よりも増えた方が、日本酒がもっと世界に知られた方が、より豊かな世界になると思ってるわけで。SAKETIMESを通じて触れたコンテンツを通して、「このお酒飲んでみたいな」とか「行ってみたいお店が増えた」とか「わからなかったことが解決した」とか、その人にとっての明日を生きる楽しみを見つけてもらえたら最高だよね。

ポジティブな気持ちをちょっとでも世の中に広めていくっていうことを、SAKETIMESを通してやっていきたい。うん、それが一番大切にしているポイントかな。

熊澤:SAKETIMESのメディアポリシーで、「発信はゴールではなくスタート」とありますが、それは編集部側だけでなく、読者にとってもそうであってほしいんです。

たとえば、SAKETIMESである酒蔵を紹介する記事を読んだら、実際にその蔵の日本酒を飲みたくなって、酒販店や居酒屋に足を運ぶ。そんな風に日本酒体験が広がっていくようなメディアでありたいなと思うんです。それがポジティブな体験ってことですよね。

小池:そうだね。小さなきっかけだけど、そういうポジティブな気持ちが少しずつ集まるだけで社会がよくなる気がするんだよね。

熊澤:社会をよくするって、大げさな目標に見えるけれど、そこは譲れないところです。

▼ これからの成長に必要なもの

熊澤:月間100万PVを達成して、これからのSAKETIMESの成長を考えたときに、これが足りてないとか、これが必要だなと思うものはありますか?

小池:SAKETIMESはありがたいことに、日本酒業界内での認知度が高くなったし、信頼度も高くなったよね。都道府県の酒造組合さんからお声がけをもらったり、SAKETIMESだけでなく、Clearとしては、代表の生駒さんが国税庁のブランド戦略会議に参加するようになったり。

日本酒産業のプレイヤーとしてのポジションはかなり確立されてきたと思うよ。とはいえ、まだまだ安定してしまうには早いなとも思ってる。

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熊澤:安定、ですか?

小池:「SAKETIMESに載ってる情報には絶大な信頼感がある」という話を聞くことが増えてきて、そのちょうどいいポジションに安住しようしてる自分もどこかにいる。でも、それではダメで、居心地が良くなり始めたら黄色信号なんだよね。だから、SAKETIMESとしては、日本酒の未来にとって必要なものを生み出し続けていかなきゃいけない。

たとえば、それはYouTubeのような動画での情報発信だったり、好きな銘柄を好きなときに買えるECサービスだったり、日本酒情報に特化したグルメサイトだったり、酒蔵とそこで働きたい人をつなげる人材サービスだったりするかもしれない。あるいは、世界中の日本酒ファンが熱狂できる日本酒のフェスとかね。

日本酒の産業にとって必要なものは、間違いなくまだまだたくさんあるから、そういうものに最初に挑戦するのがSAKETIMESでいたい。そういう意味では、月間100万PV達成は、次のステップに進むちょうどよい転換点かもしれないね。

熊澤:業界の課題解決に取り組むSAKETIMESでありたい、と。

小池:そうだね。いくらSAKETIMESとしてやりたいと思っていても、生活者のニーズにしっかりと答えていくものでなければ、事業としては多分残らない。打ち上げ花火的に大きくやるのも大事なんだけど、事業として長く続けていくためには、時代に沿ったものであるとか、本質的なニーズをしっかり捉えたものである必要があるかな。

▼ SAKETIMESの第二創業期に向けて

熊澤:あらためて、SAKETIMESが6周年を迎えて、これからの意気込みがあれば教えてください。

小池:昨年ごろからいくつものWEBメディアが閉鎖しているなかで、6周年を迎えられるのは本当にありがたいこと。

そんな厳しい環境のなかで、7年目に向けて、ポジティブに走っていけてるのは非常に恵まれていると思うよ。それはSAKETIMESを支えてくださっている読者のみなさん、関係者のみなさん、そして編集スタッフのみんなのおかげ。本当にありがたい。

でも、まだまだこれからだとも思ってる。僕たちがいっしょに仕事している酒蔵は、創業100年でも若いぐらい。創業300年以上の企業も珍しくもないわけで、それは300年間も社会に対して価値を提供し続けているということ。7年目なんてまだまだですよ。

熊澤:僕らがお付き合いしているような酒蔵さんと同じくらい、長く、深く、価値を提供していくために、100年先を見越して目標を考えなきゃいけない。どこまで想像力を働かせることができるかですね。

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小池:さっきの話に戻るけど、だからこそ安定した気にならないで、自分たちにとって新しい領域にどんどん踏み込んでいくSAKETIMESでありたい。SAKETIMESの7年目は、第二創業期的な意味での、最初の1年目だね。

気持ちを切り替えて、明確に新しいスタートとなる年なのでとても楽しみだし、どんどん挑戦していきたいと思うし、つまり、ワクワクですよ。

熊澤:ですね!あらためてお話が聞けてよかったです。今日はありがとうございました。

小池:ありがとうございました。これからも日本酒の未来のために、がんばっていきましょう!


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