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第31回 女に仕事を!(デンマーク)


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最初に閉め出されるのは誰なのか
女たちは
人間の道に、豊かさに、
渇きを覚えている
今は、危機の時だ
何をされるか知っているのか
扉を閉められるんだよ
女たちの勇気をみせよう!

60年代から80年代まで、世界のあちこちで女性解放運動の嵐が吹き荒れた。デンマークでは、レッド・ストッキングというグループが一世を風靡した。

厚化粧、女らしさを誇張した服装、ハイヒール、セックスアピール、へりくだった態度、こんな「いびつな女らしさ」で飾って目抜き通りを行進。終着地でそれらをひとつひとつ脱ぎ捨てていく…このデモンストレーションは、レッド・ストッキングの名を特に高めた。

このポスターは、それがどんな運動だったのかを示す貴重な1枚である。

18世紀のイギリスに「ブルー・ストッキング」という女性だけのクラブがあった。そのブルーをレッド(つまり左翼)に変えて、このグループは誕生した。運動のスローガンは、「女性の解放なくして、階級の解放なし」、「個人の問題は、政治の問題」。

深紅のバラはデンマーク最大政党である社会民主党のシンボルだが、その赤いバラをポイと投げ捨てて、たくさんの女性を握りしめている。これは「社会民主党を捨てて女性同士で連帯を」と叫んでいるのだ。

女たちの顔を見よ。ただならぬ形相でこぶしを高々とあげている。手書きのデンマーク語を私なりに訳してみた。

レッド・ストッキングは、学生運動の中の男性主導的運営に怒り、父権制社会の変革を求めた。上下の人間関係を嫌い、全員が対等の立場で、「コンシャスネス・レイジング」と呼ばれる話し合いによる意識改革を行った。組織につきもののリーダーをいっさい置かずにものごとを決めた。女らしさの文化や慣習に異議を申し立てた。女だけのサマーキャンプで共同生活をした。嘲笑や誹謗中傷も多かったが、女性博物館、女性図書館、女性学などの創設に多大な貢献をした。

ポスターに作成年は書かれていないが、私が、オーデンセの女性図書館からポスターを譲り受けたとき、「1970年代後半」と聞いた。中道右派政権から再び中道左派政権に交代があったころだ。女性の失業率が高いことに、なんの策も講じようとしない政府に憤怒の声を上げたのだという。

これは、今の日本に、そっくり言えることだ。

(三井マリ子/「i女のしんぶん」2015年12月10日号)


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