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第126回 移民難民を受けとめる バイキングの末裔たち(ノルウェー)


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2023年9月18日夜7時半、ノルウェーに移住してきた大人たちにノルウェー語を教えるローセンホフ成人学校を訪ねた。分校も含めると教職員約180人、生徒約2000人。「世界最大のノルウェー語研修センター」だ。100年以上も昔にオスロの小学校として建てられ、ナチスドイツ占領時代は、親衛隊の本部・兵舎に使われた。
210番教室に入ると男女14人が座っていた。担任のビヤーネ先生が小声で言った。「出身はアジア、アフリカ、中東など全世界です。個人情報は、母国の当局と生徒とに悪影響を与える場合もあるので聞かないでほしい」
でも、自ら語るのはかまわない。「元ポルトガル領ギニアビサウから来た」という男性がいた。職場から直行したらしく、黄色い土木作業着だ。「IT会社勤務の夫と、オスロ湾を見渡せるマンションに住んでいる」というインド人女性もいた。
先生はパソコン2台に超大型ディスプレイ、白板を使いながら、ノルウェー語でゆっくり話す。テーマは、朝。「何時に起きましたか」「朝食は何時でしたか」「誰と食べましたか」と質問し、生徒が答えていく。
「妻と食べました」と言った男性に、「パートナーは同性のこともありますね。ノルウェーでは普通のことですよ」と先生。なるほど、こんなふうにノルウェー社会に慣れさせるのだ。
いまやノルウェー人口の16%を移民が占める。2021年、国は211の自治体に対して5,025人の難民が定住できるよう要請した。
移民難民を守るのは「統合法」だ。法の目的は、言語習得とその教材内容の双方から、移民がノルウェーで永続的な職業生活を送れるようにすること。 年 22万3000 クローネ(310万1220円)の授業料給付金制度もある。25歳未満の生徒は、親と同居していない場合3分の2、同居中なら3分の1。給付金は課税対象だ。理由なく授業を休むと減額。ただし病欠や育休は認められる。
こうして、3年間ノルウェーに住めば、外国人にも地方議会への選挙権が与えられる。
 
今日のポスターは4年前、地方選を取材に行った時、オスロの駅で見た。
「男性」、「女性」、「白人」、「黒人」ごちゃ混ぜの現代ノルウェー人が叫ぶ、「あなたの選択を他人にまかせるな」「あなたの投票の権利を使え」
2023年秋、選挙を終えたオスロ市議会は、2児を抱えたシングルマザーのスリランカ移民、ゲイのジャーナリストでクルド系イラク移民、元サッカー選手のイラン移民、84歳になった初の女性首相グロ・ブルントラント…。
「統合」に満ちあふれていた。

(三井マリコ/「i女のしんぶん」2024年1月1日号)


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