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動画で学べるシリーズ!日本酒講座「製法編 生酛系酒母」

みなさんこんにちは❗️
今回の動画で学べるシリーズ第6回は「製法編 生酛(きもと)系酒母」についてです!
動画だけでなく文字でも解説していくので、お好みの形式でお酒のことを学んでもらえればと思います🍶
コチラのチャンネルの動画をベースに解説を進めていきます!

今回はコチラの動画になります!
この動画では日本酒の製法のうち、生酛系酒母について解説しています!

1.生酛系酒母の特徴
2.生酛系酒母の製法

今回はこの2つの項目で進めていきます!

1.生酛系酒母の特徴

まずは、速醸系酒母との違いについてです。
前回は酒母の役割と速醸系酒母について解説してきましたが、今回は別のパターンである生酛系の酒母についてです。
前回も少し触れましたが、基本的な酒母としての役割は同じで、その過程が異なっています。
生酛系酒母では、酵母の生育に最適な酸性環境を作り出すのに乳酸を使用するのではなく、微生物の力を用いて、乳酸を発酵で生み出します。
速醸系酒母が1910年に開発された現代的な製法に対し、生酛系酒母は昔ながらの伝統的な製法になります。
速醸系酒母と比較すると、手間や期間もかかるものですが、近年は伝統的な製法に関心が高まっていて、採用する酒蔵も増えてきています。
後半の項目で詳しく解説していきますが、製法としては、乳酸を発酵させる工程が速醸系酒母の製法の前半に追加されるイメージがわかりやすいと思います。

もろみ全体から見ると、10%にも満たない酒母ですが、様々な微生物が関わるため、酒母に含まれるアミノ酸や有機酸が多くなり、味わいにも影響があるとも言われています。
また、酵母が競争を勝ち抜いて繁殖していくため、もろみでも力強い発酵力を発揮するとも言われていて、酵母の特徴を最大限生かせる製法となっています。
さらに、その生命力で長期間の発酵やもろみの末期でも、酵母が死滅しにくく、雑味を産みにくいため、スッキリとした綺麗な酒質の日本酒ができやすいとも言われています。
このように生酛系酒母は手間がかかるが、メリットもあるという製法となっています。
ここからはその製法を詳しく見ていきましょう。

2.生酛系酒母の製法

生酛系酒母は大きく分けると、菩提酛、生酛、山廃酛の3つに分けられるのですが、ここでは生酛と山廃酛を取り上げていきます。
前提として、速醸系酒母と共通している部分は省略していくので、その部分について理解しておきたい方は、前回の速醸系酒母の動画をご覧ください。
また、製法については各蔵ごとに大きく異なる部分もあり得ますので、その部分はご了承ください。

まずは、基本的な生酛についてです。
こちらは仕込みの前に埋け飯(いけめし)という工程を行ないます。
これは蒸したお米を布などで保温し、半日ほどかけてゆっくりと冷ましていく作業になります。
目的としては、のちに行なう酛擦りという工程で、お米が粘ついて糊のように固まらないようにするためになります。
時間をかけてゆっくり冷ますことにより、お米が乾燥して硬くなり、蒸し立てよりもくっつきにくくなっています。

次は仕込みの行程になります。
埋け飯にした蒸米と麹米と仕込み水を混合して仕込みを行います。
仕込みは数枚の半切り桶という大きめのタライに分けて行います。
速醸系酒母と違い、乳酸は添加しませんし、この時点でも酵母の添加は行いません
また、仕込み後の温度も7度ほどと、低めになっています。
仕込み後には2~3時間ごとに酒母を均一になるように撹拌していきます。
この作業は手酛といい、4回ほど行なっていきます。

次は酛擦り、山卸し(やまおろし)の工程になります。
こちらは生酛の一番特徴的な工程で、酒母のお米を擦る作業になります。
この作業では全てのお米を擦り潰すのではなく、比較的柔らかい麹米を中心に潰すことで酵素を酒母全体に行き渡らせて、蒸米を糖化していくことが目的になります。
3時間ごとに3回以上行なうのですが、仕込みから15~20時間で行なうため、蒸しを朝イチで行う場合は、深夜から明け方の作業になり、かなり大変な作業になります。
また、櫂棒を使用して3人がかりで行うのが基本ですが、かなりの重労働のため、現代ではミキサーのような機械で行う蔵もあります。

次は折り込み、酛寄せの工程になります。
両方とも、半切り桶の中の酒母をまとめていく作業になります。
2つの半切り桶を1つに合併することをくり返す作業を折り込みといい、最終的に1つの酒母タンクに合併することを酛寄せといいます。
この折り込みから酛寄せまでの間には酛掻きと呼ばれる櫂入れをこまめに繰り返していきます。
均一化することも目的ですが、酒母の表面は空気と触れているため、撹拌しないでいると乾燥しやすく、カビなどの雑菌が繁殖しやすいため、こまめな管理が必要になります。

次は打瀬となり、酒母への操作は速醸系酒母と似たものになっていきます。
酵母添加のタイミングはこの辺りになり、乳酸菌が発酵を十分に行い、酸度が上がった状態で行ないます。
ここが速醸系酒母でいう仕込みの段階に近い状態になります。
基本的にここまでで、14日間ほどかかるため、速醸系酒母と比べると倍以上の時間がかかります。
酵母を添加せずに、蔵の空気中由来の酵母で、米麹や器具に付着していたものが発酵してくるのを待つ、酵母無添加の場合もあります。

次は山廃酛の工程について解説していきます。
簡単にいうと、生酛の工程である山卸し(酛擦り)を行なわなくなった製法です。
山卸し廃止酛を略して山廃酛と呼ばれています。
技術や麹菌の性能の進化により、山卸しを行なわなくても、しっかり糖化を行えるようになったことがわかってきたため、開発された酒母の製法になります。
開発された時期は1909年と普通速醸とほぼ同じで、生酛系酒母の中では新しい製法です。

初めの仕込みは、麹米と水をあらかじめタンクに入れておき、酵素を溶出させておく、水麹という状態にしておきます。
速醸系酒母でも同様の仕込みを行いますが、山廃酛では乳酸と酵母は添加しません。

仕込み温度も低めで生酛同様7度ほどになります。
その後、速醸系酒母同様に汲みかけや荒櫂で、お米を潰さないように酒母の均一化や糖化の促進を行い、暖気で温度上昇をし、乳酸菌に乳酸を作らせて酒母を酸性環境にしていきます。

暖気の操作の期間は速醸系酒母よりも長く、一番大変な山卸しという工程がなくなった山廃酛も十分大変な製法となっています。
酵母の添加は、生酛と同様のタイミングで行なっていきます。
こちらも酵母無添加で行う場合もあります。
このように生酛系酒母は乳酸菌を利用してゆっくり低温で酵母に適した環境を作り上げていく製法となっています。
正確にいうと他の微生物も関わっているのですが、それはまた別の機会に詳しく解説できたらと思います。

今回は生酛系酒母について解説してきました。
生酛仕込みなど、ラベルに記載されている商品を見かけることは少なくないと思うのですが、その裏側には蔵人の努力があることを頭の片隅に置いておくと、今まで飲んでいた日本酒もまた違って感じるかもしれません。

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