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#01 山廃・生酛の現状と将来の展望について

今回の問題

山廃・生酛の現状と将来の展望について述べよ。(2017年)

自分の回答

200字回答

山廃・生酛は、醸造用乳酸を添加せずに乳酸菌を増殖させる伝統的な醸造方法である。1910年に速醸酛が開発されたことで、手間のかかる生酛や山廃は少数派になり、現状のシェアは速醸90%、山廃9%、生酛1%である。しかし、豊かで複雑みのある香味を求めて、生酛系酒母に取り組む蔵が目立ってきている。和食だけでなく、中華や洋食との相性も良いため、幅広いペアリングの対象として好まれる可能性がある。(192字)

回答の要素

山廃・生酛とは
醸造用乳酸を添加せずに乳酸菌を増殖させる伝統的な醸造方法。
速醸系酒母と比べ、様々な微生物が関与するため、技術や手間暇を要する。
濃醇かつ味わい深い酒、ヨーグルト様の香りを生む。

現状と展望
速醸が90%、山廃9%、生酛1%。
明治43(1910)年、江田鎌治郎によって速醸酛が開発されて以来、手間のかかる生酛や山廃は少数派になった。
一方で、より豊かで複雑みのある香味を求めて、生酛系酒母に取り組む蔵が目立ってきている。
和食だけでなく、中華や洋食との相性も良い。

回答の構成

・乳酸添加なし
・速醸90%、山廃9%、生酛1%
・1910年速醸、少数派
・豊かで複雑み
・中華、洋食、ペアリング

回答の補足

山廃も速醸もどちらも国立醸造試験所の成果の賜物である。明治42(1909)年に嘉儀金一郎氏らが会津の末廣酒造で山廃酛を開発し、翌年の明治43(1910)年には江田鎌治郎氏が愛知・常滑の澤田酒造で速醸酛を開発した。

醸造用乳酸を添加する速醸と違い、生酛では多くの手間をかけて、乳酸菌が支配的になりやすい環境を作り上げる。酛摺り(山卸)、折り込み、酛寄せ、など。菊正宗酒造さんが、生酛造りの工程についてわかりやすく漫画で紹介してくれている。『夏子の酒』でおなじみ、尾瀬あきらさんの漫画『蔵人』でも、主人公のクロードが生酛造りに挑戦する。

また生酛系酒母においては、順々に覇権をとる菌の種類が遷移していく。硝酸還元菌、産膜酵母、野生酵母がしのぎを削っているうちに、乳酸菌がそれらを駆逐していく。そして乳酸菌が自分で出した乳酸に苦しんでいる間に、酵母 (添加 または 蔵付き酵母)が一世を風靡する。

野白(1984) より

生酛の大御所というと、大七酒造や菊正宗酒造になるのだろうか… あまり詳しくない。6号酵母分離元の新政酒造が、全量を生酛で造り始めたのは2015(H27)BYからとのこと (wikipediaより)。最近だと土田酒造の生酛をよく聞く。「ニュー生酛」な感じ。

他の回答

先人たちの回答

現状については、速醸が90%を占め、山廃9%、生酛1%となっている。1910年に江田鎌治郎によって速醸が開発されて以来、山廃と生酛は少数派だ。しかし、昨今価値が再評価されており、セルレニン耐性酵母を用いた酒とは異なる味わいとして人気を博している。生酛によるヨーグルト様の香りが受けれられている事も一因だろう。今後、若い造り手で自らの味を表現するため山廃・生酛を選択する杜氏は増えてくると予想される。

すしログさん
https://sushi-blog.com/sakelog/sake-diploma-essay/

山廃・生酛は醸造用乳酸を添加せずに乳酸菌を増殖させる酵母培養法である。速醸系酵母と比べ、様々な微生物が関与するため、技術や手間暇を要する。一般に濃醇かつ味わい深い酒を生むとされる。現在の酒母のシェアは速醸系が約90%、山廃が約9%、生酛が約1%といわれ、生酛系酵母の割合は決して多くないが、その特徴のある味わいを求めて、生酛系酵母に取り組む蔵が目立ってきており、今後増加していくと考えられる。

えすにっくさん
https://ethnicsake.blog.fc2.com/blog-entry-165.html

 速醸酛、山廃酛、生酛の現在の割合は、順に90%、9%、1%である。これは、生酛、山廃、速醸の順に手間がかかる事が理由としてあげられる。一方で、日本酒文化の広がりから、楽しみ方にも多様性が生まれており、濃醇な味わいとなる生酛・山廃系酒母は見直されてきている。
 2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に指定され、同時に、日本酒も海外から注目を集めている。日本酒文化を海外に広めるにあたり、和食との組み合わせだけではなく、洋食、中華、などとの組み合わせも考慮されなければならない。そうした状況において、生酛・山廃の濃醇な味わいは注目に値する。
 東京オリンピックを目前とし、グローバルな視点で、日本酒文化を捉える必要に迫られる今、和食のみならず、フレンチ、イタリアン、中華と言った食事との組み合わせを考える時、生酛・山廃が今後の日本酒文化の牽引役となるのは間違いない。

aufheben premier cruさん
https://plaza.rakuten.co.jp/aufheben16684/diary/201709280000/

参考文献

J.S.A SAKE DIPLOMA 教本(Third Edition)p. 77, 80, 133
江田 鎌治郎, 余の考案せる酸馴養式連續釀酒法 (略名、酸馴養連釀法), 釀造協會雜誌, 1910, 5 巻, 1 号, p. 38-44
野白 喜久雄, 清酒醸造微生物学の進歩 (4), 日本釀造協會雜誌, 1984, 79 巻, 4 号, p. 229-235
SAKETIMES, 山廃酛や速醸酛の誕生に貢献!明治時代の政策が現代の酒造りにもたらしたもの, 2017年3月8日, 閲覧2023年9月27日 (※記事中の人名表記が誤っているので注意。誤: 嘉儀謹一郎 → 正: 嘉儀金一郎、誤: 江田鎌次郎 → 正: 江田鎌治郎)

※ 引用時に出典URLを明記したものは省きました。
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