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初めて「学生プロレス」を観戦した話

まえがき


こんにちは、さかやき(@sakayaki_SZK)です。

つい先日の2月11日(土曜日)のことです。

その日は東京・後楽園ホールにて東京女子プロレス主催の「第3回“ふたりはプリンセス”Max Heartトーナメント決勝戦」が開催されました。

大会の様子はwrestleUNIVERSEにて配信されてます。下記リンクからどうぞ。

https://www.wrestle-universe.com/ja/lives/qC2Sw4DbtzoJH9MQwwwP2b?utm_medium=social&utm_source=twitter&utm_campaign=tw_share

それはさておき、ご存じの方もそうでない方にも説明すると、筆者はこの東京女子プロレスという団体を応援していますし、加えて非常に好カードが揃っていた今大会だったので、期待に胸を弾ませつつ当たり前のように後楽園ホールに、、、、


ではなく、、、、

大阪にいました!!!


どうして東京女子プロレスの大会に行かず、大阪にいたのか。


それは。。。


学生プロレスの大会を観戦するためでした!!!


というわけで前置きが長くなりましたが、どうしてわざわざ東京から大阪まで遠征してまで学生プロレスを観戦したのか、その大会で何を見て・何を感じたのか書いていこうと思います。最後まで読んで頂けたら幸いです。


再注目される「学生プロレス」

タイトルにもある通り、筆者は今大会が初めての「学生プロレス」観戦でした。

そもそも自分が通っていた大学にはプロレス同好会的なサークルは存在せず、学生時代にはプロレスファンですら無かったので「学生によるプロレス団体」という存在を知ったのもプロレスファンになってからしばらく経った後だったと記憶してます。

加えて学生プロレスに対して知っていたことと言えば、

「有名プロレスラーでも学生プロレス出身者が多いこと(新日本プロレスの棚橋弘至選手・真壁刀義選手、DDTのHARASHIMA選手・男色ディーノ選手、プロレスリングNOAHの稲村愛輝選手など他多数)」

「リングネームが実在するレスラーや有名人の名前をもじったパロディ(だいたい下ネタ)が多いこと。」

大きくこの2点でした。

しかし、昨年から今年にかけてじわりじわりと学生プロレスが再注目されている動向を目にする機会も多くありました。いくつか事例を紹介します。

"慶應義塾大学プロレス研究会「KWA」が女子プロレス団体「スターダム」とコラボイベントを開催"

"現役学生プロレスラー無村架純選手のインタビューが大手スポーツ専門メディアである「Number Web」に掲載"

"現役学生プロレスラーがプロのリングに参戦"

このように今改めて学生プロレスというものが再注目されているなというのを感じていました。

とはいえなかなかスケジュールが合わず「いずれ機会があれば…」程度に思っていたのですが、昨年の秋に学生プロレス初観戦を決意させる出来事が起きたのでした。

ツイッターに届いた一通のDM

昨年10月のある日、私のツイッターに一通のDMが届きました。

送り主は数年前に大阪で知り合った友人でした。

その届いたDMにはこのような内容が書いてありました。

「来年2/11に自身の所属する学生プロレスサークルOWFの自主興行が決定したこと」

「その大会で自身のデビュー戦&引退試合を行うこと」

「なので昔からの友人であり、写真の上手なさかやきさんに来てほしいということ」

写真が上手いと言ってくれたことも嬉しかったのですが、名指しで観戦に来てほしいと頼まれたことが嬉しくて、特に予定も決まっていなかったため二つ返事で観戦に行くことを伝えました。(なおこの時点で東京女子プロレスの2月大会の日程は発表されてなかったので、発表されたらなんとなく被りそうな予感はしてたもののよりにもよってトーナメント決勝戦と被るとはという気持ちでした。)

友人に観戦に行くことを伝えたのと同時に私はある提案をさせていただきました。

「もしよかったらリングサイドで撮影させてほしい」と。

「観戦に来てほしい=大会の写真を撮って欲しい」という意図があったと思うので、プロの現場でリングサイドでの撮影も経験させていただきましたし、自分自身と出場される選手の方たちにしてもwin-winなのでこのくらいは自惚れてもいいかなと思って提案させてもらいました。

友人を介して他のサークルメンバーの方たちにリングサイドカメラマンを務めることを打診したのですが、これまでの大会でもリングサイドカメラマンを配置したことがなく少し考えさせてほしいとのことでした(正面後方から動画は撮っているみたいです)

余談ですが、本番の約一週間前に突発的にツイッターのスペースで学生プロレスのリングサイドカメラマン事情を聞いたところ、学プロの事情に詳しいフォロワーさんより「団体によってもその代によってカメラマンはいたりいなかったりする」という情報を教えてもらいました。教えていただいたフォロワーさんありがとうございました!

打診をしてからしばらく経ち、色々と考えた結果リングサイドでの撮影はしないことを伝えました。

理由としては「普段いない場所に人がいることで選手の皆さんが試合に集中できない状況を作りたくない、それによって怪我してほしくない」という結論に至ったからです。

代わりに当日客席から撮影した写真は選別・編集まで行いネットにアップロードするので選手や関係者の皆さんに活用してもらうという約束をさせていただきました。そこまではやらせてほしいと。

ここまでが昨年の秋から冬にかけての出来事。

10月にお誘いを頂いた時は「2月まで長いな~」と悠長に構えていたのですが2022年から2023年へと年をまたぎ、慌ただしく1月も過ぎ去り日付は2月10日、気付けば翌日に大会本番を控えていたのでした。


2月11日(土)OWF自主興行 当日

そうして迎えた2月11日、前日は東京でも降雪があり交通機関への影響を心配したのですが運良く大阪行きには問題ない程度でした。

大阪駅からバスに揺られること10分程度でしたでしょうか

会場である「大淀コミュニティセンター」に到着

大阪のプロレス会場って似たような名前多いよね
手書きのホワイトボードがお出迎え

開場時間よりだいぶ早く到着し、会場に着いた時点ではプロレス目当てのお客様はいなく、おそらく私が一番乗りだったかと思います。

写真を提供するという約束をした手前、大事になってくるのは座席選びです。加えて今回は全席自由席の早い者順による着席でした。

ひな壇のある会場でしたら後方から見下ろすように撮るというのも手段ですが、今回の会場は平面のためなんとしても正面側の最前列に座席を確保することが必須となっていました。そのために時間にかなり余裕をもって到着したのでした。

しばらくすると観戦に来たと思われる男性2人が現れました。

おそらくその2人は学生プロレスを熱心に応援されている方たちなのか、準備中の選手や関係者とも挨拶を交わしていたり親しげな様子でした。

男性2人が談笑しつつ床に荷物を置いて入場列を確保した様子だったので、私もならって3番目に並んだところ

「先に来てたみたいだから自分たちより前に並んでいいですよ!」

片方の男性から声を掛けられました。

「学プロファンあったけぇ。。。」

と、思わず心で唱えてしまうほど嬉しい出来事もあり、お言葉に甘えて列の先頭を陣取らせてもらいました。

あのとき声を掛けていただいた男性の方、もしこの記事を読まれましたらこの場でお礼を言わせてください。本当にありがとうございました!!

「これで正面側の最前を確保できる!」と安堵しつつ、それでも開場までは時間があったのでひたすらSNSをチェックしながら時間を潰していたところ、静かに開場の入口ドアが開き会場内から見覚えのある方が姿を現します。

次の瞬間、私は友人と約5年振りの再会を果たしたのでした。

1日限りのプロレスラー

姿を現したその人こそ、先ほど書いたDMの送り主である菊正宗隆(きくまさ・むねたか)選手 ご本人でした。

菊正宗隆 選手

菊正選手との出会いはおよそ5年前である2018年まで遡ります。

大阪で東京女子プロレスの大会があったので遠征して観戦に行った際、同じく東京から遠征していた共通の友人を介し菊正選手と知り合いました。

私と菊正選手は当時同じ選手を応援していて、同じ選手を応援している方と知り合えたのが嬉しかった記憶があります。

かといって直接お会いしたのはその1回きりで、その後はお互いSNSの相互フォロワーさんという関係でした。

なので1度しかお会いしてないのに友人と呼んでいいのか不安もありますが、菊正選手は私のことを友人と書いてくれたので私も友人と書かせていただきました。

ここで先ほどの菊正選手から届いたDMを振り返りたいと思います。その文章内にはこのような一文がありました。

「自身のデビュー戦&引退試合を行う」と。

デビュー戦&引退試合というのは「その試合がレスラーとして初の試合となり、その試合をもってレスラーを引退する」ということでした。

この話を聞いたときに思い出したのは、2019年にあったガンバレ☆プロレスにおける星野真央選手のデビュー戦兼引退試合でした。

他にも例はあるのかもしれませんが、私の記憶にある限りではこの試合だけなので非常に珍しい例だと思います。

どうして菊正選手も同じように4回生として最後の最後に1試合だけしか出来なかったのか、それは菊正選手が1回生のときに選手生命どころか命に関わる大怪我をした過去があったからです。

当初、1回生の時点でデビューする予定だったのですが練習中の怪我により「プロレスは諦めなさい」とドクターストップを宣告されたと聞きました。

怪我をしたこと、大掛かりな手術をしたことはSNSを通じて知ってはいたので試合をすると書いてあったときは正直驚きました。(試合をすることに関してはお医者さんの許可は取ったとのことです。)

大丈夫なのかなと不安ばかりが頭をよぎりましたが、一世一代の晴れ舞台を見に来てほしい、写真に収めてほしいと頼まれたなら断る理由は無いと大阪まで観戦に行くことを決意したのでした。

対戦相手を務めた マスク・ド・上新庄 選手

私は過去に観戦していた試合中、リング上で動けなくなった選手が担架で運ばれていく瞬間に立ち会ったことがありました。

その時の怖さは今でも色濃く覚えていて、それ以来プロレスを観戦する際に「どうか選手の皆さんが怪我なく無事に試合を終えられますように」と願うようになりました。

菊正選手の試合中は特にその気持ちが大きかったように思えました。

そんな不安とは裏腹に、リング上の菊正選手はとても楽しそうに試合をしていたのが印象的でした。

笑顔で金的を狙う菊正選手

試合時間にして10分弱でしょうか。試合は対戦相手だったマスク・ド・上新庄選手による3カウント勝ちによって幕切れを迎えます。

無事に試合を終えてくれて安堵したのと、4年間の思いを全て1試合に込めていた姿、試合後にリング上で涙していた姿、観客からの温かい拍手を受けながらしっかりした足取りでリングを降りていった姿に涙を堪えることが出来ませんでした。

試合時間の10分弱だけじゃなくて、興行当日の2023年2月11日という1日だけでなく、4年前にOWFに入門したその時から菊正宗隆という選手はずっとプロレスラーだったのでしょう。そんな風に私は受け取りました。

そしてこれは試合後に知ったことですが、菊正選手のデビュー戦兼引退試合の相手を務めたマスク・ド・上新庄選手は先ほど書いた練習中の事故が起きた際に救急車を手配してくれたりと一番面倒を見てくれた恩人とのことでした。つくづくプロレスとは人間ドラマですね。


「学生プロレスってすごいぞ!!!」

当初は「友人がプロレスデビューして引退した話」として先ほどの菊正宗隆デビュー戦&引退試合のことだけを記事に書ければいいかなと思っていたのですが、興行全体としてとても素晴らしかったのでもう少しだけお付き合いください。

この日の大会はOWF自主興行と銘打たれている通り、OWFという団体が主催なのですが所属選手が3名しかおらず(しかも3名とも今大会をもって卒業)

必然的に他の学プロ団体から選手を呼ぶ、団体OBに出場してもらうほかありません。

それでも出場されていた全選手が個性豊かで素晴らしく、学プロに抱いていたイメージを覆されました。

本当なら全試合について書きたいところですが、恐ろしい文章量になりそうなので1試合だけ抜粋して書きたいと思います。

チャック・I・テイラー選手

第4試合に行われたチャック・I・テイラー選手の引退試合は、時間差で公認凶器がリングに持ち込まれる「ウェポンランブル」にて行われました。

DDT好きな私としてはこのルールで行われる試合をとても楽しみにしていたのです。

パイプ椅子にはじまり、ラダー(脚立)などお決まりの凶器にはじまり自転車が登場したときには溢れるリスペクト精神に興奮しました。

とても見覚えのある積み重なったパイプ椅子の城、そこに自ら突っ込んでいくチャック選手、いくら好きだからとはいえ「そこまでやるか!」と思ったワンシーンでした。

他にも、「試合中に対戦相手が透明人間になる」という攻撃には思わず発想力に脱帽せざるを得ません。

かつて男色ディーノ選手が透明人間と闘ったり、海外の団体で同じように姿の見えない選手とプロレスをするという試合形式は情報として知っていたものの、「試合中に一定時間透明になる」というのは初めてだったので恐れ入りました。

他にも同期と協力して攻撃したり、他団体の選手たちから総攻撃を受けたり学プロらしさ溢れるワンシーンも。

同期の菊正宗隆選手、紅丸選手と
フェリス・ジェリコ女学院選手
YAMA-SHINA選手
HARAMASHI選手

かと思えば、同期たちからも攻撃を受けたり笑

極めつけにレゴブロックまで登場。

そして最後に持ち込まれた公認凶器はなんと「卒業証書」

感動的なシーンから最後はストーン・コールド・スタナーというこれまた見覚えのあるフィニッシュで試合は決着したのでした。

随所に見られるリスペクトの精神と、最後に出した卒業証書など学生プロレスならではのオリジナリティ溢れる凶器など紛れもない名勝負だったと思います。

もちろん他の試合もどれも素晴らしく、私は素人なのでプロレスの技術的なことはよく分かりませんがプロの試合にも負けないくらいの学生プロレスのレベルの高さに驚き、選手ごとに「もしかしたらあの団体・レスラーが好きなのかな?」と想像するのも楽しい要因でした。

「学生プロレスってすごいぞ!!!」大会を観戦しての感想はこの一言に尽きます。

じゃあ、どの試合も良かった中でどうしてこの試合をピックアップしたかと言うと、それは試合後のマイクアピールに強烈に感動したからでした。

「引退があるから面白い」

先述したチャック・I・テイラー選手は試合後にマイクを握り、まずは引退試合の相手を務めてくれたジミー・旭選手への感謝を、続いてOWFの同期や参戦してくれた選手の皆さん、そして観戦してくれたお客さんへの感謝を述べていました。

そして最後に、当日観戦に来ていたご両親への感謝の言葉を述べていくのでした。

「子どもの頃、プロレスを好きなったときにお父様がいろんなプロレスを教えてくれたこと」

「危険なことを承知で4年間大好きなプロレスに打ち込むことを見守ってくれていたこと」

「大学4年間だけでなく、22年間育ててくれてありがとう」

決して飾らない真っ直ぐな言葉でご両親への感謝の言葉を述べる姿を見ていたら、まるでこちらまで親兄弟のような気持ちで聞いてしまい(親になったこと無いけど)溢れる涙を止めることが出来ませんでした。

感動した理由としてもうひとつは、かつて私も過ごした大学生としての4年間をひたすら好きなことに打ち込んだ過去をフラッシュバックさせたこともあると思います。どちらの立場も分かるからこその名マイクでした。

ここまで含めて私は今大会のベストバウトだと思います。

全試合が終わった後にはOWF3選手の引退セレモニーが行われました。

プロレスの引退式といえば10カウントゴング、そして紙テープです。

決して形だけのプロの真似事じゃなく、投げ込まれた紙テープにも皆さんからの「今までよく頑張ったね。4年間お疲れ様。」という思いが込められていたことでしょう。


「学生プロレスの面白いところは引退があることなんです。」

これは全試合が終わった後に菊正選手が私に言ってくれた言葉です。

プロの選手が自分のタイミングで引退時期を選ぶのとは違い、学生プロレスは学生である以上必ず卒業を迎えます。

本記事を書くにあたり、冒頭で紹介した無村架純選手もインタビューでこのように述べていました。

「プロレスと甲子園が混ざったみたいな。学生プロレスって期間限定だから、それによって生まれる刹那的な感動がありますよね。」

今ならこの言葉の意味が分かるし、熱心に学生プロレスを応援している方たちの気持ちが分かるような気がしました。

かつて「プロレスはゴールのないマラソン」と発言した武藤敬司選手が引退を発表した際に出た言葉は「ゴールすることに決めました」でした。

学生プロレスはゴールがあるから面白い。

学生プロレスは最強だ。

そろそろまとめに入ろうと思います。

大会が終わって、約束していたように写真を納品し翌日の飛行機で東京に戻り本記事をどうやって書き進めようか考えていた頃とあるツイートが目に入りました。

DDT所属の男色ディーノ選手がこのようにつぶやいていたのを見て、とある言葉を思い出したのでした。

「学生プロレス最強。」

これは2019年、男色ディーノ選手と青木真也選手の一騎打ちが決定した際の煽りVTRでの言葉でした。

学生プロレス出身者の中で誰よりも学生プロレス出身であることを誇りに思っている男色ディーノ選手だからこそ出た言葉だと思います。

2019年当時の自分では理解できなかったこの言葉も、今なら実際にこの目で学生プロレスを見たからこそ理解できます。

笑えて、泣けて、熱くなれて、感情を揺さぶられる学生プロレスは最強です。

偉大なプロレスラーが東京ドームでのゴールを目前に控えている中、大阪のとある小さな会場で少しだけ早くゴールを迎えたプロレスラーたちがいたことを少しでも多くの人に知ってもらいたい。そんな気持ちで本記事を執筆することに決めました。

ディーノ選手が言うように「全ての学生プロレスラーは卒業しても幸せであり続けて欲しい」私も同じ気持ちです。

最後に改めて、菊正宗隆選手へ本記事を執筆するにあたり協力してくれてありがとうございました。

そしてなにより素敵な大会にご招待頂いてありがとうございました!ご卒業おめでとうございます。

これが私が人生で初めて「学生プロレス」を観戦した話。

というわけで、ここまで読んでくださりありがとうございました!!


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