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秋春制への移行は愚策:Jリーグのシーズン制移行と宮脇式植樹法について


春秋制支持の理由

Jリーグの秋春制への移行について侃々諤々と議論されている。
選手会会長の吉田麻也が色々な媒体で情報発信しているし、フットボールタイムで内田篤人と対談したことなどで反響が大きいように感じる。

私はJリーグは春秋制を維持するべきだと考えている。
シーズン移行の話になると積雪地域の話ばかりになるが正直その議論には余り興味がない。
九州出身で雪国の実情を知らないこともあるが、積雪に関することは究極的にはコストとテクノロジーによって解決できる問題だと思っているからだ。

私が春秋制を支持する理由は、単純に日本は4月に始まり3月が年度末という社会制度になっているからだ。
欧州が秋春制なのは欧州が基本的に9月始まりの社会制度だからだ。


シーズン制移行のメリット・デメリット

サッカーに限らず、どんなスポーツも普及・育成・強化という3局面があり、この3局面の歯車が嚙み合って回転することで大きな力を生みだしている。

特に日本のスポーツ環境は普及・育成に関しては、Jリーグの誕生以降スポーツクラブと学校体育を中心とした部活動の2本柱で成立しているが、部活動に関しては学校の年間スケジュールに準じているため当然春秋制で活動している。スポーツクラブ活動だけ秋春制にしても全日本ユース選手権のような高校生年代の大会の調整に無駄な多くのコストが必要になるだけだ。

つまり秋春制によってメリットが得られるのは、主にトップカテゴリーの強化という局面だけで、普及・育成の局面ではこれまで必要なかった多くの調整のための無駄なコストが発生する状況しか待っていない様に思う。


移行スケジュールの矛盾

シーズン制移行の議論の中で、Jリーグや選手会側は現在提案しているスケジュールでは移行しても実質1ヶ月程度のズレしか生じないと主張している。
開幕が「7月最終週〜8月1週ごろ」、閉幕が「5月最終週〜6月1週ごろ」と想定した上で、「12月3〜4週ごろ」から「2月1〜2週ごろ」までの約1か月超にわたってウインターブレイクを設置する形となっている。

正直、1ヶ月程度のズレで調整できるのに何故秋春制に移行するのか?
と感じてしまう。

開幕が「2月1〜2週ごろ」、閉幕が「12月1〜2週ごろ」と想定した上で、「7月3〜4週ごろ」から「8月3〜4週ごろ」までの約1か月にわたってサマーブレイクを設置する形とする 
では何か問題があるのだろうか?

春秋制でも対応できるスケジュール調整案を提出してきて、秋春制に移行するという主張をする意味が全く分からない。

もちろん8月は夏休みで集客が見込めるので試合を実施したいというのであれば、7月をサマーブレイクにして、今夏に多くの欧州クラブの来日に合わせて親善試合が組まれているように、そういう活動に充てるようなスケジュールにすれば良いだけだと思うのだが。


欧州サッカーが正解なのか?

個人的に思うのは、欧州サッカーに追従して真似事をしても本当の意味での日本サッカーの強化は図れないということだ。

ブラジルやアルゼンチンなどの南米は日本と同じく欧州とは違うスケジュールのシーズン制を布いている。もっとも南米は南半球なので日本と同じスケジュールで秋春制なのだけれども。

では南米の選手がシーズン制の違いによって欧州進出の障壁になっているかというと、そんな訳絶対ない。
結局は実績の積み重ねによって、選手の実力に対する信用や確証の精度が上がっているということでしかないと思う。
日本サッカーも、この先欧州で活躍する選手の輩出が続いていけば、シーズン制とは関係なく移籍金を始めとしてJリーグや選手の価値は値上がりするはずだ。

ACLの秋春制の移行に対応するためという意見もあるが、個人的にはそれこそシーズンを跨いだ方が有利に展開できるのではないかと思う。

欧州のCLやELはミッドウィークに試合を行い、週末に国内リーグ戦を行う形でスケジュールが消化されていく。

しかしアジア地域は広大なためACLのグループリーグはセントラル開催でスケジュールが組まれる。
(※勘違いです。ACLもホーム&アウェーでした。でも絶対セントラル開催の方が良いと思うけど)
そしてGLを突破したクラブが決勝トーナメントに進出するが、GLと決勝Tがシーズンを跨いでいれば各クラブはGL結果に応じたシーズン前の補強戦略を練ることが出来る。浦和がACLを獲れたのも決勝進出が決定しているからこそのシーズン前補強をしたことも大きいと思う。
GL突破した場合、シーズンを跨いでいることは寧ろアドバンテージになりえるんじゃないのだろうか?


まぁ、もっとも現在のサウジの移籍状況を見てると、もはやそういう次元じゃないような気もするけど…


サッカーの本質

結局、サッカーというスポーツにおいて最も重要なことは地域密着だということに尽きると思う。

インターネットがどれだけ発達して距離や時間を超越して世界と繋げてくれる時代が来たとしても、サッカーの本質はグローバリゼーションではなくローカリゼーションなのだ。

PSGの選手として来日して日本でプレーするメッシは個人的には偽物だとしか思えない。メッシのプレーはバルセロナという町に訪れてカンプノウでメッシがプレーするスタジアムの同じ空気を呼吸しながら観たいと思う。
どこのチームに移籍してもメッシはいつまでもバルセロナの選手なのだと思ってしまう。
香りや空気や時間や感情が、スタジアムという場所に絡みついて色濃く記憶されていく。
それがサッカーの魅力の本質なのだと思う。


宮脇式植樹法について

宮脇方式と呼ばれる植樹方法がある。

植物学者の宮脇昭氏が考案した植樹方法で、簡単に説明すると、その土地本来の植生を活かし、間隔を詰めて何種類もの植物を植えることで、荒廃した土地であっても短期間に森林を再生させることができる。というもので、ある調査では通常の植樹に比べて10倍の速さで成長したという報告もある。


結論

日本のサッカー選手は当然日本で育つのであって、欧州で育つわけではない。
日本の社会制度は4月に始まり3月に終わる。
4月に入学して3月に卒業する。
日本で育った人間であればこの時間軸で日々の生活を行い、成長していく。


日本の土壌に
ドイツから輸入した種を植えて、
スペインから輸入した肥料を撒き、
イギリスやイタリアやフランスから輸入した水を与えて育てた植物。

日本の土壌に
日本固有種の種を植えて、
日本由来の原料で作られた肥料を撒き、
日本の水を与えて育てた植物。

どちらの方がより大きく育ち、美味しい実を実らせるのだろうか?


JFAやJリーグや選手会は、日本という国の社会制度に沿う形で、選手育成を最大化するための効率的な方法を考えることに注力すべきだと思う。

ハッキリ言って、秋春制への移行は愚策中の愚策だと思う。


(文中敬称略)

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