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ブルーカード導入でupdateするレフェリングについて


はじめに

サッカーに10分間退場のブルーカード導入が検討されているらしい。
賛否に関しては反対意見の方がかなり多いように感じている。

個人的にはブルーカード導入に賛成の立場だ。
運用方法に対する具体案が見えないので疑問を感じる人が多いのだと思うが、個人的には運用方法以外のところでブルーカード導入による重要な問題解決が図られると考えているからだ。


審判のタスクがアナログ過ぎる問題

この10年間で「ゴールラインテクノロジー」「VAR」「半自動オフサイド判定」「試合中の連絡機器使用可能」「GPSによる選手データ収集」「AIによるスタッツの詳細化」など多くテクノロジーがサッカーの試合現場に導入・投入されている。
もちろん審判にも「インカムによるチームレフェリングの構築」などが行われているが、FIFAをはじめとした運営側がテクノロジー導入による審判のタスク軽減に本気で取り組んでいるように感じない。
審判の数が不足していると発信する一方で、毎年細かなルール変更を行い審判のタスクを増加させ続けている。

最近ではサッカーの試合において失われた時間をできるだけ正確に、という理由でアディショナルタイム(以下AT)の時間が増加傾向にある。
そして、そのATの時間は前・後半の終了間際に第4審判が掲示板を掲揚することで伝達される。


いつも思うのだが、個人的に「これは冗談だろ…」と感じてしまう。

誰もが知るように今は西暦2024年だ。
21世紀も4分の1が過ぎようとしている。
コンビニに行けばタッチパネルどころか、空中のホログラムで買い物ができる時代だ。


スタジアムのスピーカーに繋がった影マイクで、第4審判が
「アディショナルタイムは〇分です」
と口頭で伝えるのが最も効率的な伝達方法だと思わないのだろうか?

ATの伝達方法が掲示板の掲揚という、ほぼ狼煙と言い換えてもいい方法が2024年において採用されていることを可笑しいと思う人はいないのだろうか?
第4審判がAT掲示板を掲げるたびに、木の枝を両手で擦って火を起こそうとする人を連想して笑ってしまう。
どう考えてアナログ過ぎるだろう…

「ATは前・後半の終了間際にセンターサークル上空に全方位から認知できるホログラムで表示される」
になっていても良いくらいなのに……


タスク過多が招くレフェリングの質の低下

VAR(ビデオアシスタントレフェリー)の運用が始まってしばらく経つが、VARは所詮アシスタントでしかない。
そしてVARを導入してもなおミスジャッジは起きてしまう。
だって、ヒューマンエラーが起きても仕方がないほどのタスク過多の状況で正しい判断を迫られているのだから。

そんな全てを飲み込んで最終判定は主審が行う。

毎年ルールを変更して、VARのような新しいテクノロジーが次々と導入される。
最終決定者としての主審のタスク過多の状況だけが増していき、疑わしいと感じる判定のたびに、ピッチ上の絶対権力者として存在する審判が選手・チーム・サポーターから憎しみの目を向けられる。

こんな仕事をしたいと考える人間が増えていくとは、とても思えない。

この状況を解決する最も現実的な方法は
「テクノロジー導入による主審のタスク軽減およびタスク分散」
以外にあり得ないと思う。


10分間退場のマネジメント

ブルーカードがどの状況で出されるのか?という議論だけが盛んに行われている印象が強いが、そんなことより重要なことがあるのではないのだろうか?

「ブルーカードによる10分間退場」
この10分という時間を誰がどうやってマネジメントするのか?

例えば、ブルーカードで選手が退場したとする。
退場の1分後に脳震盪を伴うファールが発生し、治療に9分間掛かった。
治療が完了したので試合再開。
「10分経ったので退場者はBACKして良いですよ」
いや、そんな訳ないだろう!!!
実質1分しか退場してないだろ!!!

つまり10分間退場で求められているのはinplayTIMEの10分間だ。
しかし現状のルールでは試合時間の管理は主審が行っており、ただでさえタスク過多の主審が退場者のinplayTIME10分間を管理するのは無理だ。

現状のサッカーのルールでは、ブルーカードを導入しても正しく運用することは『不可能』というのが正しい認識であるべきだ。


ブルーカード導入はタイムキーパー制への移行を意味する

現在ブルーカードを運用しているスポーツが幾つかあるが、すべて試合時間の管理をタイムキーパー制で行っている。
タイムキーパー制とは試合時間をinplayTIMEのみで計測して、outplayの度に時計を止めることだ。残り時間1秒36からのブザービーターが誕生するバスケットボールがまさにそれ。

「ブルーカードによる10分間退場」
を正しく管理するのであれば、タイムキーパー制への移行は絶対だ。

言い換えるならば、
「試合時間の管理」というタスクを主審から分離して
「タイムキーパー」いう新たなポジションを設けて、inplayTIMEのみ正確に計測するスポーツへと移行しなければならない。

コーナーポストでの攻防は時間稼ぎになるが、傷んだフリして倒れても主審の笛で時間が止まるので時間稼ぎにはならないようになる。
現在変更が検討されているGKのボール保持時間もタイムキーパー制に移行すれば、厳密に計られるようになると予想する。


結局は同じinplayTIME90分、ならば

現状もoutplayの時間を止めて、それをまとめてATとしている。
そのATを試合終了間際に連結することでinplayTIMEを90分にする運用努力は行っている。

問題なのはoutplayの時間がいつ、どの程度止めたのかが可視化されていないことだ。

同じ「inplayTIME90分の厳格化」を目指すのなら、理由も分からない「AT12分」ではなく、可視化された「45分」が良いに決まっている。
選手もクラブもサポーターも全員の納得度が向上するだろうから。

これまでは、
主審が試合を捌きながら試合時間の管理をする。
前・後半終了間際に「どれだけ時間を止めたのか」を第4審判に伝える。
第4審判が掲示板を掲揚して伝達する。

どこまで行っても審判のタスクはアナログだらけだ。
インカムがなかった時代は大変だったんだろうなぁ……

こんなアナログなことをいつまで続けるつもりなのだろうか?


抗議を見たい奴なんていない

タスクを軽減・分散することでupdateされたレフェリングを見ることができると思う。
試合時間の管理から解放されるだけも、大幅なレフェリングの質の向上が期待できるはずだ。

時間稼ぎだと言ってくる選手に時計を指差し「時間止めている」アピールしなくて良くなるし、最後のコーナーキックを何故蹴らせてくれないのかアピールも発生しない。

45分経った時点でホーンが鳴り、その時点からoutplayになるまでが最後の試合時間だ。そこでCKを獲得しても当然試合時間終了は確定している。

この2つだけでも主審への抗議は10%以上削減されると思う。


最後に

FIFAのインファンティーノ会長は、「サッカーの本質と伝統を守らなければならない。ブルーカードはない」と発言したようだが、それを壊し続けているのはお前だろ!!!と言いたくなる。


もちろんタイムキーパーという新しいポジションに対する人材育成や表示時間をどのように掲示するかなど、コストが伴うインフラ整備が発生するだろう。
ブルーカードの運用方法に関しても、当然多くの議論に時間を割かなければいけない。

それでもサッカーはタイムキーパー制に移行すべきだと思う。

曖昧な試合時間を心地良く感じる人はいないだろう。
サッカーを愛する人間であればレフェリーが主役の試合を観たいとは思わない。
レフェリーが正しく仕事をするための改革はやるべきだ。

タイムキーパー制移行の大義名分としてブルーカード導入は申し分ない。


サッカーの本質は守られるべきだが、
時代遅れのアナログな伝統については守る価値はないと思う。



(文中敬称略)

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