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銀鏡と秦河勝、66面を追いかけたら、どこに辿り着く。銀鏡神楽へ、宿神の奉納。


 銀鏡神楽には北極星・北斗七星を神格化した「宿神」という神様が登場します。その宿神の面を彫った人物が秦河勝だというお話しが残されているということを映画「銀鏡」赤坂友昭監督から、昨年の宿神蔵出しイベントの際に教えて頂いた。日本酒「宿神」も、伝統芸能の神様である秦河勝への奉納酒・御神酒として生み出されたことから、今年こそは銀鏡神楽で宿神を見に行き、宿神の奉納せねばと思い、宮崎県銀鏡へと伺う事が出来ました。

日本酒「宿神」の蔵出しイベントでの写真、この時に赤坂監督から宿神面のお話しをして頂きました。

⇧宿神面の口伝の内容はこちら、赤坂監督に文章を書いて頂きました。

 宮崎の深い山間にポツンと銀鏡集落があり、着くと祭の準備が黙々と進められていて、その作業風景から銀鏡神楽が始まっていることが感じられた。それほど村の人達が何かに仕えているような空気感があった。

銀鏡到着
神楽準備中

 銀鏡神楽は式三十三番の演目があり、式一番は13日のあわいの時間(夜になる前・時刻は決まっていない)から始まる。そろそろ始めないと日が暮れるぞーって感じで始まる。舞っている最中に日が暮れて行き、一番星が現れる。

 式一番は、神楽殿の中で舞われる。天井の中央より神屋の四角にしめ縄を張り、椎の木の枝葉と幣を交互にそれぞれで二十八取り付けられている。これは二十八星宿を表したもので、二十八宿神を奉納する神楽なので星の舞と称されている。

式一番 星の舞
二十八星宿

 式二番から式三十三番は、次の日の日暮れから一夜明けたお昼頃まで夜通し行われる。銀鏡で3日間滞在することが出来たので、銀鏡神楽を観に来られた方々や地元の方々とお話しすることが出来た。

 話しを聞いていると、銀鏡神楽がゆかりのある場所へと、里帰りする動きが始まっていて、式五番と六番で舞われる鵜戸神楽は、元々鵜戸から来たもので、神楽の里帰りとして、鵜戸神宮の神職に舞の型を伝え戻すことが行なわれたという。

 赤穂の坂越に、一度の宿神の奉納だけでも良いので、河勝さんの元へ帰って来て欲しいなと思いながら聞いていました。そして、今の宿神面はレプリカで、本物は県指定の重要民族文化財の為、保管されているとのことでした。

扇と玉二つ、ミシャクジがここに

次の日、外神屋の飾り付け・結界が張られていた。張られた縄には、扇とカップが飾られている、カップの中は紙吹雪のようにカットされた紙が入っている、天から降ってくる命、玉二つで男性器、扇は女性器で諏訪のミシャクジ信仰を思わせる。宿神とミシャクジが重なり交わる舞台が銀鏡神楽で見ることが出来る。宿神とミシャクジ信仰が神楽の中で芸能を通じて一つになっている、そして宿神の面を彫ったのは秦河勝。

宿神!!
獅子舞

式三十三番終了後、宿神のお宮へ行き、銀鏡の映画でも印象的だった濵砂武昭宮司とお会い出来、宿神のお話しを聞くことが出来ました。

銀鏡神楽の宿神は、宿神稲荷三宝荒神であったが、宿神三宝荒神となっている。宿神と三宝荒神が同神とされ、一つになっている、どちらにしても神仏習合であり、ミシャクジ信仰という民間信仰や妙見信仰・星信仰などが神楽の中で和を以て一つとなっている。

宿神の面は一度、銀鏡神社から盗まれた時があり、その時のお話しを聞かせて頂きました。山から法螺貝が聞こえるので、武昭宮司のご先祖が、家から外に出てみると、慌てて逃げ去る者が居り、その者がいた場所へ駆け寄ると、風呂敷に入った箱が岩に引っ掛かり張り付いていた。箱を開けてみると宿神の面が入っており、盗まれていたことに気がつく。おそらく、盗人は岩に一休みのため腰を掛けたら、岩に風呂敷が引っ掛かってしまったのだろう。その日から宿神面は武昭宮司のご先祖が社家になり、宿神面の面倒を代々見ることになった、現在は武昭宮司が引き継いでいる。

宿神面

宿神面が岩に張り付いて離れなかった、それは星(宿神)が岩(イワナガヒメ)に転写されたかのような、銀鏡の宿神の逸話に相応しい物語だなと、、そう思うと銀鏡の宿神の舞は、イワアナガヒメの舞だと誰かが言ってたことが、とても腑に落ちた。

最後に、赤坂監督が本物の宿神面の撮影をされたことがあるようで、そのアシスタントをされた男の子が教えてくれたのですが、赤坂監督が宿神面にピントを合わせられたので、ピントのチェックを頼まれ、カメラのレンズを除くと、宿神面から唯ならぬ妖気のようなものが漂っていて、思わずレンズから目を離すほどでしたと宿神のことを私達に教えてくれた。

 秦河勝を追いかけて、宿神や星の神楽に出会ったわけですが、聖徳太子コードを書かれ、聖徳太子の未来記・未然本紀を読まれている中山康直さんが、聖徳太子が現在に望むものが星信仰だと話されている。聖徳太子の側近である河勝公を追いかけて来た流れからすると、中山さんのお話しは答え合わせのようなお話しだなーと感じている。

 聖徳太子に命じられ、秦河勝が舞ったとされる
 66曲の舞、その一つの舞と面が、星の神楽・銀鏡神楽に残されている。

暮らしの中に神楽があって、神楽が村の人たちの精神を豊かにしている。その美しさと優しさに触れた、銀鏡での3日間は、まるで映画の中に居るかのようでした。

濵砂武昭宮司と記念撮影
ありがとうございました。

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