灰色のふわ

あたし嫌な人がいるの。縄で縛ってほしいの。
好きな人と夜通し話したいの。
綺麗なものだけ見つめたい。
美しくありたい。あの人はあたしだけを見ていてよ。
花が散る。
風に吹かれる。緑が散らばる。
青空が見える。
あたしは足を止めた。耳を澄ます。
体中に血が巡る。温もりがわかる。誰かの温もりだとわかる。
あたし以外の誰かだ。
嫌ではない。
誰か、見てほしい。心臓が煩いの。
頭の飾りも取り払ってあたしは走り出す。もう飽き飽きだ。もうやっかみはうんざりだ。
信じられない。
人を信じたい。嫌だ、何かを信じていたい。
あたしだけ信じて。よく見ていて。あたしの目をよく見て。
「綺麗でしょう?」
空は何も答えない。涙が溢れた。あたしは一人だ。あの人もいない。誰もいない。
どうして一人になってしまうの。
淋しい。あたしはすごく淋しがり屋だから。
あなたの綺麗な目であたしを貫いて。
あなたのカラフルな瞳で矢のように真っ直ぐに貫いて。

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