三月の街角
新型肺炎で街が静まり返って、ところどころ人がパニックになって、ところどころ世の中がひずんだりする。僕らの卒業式は延期。だからいつまでも高校生なんだと思う。明日着る予定の詰襟、袖を通すのは最後のはずだったけど、延期が続く限り、僕らはこれを着て街に繰り出す。桜が散っても、夏が来ても、きっと僕らは高校生のままだ。僕らは進学することもないし、水たまりで泳ぐオタマジャクシみたいに水から陸に上るタイミングを待ち続ける。明日どうする? いつもどおりでいいんじゃね? そんな会話を交わしながら閑散とした街を歩いて家路に着く。よれよれになったマスクが道路に落ちているけれど誰も踏まない。少し窮屈になった制服に、お前も延期しろよな、俺は卒業式で一世一代の告白をするつもりだったんだ、そう話しかけながら。
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