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VRマルチプレイストーリーゲームの行先

こんにちは!逆凪(さかなぎ)と申します。
本記事は「Clusterアドベントカレンダー2022」に投稿する記事になります。
昨日はてつじんさんの「始まりは、誰だってちっぽけなところから」でしたね。創作の勇気が貰える楽しい記事でした。

著者紹介:逆凪(Twitter:@Saka_Nagi_17)
clusterでVR-TRPGを主としたVRマルチプレイストーリーゲームを制作するシナリオライター・ワールドクリエイター。
今年は「タッグクライマー」「Break the JINX 絶望の廃倉庫」「地下壕の讃美歌」「おもちゃの大冒険」などを制作した。

今回は私がclusterで「VRマルチプレイストーリーゲーム」を作ってきた経験をもとに、それの将来形に思いを馳せてみようと思います。
VRSNSでストーリー要素のあるコンテンツを作っている方なら誰にでも当てはまる話ですので、ご興味があれば是非読んでいってください~

革新的なVRゲームって何だ?????

VRゲーム・VRSNSのゲームワールドは多く存在するのに、VRゲームはコンテンツ不足だ、革新的なゲームがまだ出ていないと言う話は未だ絶えていません。まったくもって面倒な話ですね、そう言うならお前が作れよと返したくなります。

まあ我々はいつかその"革新的なVRゲーム"とやらに辿り着くことでしょう。
しかし、"革新的なゲーム"に辿り着くのに必要なのは"運"ではありません。そのゲームが何故正しいのかを証明する"思考"によって生まれるはずです。
ならばこの先に何があるのかを考えてみよう、という訳です。

要件

今回はVRゲームとVRSNSのゲームワールドの両方を考えながら、要件を決めてみました。

  • ソロでもマルチでも遊べる

  • 何度でも楽しめる

  • 良いコミュニケーションを生む

  • VRで遊ぶメリットを持つ

  • プレイヤーが主体性を持つ

ソロでもマルチでも遊べる

名作と言われるソロプレイゲームは多くありますが、今回はソロでもマルチでも遊べる事を要件に入れます。(オンラインゲーム嫌いも一定数いますが、最近は友人と遊べるマルチプレイゲームならやると言う非ゲーマー層も増えてきましたからね…)

VRSNSにおいては「人がいるワールドに更に人が集まる」特徴がありますし、途中参加ができるようなゲームにするか、ゲームプレイ中はロビーとプレイエリアが隔絶されていないゲームにするのが良いでしょうか。

何度でも遊べる

既存のソーシャルメディアに代わって更に人の生活時間を消費させるプラットフォームとしてのメタバースの文脈や、コンテンツの継続性を考えると何度でも遊べて、ゲームプレイがユーザーの習慣になる事は重要でしょう。

良いコミュニケーションを生む

相手の失敗や奇行にイライラするよりも、協力して何かを成し遂げられたり、コミュニケーションによってwin-winな結果になったりする方が良いですよね。

ゲーム設計の段階でプレイヤー間のコミュニケーションを方向づけて、プレイヤーが長く楽しめるようにしたいですね。

例:協力型アスレチック「タッグクライマー」より
アスレチック中に失敗して落下したプレイヤーを先行してクリアしたプレイヤーが「パワーアーム」という装備品で引っ張り上げる事ができる。

VRで遊ぶメリットを持つ

今回のお題がVRゲームなので「VRの良さ」をゲームに組み込むのは当たり前ですね。簡単なものとしては以下の4つが挙げられるでしょうか。

身体性:頭と両手を自分の身体として動かせる
近さ:NPCへの親しみやエフェクトの迫力が増す
大きさ:原寸大で世界を見る事で巨大オブジェクトの迫力が増す
アバター:自分の姿を変更できる・他者としての体験ができる

例:VR謎解きアトラクション「Break the JINX 絶望の廃倉庫」より
最後に巨大爆発を起こしてゲームクリア。これを背景に記念写真を撮るのが最高ですね。

プレイヤーが主体性を持つ

「主体性」と言ってもいくつかありますが、以下の3つに分けられるでしょうか。

  • プレイヤーが主体的に考えてゲームを遊ぶ事

  • 自分が物語を動かしている主人公であると感じられる事

  • プレイヤーがゲームに対して所有感を持つ事

対処法は非常に様々です。簡単なもので言えば、InteractItemだけではなくgrabbableItemをゲームプレイに組み込む事・プレイの快感を損なわない程度に行動にリスクを持たせる事・プレイヤーの行動でワールドに大きな変化が起きる事・レベルやランキング等を設ける事などなど…

プレイヤーの主体性を高める事で、高いモチベーションで遊んで貰えるだけでなく、プレイヤーが新規プレイヤーを引き込んでくれる事もあります。クリエイターの宣伝だけでは(本当に)限界があるので"主体性"は大事にしたいですね。

例:隠し要素で物語を大きく動かす
主人公体験をコンセプトに制作したVR-TRPG「地下壕の讃美歌」では、プレイヤーが隠し要素を発見する事で物語が大きく動くようにしました。
隠し要素があると知ったプレイヤーはより注意深く探索しますし、発見の共有と物語の展開が快感を増幅させます。(そこで調子に乗ってゲーム脳になりきったプレイヤーに対するトラップを隠しておくのも楽しいんですよね…)

VRマルチプレイストーリーゲームの行先

さて、以上が要件だったのですが、今回はそれに「ストーリーを含むゲームであること」も混ぜて考えてみましょう。あの要件だと広すぎますし、プレイヤーの感情を動かしたいならストーリーは使った方が良いでしょう。(その分コストは高くなりますが…)

小話:cluster・GAMEJAMと要件
挙げた要件をメタバースプラットフォームそのものはある程度満たしていると言えるでしょう。「何度でも遊べる」と「ユーザーが主体性を持つ」をユーザー生成コンテンツの大量生産によって実現しています。
clusterGAMEJAMも基本的に「ソロでもマルチでも遊べる」「何度でも遊べる」を要求していますが、「何度でも遊べる」を2日制作のコンテストに求めるのは鬼畜外道な気がしていますね…

第二のアバター

ナビゲーターNPCがいるVRゲームは多く、それは非常に合理的です。身体的なコミュニケーション(手をつなぐ・撫でる等)で「VRの良さ」が出せます。単純に迷子になりやすいVRゲームでナビゲーターNPCは効果的ですし、プレイヤーの行動を褒めてくれるだけのも嬉しくてモチベーションが続きやすくなります。クリア報酬やDLCとして、自分の姿が自分で見えない主人公の代わりに新たな衣装を着るのも面白いですね。

しかし、現状に加えて更にできる事もあるように感じます。
NPCが"第二のアバター""うちの子"となるまで、カスタム性を用意し、カスタムがゲームプレイに関わるようにし、コミュニケーションの手段を広げたゲーム設計にできれば、「何度でも遊べる」「VRらしさを出す」「プレイヤーが主体性を持つ」といった要件を更に満たせるのではないでしょうか。

例:和製VRゲームとナビゲーターNPC
「ディスクロニア」ではリリィ、「オノゴロ物語」ではハル、「ルインズメイガス」ではアイリスがナビゲーターNPCでしたね。
リリィは空中に浮いているので細かい移動や感情表現のモーションがやりやすく、アドベンチャーパートを強く支えています。
ハルは手を繋いでHPを回復するシステムが秀逸でしたし、PLが謎を解く度に毎回褒めてくれるので楽しく遊べました。
アイリスは精神的成長を主人公の代わりに行い、演出を盛り込んでその様子を見せてくれたのが良かったです。
どれも非常に面白いゲームなのでぜひ遊んでみてください。

ゲーム内経済

ゲーム内経済は以下のような役割を果たしてくれます。主体性やコミュニケーションに関わってくる要素なので入れておくと体験価値が安定しますね(バランス調整は必要ですが…)。

  • 購入するアイテムの選択がプレイスタイルを左右する。

  • 社会のリアリティを高める事で没入感を高める。

  • 物々交換によるコミュニケーションを生み出す。

小話:社会のリアリティ
長いストーリーを展開する上で忘れられがちなのが「社会のリアリティ」な気がしています。没入感がどうのこうのと言うんだったら大事にしたいですね。
時間軸は世界・社会(国家)・個人の3層に分けられます。世界史・社会史・人生史が与えられた上で個人の意思や行動が世界を変えるだけだと物足りないですね。社会に関しても民衆の意思や行動が読み取れないとその世界の生活が分からなくなってしまいます。(社会の機能不全を理由に個人が世界を変えようと奮闘したり、そもそも社会を登場させないものもありますが…)
そこでマスコミや経済は社会のリアリティを高めるのに強く貢献します。VRゲームではありませんが「Papers,Please」等が良い例でしょうか。「ルインズメイガス」にも簡単ではありましたがマスコミと経済が存在しましたね。

ロビーとゲームパート

ここまで来ると、ロビーとゲームパートを分けるのが妥当でしょう。ロビーの機能は以下のようにするのが良いでしょうか。

ロビーで出来ること
・"第二のアバター"のカスタム
・アイテム売買
・NPCや他プレイヤーとのコミュニケーション
・ゲームパートの観戦(プレイヤーとの会話ができても良し)

そして重要なゲームパートについでですが、コミュニケーションの余裕を持たせるには操作が簡単でゲームスピードがゆっくりのゲームが好ましいです。

アクションRPGが至高のVRゲームと思われがちですが、コマンドバトルRPGやボードゲームこそ参考にすべきなのかもしれません。VRTurnbasedRPGの「DEMEO」は結構面白いですし、アプデも継続的に行われているのでオススメです。

小話:ゲームスピードと操作の複雑性
ゲームスピードの速さと操作の複雑性は、プレイヤーの自由度を奪いがちです。特にVRゲームは他のコンピュータゲームより操作が複雑かつ周囲の状況把握も難しいので注意が必要です。
"リアルタイムで敵の攻撃をしのぎ""様々なアイテムやスキルを使い分けて戦いながら""他のプレイヤーに指示を出し""ステージギミックを活用した戦術的行動をする”の時点でプレイヤーへの負荷が高すぎですね。「SAOこそ至高のVRゲーム」という主張はどうなんだろう…と思いながら見ています。

こうしてできたのが…

以上を踏まえて一本企画書を作りました。

良い感触ですがバランス調整も大事なので、じっくりシナリオを書きながらclusterでプロトタイプをちまちま組み立てています。VRゲームとして取り組むのか、VRSNSのゲームワールドとして出すのか、別の事をやるのかはまだ分かりませんが、しばらくはVR-TRPGも作りつつこれの制作で遊んでみます。

…そんな事はどうでもよく、これまでの思考がゲームを考える上での一助となったなら幸いです。企画書の方に死ぬほど興味あるぜ!って人は一緒にお話しましょう。

ちょっと特殊な「VRマルチプレイストーリーゲーム」

さて、これまではコンピュータゲームとしての「VRマルチプレイストーリーゲーム」の話でしたが、私が今まで制作してきたものは少し異なります。

ということでGM(進行役)を用意する事で成立し、今後より普及するであろう「VRマルチプレイストーリーゲーム」も紹介しておきましょう。
要件は以前述べたものと異なりますが、参考にはなるでしょう。

VR-TRPG

言葉だけで共有していたTRPG(テーブルトークRPG)の世界をVR空間で再現する事により、初心者にも分かりやすく、高い没入感で遊べるようになりました。

2022年8月には6作目のVR-TRPG「地下壕の讃美歌」を公開しました。
「最高の主人公体験」をコンセプトに制作され、主人公の視点でマップ探索や戦闘を楽しむ事ができます。
VRマルチプレイストーリーゲームのノウハウが詰め込まれているので是非遊んでみてくださいね。(プレイ配信もYoutubeにありますよ!)

シナリオ・ワールド・アバターをセットで公開する形式は未だ希少ですが、ワールドを簡易的に作ってコミュニティ内で遊ぶ形式は普及しつつあります。ともかくVR-TRPGの文化は今後より広がっていく事でしょう。
「VR-TRPGの現在が詳しく知りたい!」という方は以下のよっしーさんの記事が参考になると思いますので是非。

VR体験型脱出

メインNPCをスタッフが演じ、通常の体験型脱出よりもストーリーや演出を強化した事で、"VRで遊ぶ良さ"を最大限引き出したのがVR体験型脱出(VR謎解きアトラクション)です。

2022年7月に「Break the JINX ~絶望の廃倉庫~」を公開しました。
シンプルながらVR体験型脱出としての要件を完璧にクリアしているので、是非プレイ配信を見てみて下さい。(現在は公演を終了し、他のメンバーが次回作を制作しています。)

スタッフがNPCを演じるという点で通常のゲームワールドと差別化ができて価値が保てているのは良い所でしょうか。「ワールド」とも「イベント」とも定義しにくいですが、今後生き残っていく文化な気がします。

小話:VR-TRPGとVR体験型脱出の簡単な比較
・VR体験型脱出は簡単なルール説明でカジュアルに遊べるが、謎を解かないと先に進めず、演者も役から離れられないのでバランス調整を徹底する必要がある。("万人に受け入れられるゲーム"の難しさ)
・VR-TRPGは事前に規定された詳細なルールの元に遊ぶので、物語やプレイヤーの行動の幅が広い(規定された体験の趣旨と異なる要素をメインルートに入れてはならない)

最後に

こんな長話をしたものの、趣味において重要なのは「作っていて楽しいか」ですので、テキトーに聞き流して参考になる部分だけ拾っておく位が丁度良いのかもしれません。

読んで頂きありがとうございました。書くのに何時間かかったんだこれ…という感じなので感想や拡散など頂けると嬉しいです。

明日は至日レイさんの「#FIRSTCLASS_of_LOVE まとめ」です!こちらも是非ご覧ください。

ということで。お相手は、逆凪でした!


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