見出し画像

"名古屋系"の名盤を思いつくまま紹介してみる

ヴィジュアル系のサブジャンルにおいて、これを抜きに語れないのが名古屋系だ。
シーンが大きく、白系、黒系に分かれていた時代に、そのどちらにも属さないムーブメントとして、今のようにサブジャンルが細分化される前から存在するサブジャンル。
その名の通り、当初は地域性に定義を見出していたものの、いつの間にか音楽的なニュアンスも含まれ出して、気が付けば新潟を拠点に活動していたバンドが名古屋系にカテゴライズされていたり、その間に名古屋では、また別のベクトルの音楽性が流行り出したりで、今や人によって解釈が分かれてしまっている。
その認識ギャップは、アルルカンが"次世代名古屋系"を名乗って登場した際にも顕著に可視化されており、もはや、名古屋系を正確に定義をできる人間はいないのではなかろうか。
敢えて、ひとつだけ確かなことを言うとしたら、どの定義においても、何故か男受けが良い。
これだけは、自信を持って言える事実であろう。

さて、この記事では、細かい定義は置いておいて、ある程度"名古屋系"として認知されていると思われるバンドの名盤を思いつくまま紹介していくことにする。
Silver Roseから遡らないと気が済まない人や、黒夢は岐阜のバンドであり、名古屋系に含めるべきではない、などと言いたくなる人もいるだろうが、ふわっとした意味での"名古屋系"が好きな人に、なんとなく共感してもらえたらそれでいい、という予防線を張ってから先に進むことにしたい。


眩めく廃人/Laputa

画像1

さはさりながら、やはり真っ先に思い浮かぶのは彼らである。
Vo.akiの鋭く尖ったハイトーンヴォイスと、Gt.Kouichiの紡ぎ出す珠玉のメロディ。
初期の黒夢からの影響を強く受けつつ、独自のセンスでオリジナルに昇華させたLaputaは、ダーク、ハード、メロディアスという名古屋系の三拍子を決定づけた、音楽性の面での源流のひとつと言えるのだろう。
特に、激しさを内外の両方から求めていくインディーズ時代のスタイルは、そのイメージにもっとも近しく、入手の容易性も相まって、名古屋系を勉強するならLaputaから、というお約束は、未だに崩れていないのである。


ROUAGE/ROUAGE

画像2

キレのLaputa、コクのROUAGEとは、はじめに誰が言ったのか。
自動操縦的に思い浮かぶ、もうひとつの名古屋バンドは、ROUAGEであろう。
ROUAGEのアルバムをおススメするだけであれば、別の作品を推すのであるが、名古屋系に限定するのであれば、本作を置いて他にない。
ひたすらデカダンに特化して、暗く地を這うように展開される楽曲たちは、誰もが共感できる内容ではないのかもしれないが、一度ハマれば抜け出せない中毒性の高さがあった。
名古屋系の定義に"マニアック"が含まれるリスナーは、このダークさがたまらないはずだ。


不実なアンブレラ/Lucifer's underground

画像3

本作がリリースされた2015年は、既にインターネットの普及などの影響下で地方特有のガラパゴス的流行は消滅していた。
そうなると、名古屋の地に正統派の名古屋系バンドが生まれる機会はそうそうないというのが実態であろう。
ただし、ex-AZALEAのVo.ヒナを中心に結成されたLucifer's undergroundは、キャリアを重ねる中で染みついた名古屋の血が、良い意味で当時の地域性を色濃く残していたと言える。
現代的なサウンドで純度の高い名古屋系を堪能できる、隠れた名盤だ。


是空/Lamiel

画像4

シングル作品ではあるが、名古屋系において"重さ"の概念を与えたのが、この作品ではないかと。
Phobiaを脱退したGt.依織が加入。
その影響か、ギターのサウンドに重厚さが増していて、後のラウドサウンドとの融合の下地になった側面もあるのでは。
シーンにおける名古屋系の浸透を牽引した功績も大きく、残した音源がさほど多くないにも関わらず、同時期に活動していたkeinとともに、名古屋系バンドの代表格として名前が挙がるバンドである。


マゾヒストレッドサーカス/Lycaon

画像5

名古屋系の枠組みで語られる機会は少ないものの、名古屋を拠点に、独自のサウンドを展開していたLycaon。
レーベルメイトであったAvelCainが、懐古主義的な観点から名古屋系を再現するアプローチをとっていたのに対して、彼らは、艶やかさを重視する斬新な解釈から名古屋系を切り取っていて、オリジナリティで勝負するなら、彼らに軍配が上がるだろう。
エロティシズムとマニアックなダークサウンドの相性は抜群。
シーンを変えて、INITIAL'Lとして活動中の彼らだが、この頃の唯一無二な音楽性に後ろ髪を引かれているのは、僕だけではないはず。


生贄/LOR-ROAR

画像6

調子に乗って書いていたら、Merry Go Roundかdeadman、どちらかを削らなくてはいけなくなったので、ある種、どちらもまとめて紹介できるLOR-ROARの1stミニアルバムを。
2021年末にリリースされたばかりの新譜が入ったほうが、バランスもとれるはずだ、というのは自分への言い訳である。
LOR-ROARは、deadmanのVo.まこ、ex-Merry Go RoundのDr.キョウによるユニット。
highfashionparalyzea~gibkiy gibkiy gibkiyでも、deadmanとMerry Go Roundのコラボレーションが実現していたことを踏まえれば、その親和性と化学反応は約束されたも同然で、禍々しい世界観と、シアトリカルなサウンドは、他の追随を許さない。
マニアックな名古屋系の進化系と言えるだろう。


BLISS OUT/DEATHGAZE

画像7

lynch.の登場以降、名古屋系の概念は上書きされた感があり、地域性だけで見るなら、本格派のメタルコアに、ヴィジュアル系特有のメロディアス性を持ち込んだバンドこそ、名古屋系と定義されるべきだ。
その流れを作ったのは、lynch.のVo.葉月も在籍していた時期があるDEATHGAZE。
DARRELLやDEXCOREなど、現在、名古屋を引っ張っているバンドも、彼らからの派生であることを勘案すれば、ひとつの源流である。
この「BLISS OUT」は、ネオ・名古屋系のサウンドが理解しやすいアルバムに仕上がっており、ラウドサウンドの中に美しいメロディを滑り込ませるセンスが絶妙である。


あれが抜けている、この定義はおかしい、と意見が割れるサブジャンルであり、避けて通りたかった部分もあるのだが、いざ書き始めてみると、歴史が深いこともあり、あれもこれもと止まらない。
上記の紹介文の中に散りばめられなかったあたりだと、インディーズ時代のFANATIC◇CRISISは名古屋で活動していただけでなく、サウンド的にも近接していたというのは、メジャー期の音楽性しか知らなければ興味深いところだろう。
雫...やSleep My Dear、Romance for~なんかも捨てがたい。
Vizell、LADYら、ドーナツレコード勢や、nordやSysterなどの円盤屋の系譜もまだまだ語りたいところである。
このままバンド名を書き連ねていっても収拾がつかないので終わりにするが、例に漏れず、やっぱり好きなのだよな、と再認識。
もう少し、堂々と名古屋系が好きだと言っていこうかな、と思ったりした。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?