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ヴィジュアル系だらけのバンド名が覚えられない選手権

ヴィジュアル系のバンド名にも流行り廃りはあって、近年の主流だったワンフレーズでのキャッチーさ重視傾向に加えて、邦ロック界隈から流れてきた複数単語や文章の組み合わせを用いたバンドも増えてきた。
共通して言えるのは、その結果、いかに出し抜いてやろう、目立ってやろう、という意識が滲み出ていることである。

彩冷えるや愛狂います。には、"平仮名を読ませないってアリなの?"という衝撃があったし、メガマソ、えんそく、アクメなどは、"そんなバンド名でいいの?"なパワーワードとなって界隈を賑わせた。
ザアザア、kagrra,、蜉蝣などは、音楽性やバンドの在り方をたった一単語で表現した絶妙なネーミングであったし、ここまで来ると、AやMoreなどの、"それ検索に引っかからない茨の道だぞ!"というバンド名にも味わいが生まれてくる。
黎明期のバンドが、シンプルなバンド名を使い尽くしたというのももちろんあるのだろうが、フライヤーやCDショップの棚を眺めているだけでも楽しいのは、そんなバンドたちの創意工夫が端的に見られるからかもしれない。

さて、創意工夫の中で、読みにくさやバンド名の長さでインパクトを出そうとするバンドというのが一定数表れる。
”名前だけでも覚えて帰っていってくださいね"という定型句がある中で、覚えにくいバンド名なんてマーケティング的にはアウトなのかもしれないが、案外、やたら名前が長いバンドがいたと記憶に残りやすく、きちんと思い出すためにWEB検索をしたりしがち。
捉え方によっては、コアなファンを生み出すきっかけを作りやすいのかもしれない。
コレクターや知識人的ポジションも多いこのシーン、それらを覚えるのも一種のタスクであり、何も見ずにバンド名を打てるようになったときの妙な達成感は、体験した方ならわかるのではなかろうか。

近年のバンドで個人的に覚えるのに時間がかかったのは、NOCTURNAL BLOODLUST。
他ジャンルからの流入ということで、狙った覚えにくさではないのだろうが、長めの単語が2つ続くという、これまでのV系シーンに馴染みのない語感・響きは、なんだか新鮮だった。

Develop One's Facultiesも、そのひとつ。
長さで言うと、Black Gene For the Next Sceneも忘れてはいけない。
これらは、DOF、BFNと、略称がセットになっているので、キャッチーさを維持しながら、ギーク気質なファン心をくすぐる、ナイスなネーミングだ。

日本語・英語以外のバンド名もやはり覚えるのが難しく、だからこそ憶えたときの達成感はひとしお。
今では辞書なく書けるRentrer en Soiも、Deshabillzも、英語の感覚では音と綴りが一致しないので、はじめはスペルが合っているか何度も確認しないと不安だった。
もっとも、DeshabillzはDeshabille(デザビエ=部屋着)のスペルミスで、そもそもこの綴りでデザビエとは読まないという説もあるが、ここではそれ以上は触れないでおこう。
メジャーになりすぎて感覚が薄れているが、L'Arc〜en〜CielやLa'cryma Christiだって、覚えることができて嬉しかったという人は多いのではなかろうか。

彩冷える(アヤビエ)や愛狂います。(アイクル)の、"そもそもどうやったらそう読めるんだよ"系の原点は、Da'vidノ使徒:aL(ダビデシトアエル)だろう。
覚えたのが嬉しすぎて、どっぷりV系沼にハマるきっかけとなった。

姆(モナリザ)や美流沙女(ビルシャナ)といった、当て字系のバンド名も、亜種になるだろうか。
正体不明と言われているモナリザに、姆(乳母)という字を当ててバンド名にしてしまう勇気、冷静に考えるととんでもないなと思う。

こんな感じで挙げればキリがないのだが、バンド名が覚えられない選手権、最優秀賞として紹介したいのは、Velze Dieulawahlだ。

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ヴェルゼデュラヴァール。
まず読めない。そして、書けない。
耳で聞いても、口に出しても、まったくキャッチー性のないバンド名であり、テスト勉強のごとく、覚える気になって覚えないとなかなか習得できない難しさがあった。
だからこそ、覚えたときの達成感があるバンド名第1位として僕の中で定着して、セールス的に成功したとは言いにくい彼らを、20年近く覚えていられるのだから面白い。

余談になるが、"倖せの鐘が鳴り響き僕等は唯、哀しいフリをする。"というバンドがあった。
あったと言えるのかも微妙で、バンド結成が発表されたものの、正式に始動する前に解散となった、音楽の面では何の実績も残していないバンドだ。
それなのに、BLANKEY JET CITYのアルバム「幸せの鐘が鳴り響き僕はただ悲しいふりをする」から持ってきたと思われるバンド名は、その長さで話題になり、この記事を書くにあたり脳裏によぎるぐらいのインパクトは残している。
仮に同じブランキ―のアルバムでも「LOVE FLASH FEVER」をバンド名にしていたら、きっと解散した時点で僕の頭の中からは消え去っていたはず。
その意味でも、バンド名とは必ずしもキャッチーだから良いというものではないのかもしれない。

ちなみに、タイトルを覚えた・言えただけで嬉しいアルバム選手権を開催したら、Merry Go Roundの「放送禁止の死んだふりをする潔癖症の実験体と、箱の中の毒入りショートケーキと、逆回転でまわるエゴイストのパラノイアボックス」と、Missalina Reiの「虹色した飴玉のもたらした幸福なひと達の生誕からその顛末まで」で競ると思うのだが、いかがでしょう。
長さで言えば前者だし、実際に達成感を得た人も多くて優勝しそうな気もするが、実は覚えきれていない人が多いのは後者で、真の達成感を求めるならそちらだとも思う。

いや、最近てんさいがリリースした「MARIA~禁断の呪われし堕天使の涙と共に繰り返す悲しきワルツと終わらないレクイエムに支配されし女王の亡骸に添えし一輪のたんぽぽ~」が食い込むかも。
僕はこちら、脳が老化して覚えることができそうもないので、残念ながら達成感は味わっていないのだけれど。

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