見出し画像

ヴィジュアル系、最後のエルを大文字にしがち。

音楽的流行も、メイクの流行も変わっていく中で、V系シーンにおいて脈々と受け継がれている文化がある。
それは、バンド名の最後の"エル"は大文字表記にする、というものだ。

ヴィジュアル系たるもの、バンド名ですらも視覚的表現にこだわるべし!
確かに、ロゴを作成してみると、文法の原則に従って頭文字だけを大文字にすると、バランスが悪いことがあるのも事実だろう。
だったらすべて大文字にすれば良いのだが、どうせだったら個性も出したい。
そんな考えの行き着く先として"最初と最後の文字だけを大文字にする"という手法が編み出されるのは、理屈としてはわからなくもない。

しかし、それにしても、"エル"だけがとりわけ多い気がする。
誰が言い出したわけでもなく、なんとなく、そういうものとして受け入れてしまっているのだ。
L'Arc~en~Ciel、Raphael、Lamiel等、それに乗らずに有名どころになったバンドも数多くあり、ジンクス的なものがあるわけでもなさそう。
もちろん、UnsraW、ArucarD、beaUなど、他のアルファベットでの例だっていくつもあるのだが、複数の例をスラスラ出せるのは、やはり"エル"だけではなかろうか。
そんなわけで、スラスラ出せる"大文字エル"バンドに絞って、並べてみることにする。


NeiL

画像1

やはり、代表格はNeiLであろう。
96年に結成され、メジャー進出を果たした、90年代バブル期における"大文字エル"バンドの筆頭だ。
もし、"エル"が小文字だったらNeil。
うん、NeiLのほうがバランスがとれているな、と思ってしまうのは、日本人特有の感覚と言ってしまっていいものか、V系シーンのローカル文化に買い慣らされているせいなのか。

なお、2009年には、NaiLというバンドも登場する。
読み方は同じ"ネイル"で、"大文字エル"のおまけつき。
何も知らなければ意図的に重ねたと思ってしまうが、お作法に倣って表記を付けたらたまたま被った、と言えなくもない。
実際のところは、どうだったのだろう。


Eze:quL

画像2

90年代でもうひとつ"大文字エル"バンドを挙げるのであれば、Matinaに所属していたEze:quL。
聖書に見立てるために、CDではなくカセットテープでの音源制作に徹していたほど、視覚性へのこだわりが強かった彼ら。
バンド名の表記にも、強いこだわりがあったに違いない。
Eze:qulだと尻すぼみ感があり、EZE:QULも今となってはしっくりこない。
"大文字エル"は、耽美的なダークバンドにこそぴったり、と思えるほどだ。


HenzeL

画像3

では、時代がゼロ年代に移りお洒落系バンドが台頭し始め、その傾向は廃れたかといえば、否である。
代表的なのは、HenzeL。
2003年に正式始動した彼らは、様式美を重視するコテコテ系バンドの要素はほぼなかったと言えるのだが、バンド名については"大文字エル"を踏襲していた。
コテコテ系からお洒落系へ。
サブジャンルを跨いで引き継がれたことで、文化として認識された側面はあるのかもしれない。


NightingeiL

画像4

"大文字エル"バンドの全盛期は、ゼロ年代の終盤から、イチゼロ年代の初頭にかけて。
2008年にex-La'MuleのVo.紺を中心に結成されたNightingeiLは、その筆頭格だ。
他にも、GizeL、VizeL、SwallowtaiLと、中堅クラスのバンドが多く登場してきたのだが、音楽性やサブジャンルとの関連性はあまり感じられない。
ヴィジュアル系全体でのムーブメントだったのである。
この頃になると、最後の"エル"が小文字になっているバンド名のほうが珍しいぐらいであった。


Chain×maiL

画像5

そして、流れは現代へ。
プチ流行した反動で、イチゼロ年代中盤以降は不作だった"大文字エル"バンド。
それでも、2015年にFerrisWheeL、2019年にChain×maiLが結成されている。
根強いというか、染みついているというのか、空白の期間を作らないよう神の意志が働いていたのかと思うほど。
まだまだ灯は消えていないのである。

NeiLの結成から、実に四半世紀。
絶え間なく、最後の"エル"を大文字表記するバンドが存在しているシーンというのも、冷静に考えてみると面白いのではなかろうか。


(番外編)

Da'vidノ使徒:aL

画像6

難読的な方向に引き摺られて、"大文字エル"バンドとして認識していなかった人も多かったりするのでは。
もはや、デザイン性というよりも、個性に全振りしたネーミングセンス。
定義には合っているけど、趣旨が違うかなということで、番外編として。


Initial'L

画像7

このバンドについては、大文字にしている意味が明確。
"L"は、前身バンドであるLycaonを意味している。
この並びで語るには完全に趣旨違いとなってしまうため、こちらも番外編で。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?