わたしの小石


かなしいかなしい夜でした
涙のこぼれる夜でした
どうしてかなしいのか 分からないので
よけいにかなしくてたまらない
なみだにぬれて 心がそっくり返るのでした

ひっそりとした夜の底に
小石がひとつおかれている
小石はひかりというひかりを みんな吸い込んでしまうので
あたりは暗くて何もみえない
音さえ吸いついていくようで 
ただただかすかに しっとりとして
しめっている
誰の目も声も届かず
ひっそりとした夜の底に
おかれたひとつの小石のような心地がして
かなしいのでした

吸い込んだひかりやおとをいつかぼんやり滲ませて
となりにいるかもしれない別の小石に届けてやりたい
その小石もまた私なのかもしれない

かなしいわたしの小石は
こんこんと湧くかなしみが
となりの小石が届けてくれた
やさしい呼び声なのか どうか
それも分からないまま
しっとりとしている

#詩 #小石 #かなしい

「生きろ。そなたは美しい」