見出し画像

【フリゲ感想】初恋は年齢天秤の中で

この記事の文字数は約7,100字です!

おはこんにちばんは! 富井サカナです。
来月以降はTGF2021作の感想記事ばかりになるはずなので、
TGF2021開幕前の段階では今回が最後のフリゲ感想記事となります。
今回は個人的に物凄く思い入れの強いゲームを取り上げます。

私のことをよくご存じの方からすると、
お前はいつまで本作を紹介しないつもりなんだよと
思わずにはいられなかったであろう作品です。

本作のプレイ後に私はどうしても本作にスポンサー賞なるものを贈りたい!
と思うようになりました。(刺さりに刺さったので)
で、それにはログインや感想投稿が必要なことが後から判明したため、
ノベコレサイトで初めてログインし、感想を投稿し始めました。
(だから感想を送った1つ目の作品が本作なんですよね)

それまでの人生では匿名掲示板などへの書き込みを含めて、
ゲームの感想などを発信したことは人生で一度もありませんでしたが、
今ではすっかり反動もあってか感想マシンガン乱射男になりました。

というわけでフリゲの中では恐らく一番思い入れが深いであろう本作を、
満を持して昨年末くらいから決めていたこのタイミングでご紹介です。
未プレイの方はまず遊んで下さいね!!!!
(他の作品と比較して偏った絶賛にはなっていませんのでご安心を)

1.どんなゲーム?

今回紹介したいのは春根利馬(個人宇宙)さんの
「初恋は年齢天秤の中で」です!!

【制作】春根利馬(個人宇宙) 様
【公式サイト】note
【制作ツール】ティラノビルダー
【プレイ時間】2時間30分(スキップ利用時)~4時間
【ジャンル】王道青春恋愛ストーリー
【KW】恋愛、青春、王道、長編、SF(すこし不思議)
【筆者プレイ時期】2019年11月頃に初回プレイ、2021年7月再プレイ
【筆者プレイ状況】クリア×2回

【あらすじ】
年齢天秤──。それは『所有者』の肉体年齢を15年下げ、
『相手』の肉体年齢を15年上げるという不思議な道具。

自分の低身長にコンプレックスを抱いている中学生「ハナビ」は、隣の席の「夏乃」のことが好きになってしまう。しかし、彼女の好きなタイプは”大人っぽい人”だと知り、絶望する。
それでも諦めきれなかったハナビはネットで検索したところ、”15年後の自分を体験できる”というページに辿り着いてしまい──。

一方、年齢天秤の『所有者』である28歳の「シゲ」は、大きな虚無感を抱きながら日々の生活を送っていた。そんなある日、13歳の状態で、中学生の女の子「ユリア」と出会ってしまった。

【一言でいえばどんなゲーム?】
予備知識なしで楽しんでほしい、シナリオ重視の読後感の良いゲーム
(ネタバレなし部分ではほとんどストーリーに触れませんのでご安心を)



2.こんな方に特におススメ!

・シナリオの完成度の高いノベル・ADVゲームを求めている人
・ノベルゲーム制作に興味のある(特に)文字書きの人
・異なる視点の複数の話が1つに収斂していくのが好きな人
・ちょっとふしぎな設定が好きな人

本作はかなり読ませる作品ですので、特にシナリオ重視派におススメです。
初回プレイ時はまだ本作がフェスでグランプリを獲得する前でしたし、
ノベコレの作品もそんなには遊んでなかったので完成度に驚きました。
設定が非常にしっかりしてますし、粗もまったく目立ちません。
展開も引きもオチも分かりやすく提示されるので、
人を選ばず誰もが作品の魅力を余すことなく受け止められると感じました。

また、本作は文字書きの人に非常におススメです。
例えばなろうなどで一次創作の小説を書いているような人。
優れたシナリオに収集した音楽とグラフィックの素材を組み合わせれば
こういったゲームも作れるんですよ!という良い見本のように感じました。
私も本作をきっかけに以前書いたシナリオに手を加えてゲーム化しました。
絵が描けないけどゲーム作りたい民に勇気を与えてくれるとともに、
言い訳を許さない厳しさのようなところまで感じてしまう良作です。

本作は中学生「ハナビ」と無職?「シゲ」の視点で物語が進みます。
それぞれのストーリーが細かい章立てで交互に進行していき、
最後には1つに収斂していってエンディングを迎えることになります。
小説でよくある手法ですが、このパターンが好物という方も多そう。
群像劇とかでよくみますが、もちろん私は好きです。

ちょっとふしぎ設定というのはタイトルにもある『年齢天秤』のことです。
この道具は一方の年齢が15年上がり、他方の年齢が15年下がるというもの。
ドラえもんのひみつ道具やアウターゾーンのSFガジェットのように、
こういった非現実的な要素があるからこそ成り立ち、
盛り上がるストーリーは他では味わえない魅力があります。



3.ネタバレなしの紹介

まずはネタバレなしの紹介をここで書きます。

【作品紹介】
2019年のティラノゲームフェスでグランプリを獲得した作品。
メインのグラフィックが素材利用でグランプリになるのは初の快挙。
また、同フェスのスポンサー賞16本のうち3本が本作に投じられたり、
フリーノベゲのベテランレビュワーNaGISAさんの年間大賞に選ばれるなど
幅広い層からの好評を得た作品となっております。

【なんといってもシナリオ】
しつこいし今更ですが、シナリオが非常に優れています。
プロットを相当に練りに練ったのは間違いないでしょう。
2つの視点を交互に繰り返しながら話が進んでいくのですが、
引きの強いタイミングや終わり方(この時は知る由もなかった的な)で、
続きを読む手が止まらないほどストーリーに引き込まれます。

【年齢天秤というアイデア】
寄せられた感想の中にはアイデアを賞賛するものも多かったのですが、
初回プレイ後は構成の素晴らしさばかりに感動しており、
この点は特にそれほど強い印象を持ちませんでした。
が、改めてプレイするとやっぱり「天秤」のアイデアは秀逸だなぁと。
この着想がなければ本作は成立しないですし、
モチーフとしてとらえた際も素晴らしいアイデアだと感じました。

【丁寧な作り】
派手な演出などは一切ないのですが、非常に丁寧な作りとなっています。
特にストーリー上のポイントとなるような点でそれを感じるので、
これは最大の効果が得られるような最強・最適コスパ演出だと思いました。
ロゴとタイトル画面はここだ!と素晴らしいものを用意している点も、
印象が大きく変わる部分に注力しているなぁと感じました。

というわけで、未プレイの方はここまで。
プレイ時間は3~4時間ほどと割と長めかもしれませんが、
細かく区切られていて先が気になる話なのでそうは感じないかと!



4.ネタバレありの感想

ここからはメチャクチャネタバレを含みます。
プレイする前には絶対に読まない方がよろしいかと。

こんな駄文読んでプレイした気になっては絶対にダメですので、
未プレイの方は必ず上に戻って公式サイトから好きな形式でDLして、
一気にフルコンプしてからまた続きを読むようにお願いします。

↓ネタバレ記事開始カウントダウン5

↓ネタバレ記事開始カウントダウン4

↓ネタバレ記事開始カウントダウン3

↓ネタバレ記事開始カウントダウン2

↓ネタバレ記事開始カウントダウン1

さて、改めて感想です。今回は重複は避けよう。

■ストーリーについて
・叙述トリック(ミスリード)
制作の動機そのものが明確に『叙述トリックがやりたかった』とのこと。
初回プレイではこういったゲームで叙述トリックという意識が全くなく、
完全に気を抜いてこともありコロっと騙されてしまいました。

ハナビ=シゲの可能性は序盤に可能性としては考えたものの、
ハナビの性格とシゲの自堕落な生活がどうしても結び付かず、
また、そうだとしたら夏乃は殺されたに違いないと思いました。
たぶんそんな暗い話にはしないよなぁと選択肢として消してしまいました。
ハナビ=シゲだとしたら途中から一転してダーク展開だよなぁ、なんて。
全然そんなことなくて爽やかかつその後も感じさせる素晴らしいEND。

改めて再プレイしての感想ですが、
『叙述トリック』の完成度「だけ」を見るとそこまで高いとも思えません。
(叙述トリックはミステリの中でも自分自身が好きなジャンルのため、
 国内の傑作と言われるものをかなり読み漁っているのでそう感じます)

但し、叙述トリックを優先するために設定や展開に無理があったり、
ちょっとアンフェアだったり、読後感が悪かったり、
そういう部分は全く感じませんでしたので、
総合的に見て素晴らしい作品だな、という感想を持ちました。
単純にミステリが多いからかもしれないのですが、
叙述トリックは読後感悪めが多くて感動と結びつくのは珍しい印象なので。

↓上記記事にていくつか叙述トリックを含むものを紹介しています。
ただ、『どれが』と言えないのが叙述を勧める際の難しいところ


・成長する登場人物
ハリウッド脚本術みたいな本を読むと、
主人公は大きなイベントの中で大きなピンチに陥らせた上で、
最終的にはそれをはねのけて成長させろ、みたいに書かれています。
成長ってなぁ、そういうの書きたいわけじゃないし、
なんて思ったりもしてしまうのですがやっぱり魅力的なんだな、と。

欠点があるキャラクターがストーリーの中で成長を見せると、
納得・安心感とともに良い読後感に繋がりますよね。
特にナギの事件以降の変わりようを見てそれは感じました。
ハナビも作中の冒頭と中盤を比べたらだいぶ成長してるし。


・ラストシーン
ラストシーンは秀逸だよなぁと思ってやはりテンションが上がりました。
交互に年齢天秤を使って15年後の姿を相手に見せているので、
久々の再会なのにお互いの姿を既に見知っているという。
とうとうお互い大人の姿で出会えたのね!という。
表示されるメッセージや演出も含めて素晴らしい名シーンでした。
今作でも夏祭りのシーンは物凄く印象的ですし、
パーソナル・スペースのキャンプ?のシーンもそうですが、
やはり作者さんは名シーンメーカーです。情景が思い浮かびますので。


・勝手な願望
年齢天秤というギミックは非常に素晴らしいと思いましたので、
この設定を活かして更なるストーリーも作れそうだと感じました。
というのも、本作では常に年齢天秤を使う際の相手方については、
特にストーリーに絡んでいないんですよね。
なので、本作で言うところのハナビやナギの相手、シゲの相手も
複雑に絡み合うようなストーリーがあれば年齢天秤の設定を
120%活かした別の話が作れるんじゃないかなぁなんて思いました。
まぁでも年齢入れ替わるの期間限定だし結構舞台設定大変そう。

そういえば名作漫画『デスノート』にも
作品中で提示だけされて使われていない設定があったのを思い出しました。


■愛すべきキャラクターたち
登場キャラそれぞれに個性があってとても魅力的でした。

〇ハナビ
少し引っ込み思案ではあるものの、心優しい男の子でした。
多少頼りなくても優しいって言うのはやっぱり長所だよなぁ、と。
また、自分の意見をはっきり言わない点については
作中で夏乃からもきっぱりと指摘されていたけど、
ここぞという時は勇気を持って主張できる中身イケメンな子。
決定的な場面での言動はナギが言う通り凄くカッコ良い。

中学生で家事全般スキルが高いのも若いのに感心だし、
反抗期なのに反発せずに自分で買い物するのも偉い。
(でもお使いで買うものラバーカップ(かっぽん)って
 緊急時じゃなく頼むことなんてあるんだろうか??)

大人になってからは自堕落な生活になってしまったものの、
きっとエンディングの後からまた前向きに生きていくでしょう!

〇夏乃
家が貧乏でも大変な時でも凛としているハイスペ女子。
精神年齢が周りとは群を抜いて高めなのは境遇のせいでしょう。
偏見もなく状況認識も判断もフェアなので良い子だと思いました。
お金を稼ぐとか家を出るとかいう部分については少し短慮だけど、
状況が切迫しているから冷静な判断ができなくなっていたのかな、と。

天秤パワーで大人になったシーンでは
酒の力も借りて一気に色気がマシマシで自分も見ててドキッとした。
打ち上げ花火ってシチュエーションもメッチャムード高まるしなぁ。
このまま18禁ショタゲーにならないかと思わず祈ってしまいました。
(再プレイなのに)

束の間の恋人&命の恩人という点を大きく加味しても。
ずっと一途にハナビを好きだったって言うのは
さすがにちょっと男の願望過ぎる感じもしましたが、
千葉の影響で男性不信気味だったと思えばあり得るのかな、とも。

〇ナギ
こちらは運動も得意なハイスペ女子。
序盤から結構アレな言動が目に付きがちではあるものの、
ハナビが好きなんだろうなというのが分かるので許容範囲かな、と。
いわゆるスクールカーストのバリバリの頂点系であるため、
魅力があまり可視化・一般に認識されていないハナビが
距離の近い自分のことを好きだと思うのはさもありなんと感じた。
好きどころかむしろ苦手だったというのは自分も驚いたくらい。

好きだからいじめちゃう、暴走しちゃうを地で行ってたものの、
例の事件以後の心の入れ替え方は素晴らしいの一言。

〇ユリア
普通で良い子という設定とのことだが、良い子過ぎ!
弟たちの面倒はよく見るし、配慮は行き届いてるし、
いざという時は年下の男の子を守ろうとするし、
きちんと警戒すべきは警戒するしっかりした面もあるし。

残念ながらユリアだけはルートが用意できない仕様なのが残念。
あ、正体を明かしての歳の差禁断ルートはあり得るのか。
サブルートでユリア母ルートなんてのもいいですね!ってなんの話や!


■その他
凄くどうでも良い部分の感想となります。

〇実名での作家の登場
序盤で出てくる作家の名前が
有栖川有栖、東野圭吾、綾辻行人となっていましたね。
この並びとチョイスを見る限り、夏乃の読書傾向は割と幅広めっぽいです。
東野はエンタメ寄りだし、他の2人は新本格ですからね。

同じメジャーどころを上げるとしても、
一足先に牽引した綾辻を先頭に持ってきて、
綾辻行人、有栖川有栖ともう1人は法月倫太郎あたりにしてみると、
ああコイツはゴリゴリのミステリ好きだな、となりますし。
江戸川乱歩、綾辻行人、西尾維新とかいうと、
もうコイツはなんでもカバーする気だな、となりますね。
東野残しで、宮部、貴志とかにすると、
コイツさてはとりあえず会話を広げにきたな?となりますよね。
というわけでどうでも良いです。すみません。

〇青の炎
他には図書館で青の炎を読んでいるシーンが印象的です。
もう夏乃ちゃん完全にヤル気満々じゃねーか!と思いました。
青の炎のネタバレになるので詳しいことは書けませんが、
なんとなくその後の展開を妄想してしまいます。(結果、外れますが)
ちなみに青の炎は素晴らしい小説なのでとりあえずおススメです。
二宮くん×松浦亜弥の映画版は見ていませんので分かりません。
これはわりとどうでも良くないです。おススメです。切ね~。

〇牛乳7本エピソード
チビであるハナビがからかわれて牛乳を飲まされるシーンがあります。
そこで集まった牛乳はリアルな7本。うーん、現実的。
自分が小中の時は牛乳は大人気で奪い合いでした。
じゃんけんで争奪戦になったりのほかにも、
中学では隣のクラスの牛乳が苦手な女の子から毎日もらってました。

あれは小学校高学年の時、風邪だかインフルだかで欠席者の多い日。
余った牛乳をかき集めた私の机の上には牛乳瓶が8本ありました!
ハナビ君は中学生で7本。まだまだ甘いですな。
この時、挑戦の気持ちも湧いてきて嬉々として飲み始めました。
7本飲むまでは何ともなかったのですが、最後の8本目。
もう一口飲む度に身体の中で水位が上がるのが分かる感覚でした。

その後私がどうなったかはご想像にお任せしますが、
7本までは普通にいけるということ、
胃だか食道だかに謎の感覚器があることが分かりました。
これはメチャクチャどうでも良いですね。すみません。
これってゲームの感想で合ってるんだっけ???


ネタバレ防止緩衝地帯

ネタバレ防止緩衝地帯

ネタバレ防止緩衝地帯

ネタバレ防止緩衝地帯

ネタバレ防止緩衝地帯

ネタバレ防止緩衝地帯



5.おわりに(ネタバレなし)

というわけで「初恋は年齢天秤の中で」の感想はこれでおしまいです。
最後に恒例気味になっているお知らせリンクでお別れです。

■本作の後書き・裏話

プレイ後に読むとより本作を深く理解・楽しめます。
制作についての部分は参考になりますし、
特にロゴに込められた意図なんて深すぎて驚きました。
本記事をきっかけに私はnoteそのものにも初めて着目したので、
春根さんは私にとってゲ制だけでなくブログの生みの親でもあります。
(おっさんを生んだと言われるとショックかもしれませんが)


■本作の次の作品

後書きでは次回は短編と言っていたのにガッツリ中長編作ってるYO!
こちらは打って変わって壮大スケールな本格SFモノとなっています。
立ち絵や背景などが素材から依頼に変わってより作品に合ったものに!


■本作の次の次の作品

打って変わりまくってこちらは探索ホラーゲームとのこと!
ちなみに今作はサブキャラの立ち絵は自作されるらしい。
急速に進化を続ける春音利馬(個人宇宙)さんから目が離せない!!


ということで今回はここまでです。
来月からはティラノゲームフェス期間突入となりますので、
月イチの感想記事のアップも一旦中断します。
形はどうなるか決めてませんが、TGF作の感想記事を上げていく予定!

以上、富井サカナでした。


↓↓↓↓様々な面白いと思ったフリゲを紹介しております↓↓↓↓

↓↓↓↓私自身もゲームを作ってます↓↓↓↓


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?