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大相撲九月場所⑧ 若隆景ー御嶽海

 中日。今日は宮城野親方の解説なのに、前半戦は台風情報で中継を見れず。
 すごく損をした気分になる。それほどに宮城野親方の解説は毎回目から鱗がボロッボロなのだ。

 よほどの相撲マニアなのだろう。心技体,それぞれの整え方,磨き方のノウハウが圧巻である。こうして大横綱は形成されたのかと毎回驚かされる。
 以前,元中日ドラゴンズ監督の落合博満氏がバッティングの理論を綴った超専門的な本が出版されたが,親方も同様のものを出せないものだろうか。きっと私はボロボロになるまで読み続けると思う。


 さて、今日は若隆景と御嶽海の一番。
 昨日までの勢いからこの一番を占うと,前者に軍配が上がるだろう。
 御嶽海はどこか悪いのだろうか。昇進以前のように調子のムラがありすぎる。

 立ち合い。
 思いの外,若隆景があっさり組んだ。御嶽海に組まれないように下から押し上げて有利な体勢を作ってから,組むなり何なりするのだろうと思っていた。
 胸が合い,御嶽海有利の体勢。一気に土俵際へ。

 しかし,若隆景の足腰の粘り強さと,深く差された右の腕で起こされ,これを凌がれる。
 そこから徐々に,体勢を整えられていく。浅い左の上手。そして,下手も取った若隆景に圧力をかけられる。
 御嶽海はこれを堪えながら右の下手投げを放つ。
 
 だが,決まらない。下手が窮屈だった。若隆景の浅い左上手のせいだ。いいところを取られてしまった。肘が相手の腕の中に入るほど深い下手なら,もっと相手を根こそぎ持って行けたのだろうが…。
 さらに相手に下手もガッチリと掴まれてしまったものだから,大関としては苦しい。
 ここからさらに苦境に立たされる。御嶽海の下がりながらの下手投げと,若隆景が投げを堪えつつ圧力をかけ続けていたことによって,両者の間に距離が生まれた。そこに頭をつけられてしまった。じわじわと若隆景に,まるで蛇のように締め上げられていく。

 最後は苦し紛れに左を巻き替えに行ったところを一気に持っていかれてしまった。

 完敗である。 



 解説の宮城野親方は,最後の巻き替えのシーンで,
「回しを切ってから巻き替えなど…」
とおっしゃっていた。

 素人には分からないのだが,そう簡単に回しは切れるものなのだろうか。
 確かに白鵬は,惚れ惚れするような回しを切る技術があった。もはやあれは芸術の域にあると言っていい。その映像だけでご飯3杯はいける。
 だが,他の力士が回しをそう切る姿をほとんど見たことがない。流れで切れることはあるが,意図的に切るシーンはそうお目にかかれない。

 やっぱり,宮城野親方。技術論を綴って出版していただけないだろうか。



 本当に奥が深い大相撲。競技そのものがシンプルであるが故に繊細な技術,ズレが勝敗を左右する。

 大相撲が私を放さない。

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