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大相撲九月場所15 玉鷲ー高安

 千秋楽。
 言うまでもなく、この一番。

 立ち合い、高安がどう出るかが一つの見どころだったように思う。
 今場所非常に猛威を振るった右からのかち上げか。
 あるいは得意の左を差して四つに組む形か。

 左四つの形であろうと組み止めることができれば、高安だ。
 しかし、そう簡単に組み止められないから本場所の玉鷲がある。
 さて、いかに。

 立ち合い。激しくぶつかり合う。さすがここまできた両力士。
 高安の選択は左差し。
 だが、玉鷲の右からの強烈な攻め。高安は左を差せず、組み止められない。
 そこでタイミング良く玉鷲がいなす。
 すぐさま玉鷲の二の矢が放たれる。突き放し、右からの押し上げ、左の喉輪。
 1歩、2歩、3歩、4歩、5歩…足も出る出る。
 高安をいとも簡単に押し込む筋力、怪我しない体づくりはもちろん、この年齢でこの瞬発力は畏れ入る。
 最後は腰を落とし、盤石な仕上げ。わずかな隙さえ残さない。
 優勝力士にふさわしい一番だった。
 
 

 結果論になるが、もし、高安がかち上げを選択していたら玉鷲の出足は止められたのではないか…まあたらればを言っても仕方がない。高安の選択を尊重しよう。
 
 「何度でも挑戦する」という高安の談話。ならばこちらは何度でも応援しよう。
 兄弟子の稀勢の里のおかげで、何度でも何度でも応援し続けることには耐性ができている。
 そして、それが報われる悦びも教わった。
 来年の初場所に国技館から稀勢の里の優勝額が外されるそうだ。
 タイミングとしては丁度いいではないか。
 高安関、九州で待っている。


 玉鷲関。おめでとう。
 限られた資源の中で最大限の成果を上げるその姿には、文化を超えて学ぶべきことがある。
 「他の力士も玉鷲を見習わないと」との声がきっと上がるだろう。
 それがなかなかできないから、玉鷲なのである。
 鉄人、鉄人と言うが、いかにして鉄人となったか、そのプロセスに思いを馳せたいものだ。


 上位陣の不振に対して色々と思うことはある。それはほぼ全ての大相撲ファンがそうであろう。
 だが、毎場所こうやって、その不満から救ってくれる力士がいるものだ。
 これが大相撲という文化の懐の深さ。


 関係者の皆様、本場所も有り難うございました。堪能させていただきました。
 九州場所もまた楽しみにしております。

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