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イブからイブまで

或る年のクリスマスイブの夜の話
登場人物は女の子と男の子と魔法使い
そして、ひとつの願いごと

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女の子は男の子を好きになった
だけど女の子は自分に自信が無い
だから女の子は魔法使いにお願いをした

あの男の子だけでいい、「私が綺麗に見えますように」と
魔法使いは女の子に夢を叶えてあげようと言った
「だけどずっとは無理、1年間だけね」

女の子は自分が綺麗に映っていると信じて、男の子に近づいた
女の子はきらきらと明るく話し始める
男の子はそのきらきらを見てると幸せな気持ち

それから男の子は女の子を見つけると近づくようになった
女の子は嬉しい、「私は綺麗に映ってるんだ」と
もっともっと素敵な女の子になりたい

女の子は人に優しくなった
自分から知らない人にも話しかけるようになった
困っている人にも手を貸せる人になった

男の子はそんな女の子にもっと惹かれていった
いつも明るく、だれにでも優しく向き合う
何よりも笑顔が美しい、心が美しい

幸せな日々は過ぎていく
女の子も、男の子も
だけどその分残りの時間は減っていく

女の子は毎日嬉しくてたまらない
だけどひとつだけ、大きな大きな不安
「あと1か月で約束の1年になる・・・」

日に日に、女の子の表情は暗くなっていった
男の子は心配でたまらない
「いったい何に女の子は怯えているんだろう」

約束の期限の前日
女の子は男の子に告白する
「私は明日あなたが思うような綺麗な子ではなくなる」

男の子は女の子の話を聞いて、そんなはずはないと答える
人の綺麗さは見た目だけじゃない
綺麗かどうかはその人の心が決めるんだ

女の子は眠れない
明日から男の子と会ってはいけない
明日から男の子と出逢っても私は気づかれないかもしれない

男の子は自分を信じる
明日も女の子に会ったら気づくはずだ
明日も女の子は美しく映るはずだ

イブの夜、ふたりは手をつないで一緒に眠ることにした
目を閉じて午前零時を迎える
オルゴールの時報が零時を知らせてくれた

魔法使いとの約束の1年が過ぎ
女の子は自信なげに目を開け、男の子はまだ目を閉じたまま
「このまま黙って消えてしまった方がいいのかな」

男の子は自信があった
見た目の綺麗さだけでは真の美しさは宿らない
「でも知らない顔が前にあったらその人を愛せるんだろうか」

男の子は静かに目を開けた
そこには昨日までと変わらぬ女の子の綺麗な顔
男の子は安心して、「昨日と何も違わない」と応えた

女の子は不思議に思って魔法使いを呼び出す
1年経ったら私は元に戻るんじゃなかったのか
でも、「この1年は幸せだった、ありがとうございました!」

魔法使いは女の子に言った
あなたが綺麗に見える魔法じゃない
「私は男の子に魔法をかけた、あなたの心が見えるようにね」

女の子は元々綺麗な心を持っていた
人見知りでそれを人に向けられなかっただけ
だから女の子に自信を与え、心を男の子が見えるようにした

男の子が綺麗と思った女の子の顔は元々の女の子の顔
自信を得て周りの人と接し、その顔はますます綺麗に輝きはじめた
男の子はそんな女の子を見て夢中になっていっただけのこと

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その後女の子と男の子はどうなったんでしょう
おとぎ話なら「めでたし!めでたし!」だけど
今の世の中だとどう変わっていくかわかりません

が、女の子も男の子も幸せな1年だったことは違いない
魔法使いの機転の利かせ方もご立派
ふたりへの素敵なクリスマスプレゼントになりました

「心は見た目より強し!」
私たちは毎日の暮らしの中で心をより綺麗に磨くことができる
そうしたら見た目もどんどん美しく変わっていく

そう信じて生きることこそ大切です!!


(涼を求めて、真夏にクリスマスの物語を)
(イラストお借りしました Photo byhiiro_archive153





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