AIカメラ100台設置が気持ち悪いと感じられるかどうか
渋谷にAIカメラを100台設置し、人々のデータを収集しているという記事を読みました。
【参照】渋谷を歩くだけで年齢から行動、服のブランドまで筒抜け? “AIカメラ100台設置プロジェクト”が物議
「通年の行動データがリアルタイムで蓄積」として挙げられた例が下記の通り。
直感的に「気持ち悪い、怖い」という感情を抱きますが、中には「悪いことをしていないのであれば問題無いはず。利便性向上のため賛成」という意見もあるようです。
以前僕は
【参照】『防犯カメラに尊厳を差し出すべきか』
という記事を書きました。防犯カメラは本当に防犯になっているのか。市民の尊厳を損なうのではなく幸福度を上げることが犯罪抑止につながるのではないか。というような内容です。
今回はその続きとして「AIカメラ」について考えたいと思います。
「AIカメラ」により利便性が向上することで趣味嗜好や思想などが把握され、「快適で不満の無い日常」を作り上げられる可能性をどのように感じるでしょうか。
また、政府にそれらの情報を収集・管理された場合、政治利用や社会主義化の懸念はないでしょうか。
以下の文章は、まず初めに「AIカメラ」の気持ち悪さの正体について考えたいと思います。
次に利便性のために尊厳を自ら捨てることで何が引き起こされるかを想像したいと思います。
最後に政府に情報やデータを与えることによる懸念点を挙げたいと思います。
「AIカメラ」や超管理化社会について考えるきっかけになりましたら幸いです。
■「AIカメラ」の気持ち悪さの正体
「AIカメラ100台設置プロジェクト」に挙げられた一例を読みどう感じたでしょうか。
年齢・着用ブランド・利用路線・利用店舗・来店回数・順路・同伴者の有無などがデータとして蓄積されていくとのことですが、気持ちの良いものではありません。
これらの気持ち悪さを気にしない人達が運営管理に関わっているということがすでに恐ろしくもあります。
このプロジェクトについて直感的に気持ち悪さを感じる部分はまさにここで、「人が人を管理する怖さ」が大きいと思われます。
AIがプログラムに沿って自動的にデータを収集しているだけであればこの気持ち悪さは生まれないでしょう。
(それはそれで嫌であることには変わりありませんが、本記事の論旨からずれるので割愛します)
様々なデータを集められ、それを街づくりやプロモーションに利用される。
つまり運営側はお金儲けが出来るということです。
また把握される人数の多さも怖さの一端となっているように感じます。
「同伴者データ」から渋谷にいる人たちの「知り合いの隔たり数」が把握できるでしょう。
「知り合いの知り合い」「知り合いの知り合いの知り合い」のように、誰と誰が何人の知り合いを隔てて関連しているかが一目瞭然となります。
これにマッチングアプリが参入するとしたら。
新たな金脈が見えてきませんか?
「AIカメラ」の気持ち悪さは、「人に管理されている感覚」と「金儲けに利用されている感覚」によるものだと感じます。
■利便性のために尊厳を自ら捨てる
AIカメラ賛成派の意見として「悪いことをしていないのであれば問題無いはず。利便性向上のため賛成」というのがあります。
「悪いことをしていないのであれば問題無いはず」という意見に対しては拙稿にて
【参照】「人に見られたらまずい事をしていないにも関わらず常に監視されていることへの怒り」と表現しました。
では「利便性向上のため」に尊厳を捨てる行為はその利益に見合っているのでしょうか。
例えば渋谷でスリに遭ったとしましょう。
AIカメラがあればスリを特定することは簡単です。
被害者にとってはかなりの恩恵を受けられます。
では生涯一度も渋谷でスリに遭わない人の立場に立ってみましょう。
その人にとって何も恩恵が無いまま何年間も個人データを吸い上げられてしまいます。
つまり大半の人にとっては恩恵は薄いような気がします。
元々治安が良い渋谷ですが、さらに良くなるでしょう。ずっとスリに遭わなかった人がこれからも遭わないことを恩恵と判断するかどうかによります。
■ AIカメラと『ポケモンGO』の違い
おすすめ広告が渋谷利用者に効果的に行われることを想像してみましょう。
Amazonなどの「他のお客様がよく閲覧している商品」のように渋谷駅周辺全体が歩行者に対してそれぞれ効果的な広告を流し、歩行順路を提示してくれます。
その人は「その日の気分」や「人混みを避ける」という自身の意思よりも、気付かない内に管理された最適な順路を自身の意思だと思い込んで歩かされるかもしれません。
この想像はSFのようですが、実際に我々は『ポケモンGO』などで行き先を誘導されています。
「AIカメラ」+企業の広告・販売促進・プロモーションで人々は「自身の意思」を管理・誘導されていくでしょう。
『ポケモンGO』は自身の意思でスマホにダウンロードし、遊ぶために外に繰り出します。
ですが渋谷にある「AIカメラ」は、知らない内に、承諾していないのに勝手に監視され、データ化され、収集されていきます。
しかもそのデータは個人がかなりの精度で特定できるようなデータです。
この「快適で不満の無い日常」は本当に幸せでしょうか。
「自身の意思」が知らない内に勝手に誰かに管理・誘導されている時、そこに居るのは本当に自分自身と呼べるのでしょうか。
僕にはデータ化した何かbotのようなものに感じられてなりません。
その渋谷はあなたにとってワクワクできる場所でしょうか。
「小道に入り角を曲がると知らない店に出会えた」というような予期せぬ楽しみ方と、企業側に有利な効率化された街を歩くという楽しみ方とどちらを愛せるでしょうか。
以上の例はSF的な想像を広げたものですが、実現可能であるということは実際に起きてもおかしくない、すでに計画されていてもおかしくない、ということです。
利便性は向上しましたが、何か大切なものを失った感覚はないでしょうか。
例えば「渋谷らしさ」や「あなたらしさ」のような。
■政府に管理させてはならない
昨今のマイナンバーカード騒動を見るまでもなく、政府が行うデジタル管理は信用ならない部分があると感じる方も多いでしょう。
AIカメラが渋谷を越えて東京都や関東圏、そして日本全体に広まったらどういうことが予想されるでしょうか。
まず考えられるのが政治利用です。
街頭演説の観衆は顔の表情や動作により応援しているか否かが読み取られデータ化し、そのデータをもとに対策がなされて演説の精度は上がり、候補者はより効果的に投票へと結び付く振る舞いをします。
支持政党の変遷も通年でデータ管理され、年齢や性別、服装や外食のランクなどから効率的に支持率を上げる施策やターゲット選びが導き出されることでしょう。
消費税増税により市民がどのように振る舞い生活を変えていくかの予測精度が高まり、支持率が大きく下がらない方法が算出されるかも知れません。
通したい法案を通して国民は不満を抱きにくく感情を操作されている、というようなことも考えられます。
AIカメラにより街中での犯罪は減るかも知れません。
ですが表面化されなくなった分アンダーグラウンド化する犯罪が増えるだけかも知れません。
政府はより巧妙に、効率的に市民を管理し搾取していき、街はクリーンになっても他の人から見えにくい犯罪が増えていく未来。
このような未来は輝かしいでしょうか。
利便性の向上と同等の価値はあるでしょうか。
もしAIカメラが政治と組み合わさりそうになったらどうすればいいか。
答えはとても簡単です。
「ではまず始めに永田町全体にAIカメラ設置100台プロジェクトを実行しましょう」と提言するだけです。
良い事をしようというのであれば、まずは率先して先生方にお手本になっていただきましょう。
高級なスーツや腕時計をし、高級車に乗っている人が高級料亭を10回利用している、というデータが蓄積されていくかも知れませんね。
「悪いことをしていないのであれば問題無いはず」です。
SF的な想像を広げ、あり得る未来を予測しましたが、最後に「こうなったらいよいよ危険かも」という予測をしたいと思います。
それは「AIカメラによる人間ドラマの感動CM」です。
男女が初めてデートする。渋谷1回目。
子供が生まれ3人で渋谷へ。渋谷10回目。
子供が成長し1人で渋谷へ。1人では渋谷1回目。
子供が親とケンカするも、渋谷スクランブル交差点のビジョンにこれまでの蓄積データから3人の思い出を抽出し演出された映像が映し出され笑顔になる3人。
渋谷30回目の文字と一緒に「渋谷は あなたと一緒に成長します」のキャッチコピーが。
いかがでしょう。
これでみんなAIカメラの素晴らしさに気付いて全国展開していくことでしょう。
これがユートピアと感じるかディストピアと感じるか。その人の感性への問い掛けとなっています。
■まとめ
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