【漫画原作】『煩悩フリマアプリ ボンノン』第2話 死刑執行人に狙われる少年
死神のような人物。それは「ボンノン」運営による死刑執行人。
天音いさりびが死刑執行人の前に立ちふさがる。
「ぴらりんは処罰対象となった」
死刑執行人はそう言いながら二人に近づく。
「逃げるぞ」
いさりびは平太の手を取り脱兎のごとく逃げ出した。決断力の高さもさることながら、いさりびは危険察知能力に長けていた。
「『臆病者の危険察知能力』を購入しておいて助かったー」
いさりびの車で移動しながら解決策を探す。
なぜ平太に罰が執行されているのか。
「平太さんは何か心当たりがありますか?」
顔を横にふる平太。
「いさりびさん、大丈夫なの?運営に逆らう行為なんじゃ……」
心配そうにいさりびを見つめる平太。
(んんん可愛い!!!!)
「もちろんです!!(可愛いから!!!!)」
表情を明るくする平太。
(んんんんん!!!!ぎゃわい”い”い”!!!!)
あくまで冷静を装ういさりび。
「執行人が出現するという話は噂でしか聞いたことがありません。それに監視者マニュアルにも執行人が出現した時の対応など書いてませんし」
冷静を装って説明するいさりび。チラチラ平太の顔を見るいさりび。
そう。執行人の出現は極めてレアケース。運営側である監視者の私でも想定外。平太(厳密には平太のアカウント)に何かがあったから発動したと考えるのが妥当か。
ポイントが急激に増加した者?そんな人はいくらでもいるだろう。それに各地の監視者が頻繁に遭遇していなければおかしい。
機密事項などを売買した者?おそらくだがその程度で執行人が出現しているとしたら都市伝説レベルではなくもっと周知されているはず。
「あ、そういえば」
ふとつぶやく平太。
「プレミアムモードに最近加入しました」
「プレミアムモード?」
監視役の天音いさりびすら知らないそのモードを見せてもらうと、売買されている内容がとんでもないものだらけだった。
「ダークウェブ専用PC、県知事当選権、とある国の奴隷5人、殺人者の記憶…」
「もしかしてこれが原因?」
「でしょうね」
平太の話によると、3日前にボンノンをいじっていた時にプロフィール画面に「プレミアムモード」があるのを見つけたらしい。
切り替えの条件も特に無かったため加入したところ、購入ポイントが高額な出品物の品揃えが一気に増えたらしく、しかも通常モードに戻せなくなったそうだ。
そこで「代々木のとあるアイドル事務所+敏腕プロデューサー1名」の出品を見つけたそうだ。
買おうとしたところに執行者が出現した。
「購入はしてないんですね?」
「うん」
そう言いながらいさりびにスマホ画面を見せる平太。
急ブレーキを踏むいさりび。
シートベルトが食い込む平太。思わずスマホを落としそうになる。
車の前20m先に執行人が立っていた。
しかも運悪く、執行人の近くの歩道を平太の姉つぐ美が歩いていた。
「家から離れて走っていたはずなのになぜつぐ美さんが?!」
「あ!今日はレッスンの日だった」
ゆっくりとつぐ美の方を見る執行人。
つぐ美を人質に取られたら平太は自暴自棄になるだろう。
いさりびの決断は早かった。
「プレミアムモードの権利を出品しなさい!」
「え?」
平太はプレミアムモードの権利を1,000万Bポイントで出品。
すると執行人からの死の怖気は消え去り、そのままきびすを返してどこかに帰って行った。
平太といさりびは呼吸を忘れていたかのように息を荒くした。どっと疲れが出る二人。
ブッブー!と後ろからクラクションが鳴らされる。
車を安全な場所に停め、歩道を歩くつぐ美を呼び止める。
「あー、平太。いさりびさんも。偶然じゃん!乗っけてくれるの?ありがてー」
プレミアムモード権利出品は一時的なもの。
誰かに購入されてしまって悪用されるのも困る。
それまでに何か対策を考えなければ。
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