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映画『あんのこと』と僕たちのこと

2020年。自殺者数は2万919人だそうです。
男性が多いのは例年通りですが、この年は女性の自殺者が増えた年でもあります。
その1人にあんが居ます。

コロナ禍が無ければあんは自殺しなかったことでしょう。
でも逆に言えば、あんはコロナ禍程度で社会から断絶されてしまう存在でもあったという見方もできます。

作中2人の男性がそれぞれあることをします。1人は言います。自分があんなことをしなければこうはならなかったのではないか、と。
もちろんきっかけ要因ではありました。ですがきっかけ要因だけでは自殺には至りません。
多くの人にはこの社会に踏みとどまることができる何かを持っているからです。
あんは不幸にも、いくつも、何度もそれを奪われ続けました。

この社会問題が難しいのは、あんだけを救えば済む話ではないということです。
この映画が描くように、誰かが救われると別の誰かが不幸を背負い込むような構造が、いたる所にあることが実感できるでしょう。


舞台挨拶が当たったため入江監督と河合優実さんのお話を拝聴できました。
実話ベースの物語ゆえの難しさや、入江監督の真摯な姿勢と河合優実さんの覚悟のようなものを感じ取ることができました。
そして参加されたスタッフのみなさんもそれぞれ様々な想いを抱きながら映画を作り上げていったようでした。

そのためこの作品は派手さや納得、カタルシスのようなものはありません。
だからこそ僕たちの社会を切り取ったものであると実感できるのです。

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