こんまりの番組見たら思ってたのと全然違った
正月に「男はつらいよ」を観た。
おかえりの方ではなく無印のやつだ。
観た後になんとも言えない気持ちになって、ずっとずっと登録を後回しにしていたネトフリに勢いで加入した。
ばばば〜っと男はつらいよを観ていたのだけれど、そこでハッとした。
「ネトフリ登録したからこんまり見れんじゃん!」
Netflixのこんまり、ずっと気になっていた番組ではあった。Twitterでよくネタにされていたし、自分もよく友達としゃべっている際にネタにしていた。
「ときめかないものはすぐ捨てられちゃうよ〜」みたいな感じで。
Twitterで話題に上がるこんまりの話を見ていて、頭の中に結ばれるこんまり像は「なんかアメリカで人気」「片付けしてる」「潔癖症?」「良い生活(笑)ガチ勢」みたいなとこだった。
正直あんまり良い印象は見られなかった気がする。少なくとも彼女へのリスペクトはそんなに感じられなかった。
しかし私にはこんまりに関するエピソードで一つ好きなものがあった。
「こんまりがぬいぐるみを捨てる回」がすごかった、というものだ。
なぜ我々はぬいぐるみを捨て難いのか、どうしたら捨てられるのか。
彼女曰くそれは「ぬいぐるみには目や口など、潤いを感じる部分がある。それを見ると我々はぬいぐるみを生き物のように捉えてしまい、捨て難くなってしまう。」なので、「潤いを感じる部分、目や口をテープで覆う、そうすると捨てられる。」とのこと。
そのエピソードを聞いた時、私の脳裏には虫も殺さぬようなこんまりが、ガムテープでぬいぐるみ達の顔をぐるぐる巻きにして、「これで捨てられますね!」とそれらをポリ袋に入れて、さらっと捨ててしまうというシュールな映像が浮かんだ。
おそらくこんまりの番組はゴルゴ13のような鬼軍曹こんまりが、アメリカの現代社会に溢れるモノをブルドーザーで回収し、怒涛の勢いで捨てていくという内容なのだろう、と思った。
「こんまりカッケー!マジヒップホップじゃん!」
と思っていた。
……で、実際に番組を見たところ、全然違った。
こんまりは超普通の日本人女性だった。背が低くて、か弱そうで、ふっつうのスカート履いて。頑張ってテンションあげてアメリカ人に合わせて会話を成立させようとしているところすら日本人臭い。
しかも英語結構下手だし基本難しいことは通訳さんにやってもらう。ゴルゴ13らしさはどこにもなかった。背後に人がたっても気にしていなかった。
こんまりが出会うアメリカ人はみんな結構ハイテンションだし、良い家庭に見えた。広い家、笑顔のたえない家族。しかしどこの家庭も物に溢れ部屋は雑然としている。
そんで掃除が始まる。
こんまりはまず持ってるものを全部出させて、部屋の中央に並べされる。
すると相談者の家族は大抵驚くような量のモノと対峙することになる。その時視聴者も家の住人も思うのだ。
「あれ、これちょっとヤバくね?」
そこからこんまりお得意のときめくモノだけ残していく、こんまりメソッドとか細かい話が出てくるのだが(それにしても結構ふんわりしているように思えるこんまりメソッドはいずれもとてもロジカルなことがわかった。これも結構発見だ。)それよりも気になったのは合間に挟まれる家族達へのインタビューだ。
掃除をしながら家族や自分について独白する人々はどこか浮かない。そこで視聴者は楽しげでパワフルでキラキラしているように見えた家族たちの、悩みや病んだ部分を見せられるのだ。
例えば夫婦仲が上手くいっていないとか、ストレスを感じると爆買いしてしまうとか、そんなノリなのだけれど。
その家族が持っている歪みが、知らず知らずのうちに「部屋の散らかり」として蓄積し、表面化していたのだ。
家族達は、部屋に溢れたモノを片付けながら否応無く自分の歪み、と対峙することになる。
これはとても辛い作業だ。勇気のいることだと思う。
私はそこで結構ギクリとした。私の部屋は掃除はしているものの、モノに溢れて結構汚いのだ。
ほとんどが本と漫画だ。
特にやばいのがBL漫画と呼ばれるやつだ。
これにはちょっとした理由があって、2~3年ほど前、私はそこそこブラックなデザインの個人事務所にいた。
不幸自慢みたいになるので話ははしょるが結構キツキツのキツだった。
そんな生活の中、私は休憩時間、夜な夜な渋谷のブックオフ(もうなくなった)に行き、100円棚に置かれたBL漫画をひたすらに買いまくった。
BL漫画は出会って恋してセックスして、が大抵一冊で完結する、とてもスピディーなコンテンツだ。
しかも甘やかな夢に溢れており、そのほとんどハッピーエンドだ。それらは家に帰って寝る前のわずかな時間、私を癒してくれた。
今思うと軽く病気(笑)だったと思う。
今でこそ職場も変わり、爆買いすることはなくなったが、あの時買ったBL漫画、500冊以上が未だに床に積まれている(本棚には入りきらない)。
番組の話に戻るが、家族達の片付け、は軽く一ヶ月くらいかかる。
なぜならこんまりは捨てるものと残すものを選ぶ行為をする際に、必ず一つ一つのモノを手に取ることを推奨しているからだ。そして感謝をしろと言う。
自分がこんまりメソッドに基づいて片付けをすることを想像するとゾッとする。同時になぜ自分が部屋を片付けられないかがわかった。
漫画一冊一冊を持つと、当時の自分に向き合うになるだろう。
心の病みは部屋に直結する。
しかしそれはモノ一つ一つに真摯に対峙し、向き合うことで乗り越えることができる。
掃除が終わった家族達の心は晴れやかだ、問題に対峙し向き合い、乗り越える、、とまでいかなくとも自分の患部に背かず、向き合うことができるのようになるのは大きい。
こんまりの番組はゴルゴ13ではなかったし、お得な掃除の知恵番組ではなかった。
こんまりの番組は勇気と根気の必要な、痛みを伴う自己ヒーリング番組だったのだ。
私の部屋の床に転がるBL漫画たち、
それはあの時確かに私を慰めてくれた。
いつかきちんと対峙して、向き合わなければならないんだろう。
正月休みもっかい来ないかなぁ。。。
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