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旅立つ前に(5)~あと、写真撮影について~

長々と前説ばかり垂れて
なかなかタイトルの「ぶらり」をしないので
そろそろJAROに通報されそうですが(笑)
あと1回ご辛抱ください。

北朝鮮旅行に関してよく言われることに
「写真撮影をやたら禁止される」がありますよね。
どこへ行っても口うるさく「あれ撮るな」「これ撮るな」。
結局「キレイでいいところしか撮らせない」という
グチや非難はお約束とも言えます。

確かにインスタ映えが日常語になるほど
カメラや撮影が生活に溶け込んだ日本と比べると
制限が多いなと感じるのは事実です。
まぁそれでも最近はずいぶんユルくなったんですが。

●軍関係は撮っちゃダメ

まず絶対にダメなのがこれ。

「軍人」や「軍関係施設・車両」ですね。
ただこれはもうどこの国でも同じです。

この関係で鉄道車両や関連施設、
つまり列車や鉄橋、踏切なども撮ろうとすると
時々止められたりします。
いまのニッポンではあまり実感ありませんけど
鉄道をはじめとしたインフラ設備って
けっこうな「軍事機密事項」なんですよ。
そこを敵に攻撃されると大ダメージですからね。
日本でも戦時中はそうした情報が統制されてました。

まぁワタシらが写真1枚撮ったところで
北朝鮮軍をどうにかするような影響力はないんですが
そこはそれ、今もなお「戦時体制下」のお国ですから
カメラ向けられるとやっぱり止めちゃうワケです。

「建設現場」もよくダメ出しを食らいますね。
これは「未熟な技術を見られたくないからだ」とか
「キタナい場所を見せたくないからだ」と言われます。
ま、それもあるにはあるんでしょうが
ここにも軍人が多いことが大きな理由のひとつです。

例えばこうやって何気なく工事中のビルを撮ると…

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実は写り込んでる人が軍人だったりするんですね。

無87題


北朝鮮には専門の建設会社というものはないようで
ほとんどが軍隊を動員して作業が行われています。
ま、それもどうかとは思いますが(笑)、
軍隊ほど統率が取れてよく働く屈強な若者集団もないわけで
考えようによっては建設現場にはピッタリの人材。
あちこちの現場で「決死の総進軍」に邁進しています。
なので工事現場はどうしても軍人を撮影しちゃうリスクが高い。
もちろん軍人がいない現場もあるんですが
いちいち細かく確認できないので
「とりあえずダメ!」となっちゃうようです。

あと駅前や街中の雑踏、バス待ちの停留所など
人が多いところもよく撮影止められたりしますが
これもそうした理由が関係していることが多いようです。
やっぱりいつ軍人が写り込むかわかんないから。

バス停を撮ると、ほら。

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なぜかヤンキー座りww


さらに地方都市でのトラックなんかも要注意です。

IMG_9323 - コピー

軍人の移動によくトラックが使われるんですよ。

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こんなのわかんねーってww

もっとも、こうした写真があるからといって、
つまり「軍人の顔を撮った」からといって
ジャ〇ーズのアイドルじゃあるまいし
何がどう問題なんだよ、とも思えます。 実際ココにあるし…

これ、現実には写真に撮られた結果論ではなく
むしろ「カメラを向けてること」が相手に見つかるメンドさが
そもそもの理由のようです、おもに「ガイド的」に。

もちろん理屈がどうあれ、
まず第一に軍人などが撮影禁止対象であることと
そういう行為はスパイ活動と疑われる、というのが
北朝鮮に限らずいちおう世界標準の大前提ですが
もうぶっちゃけ、撮った写真そのものがどうこうではなく
相手に「写真撮っただろ!」と見とがめられることや
出国検査などで撮ったことが後からバレたときに
担当していたガイドが立場上非常に困る、のが真相かと。

まず撮った本人がガッツリ絞られるのは当然ですが
「どうして’お客様’にきちんと教えてあげなかったのだ」と
ガイド自身もあとですごく叱られるそうなんですね。
おまけに、この「ミス」はずっと彼の記録に残るらしい。
なるほど、こりゃ神経質にもなるわな。ちょっと同情。

ちなみに、板門店や戦勝記念館などの見学の時
現地で案内解説してくれるカーキ色の人。
これも正真正銘の軍人さんなんですが
この人たちは「撮られるのもシゴトのうち」らしく
みなさん笑顔で記念写真に納まってくれます。

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           あんまり笑顔じゃねーなw

ただこれらはあくまでも例外。
説明担当以外で近くにいる軍人さんも撮ろうと
カメラを向けるとやっぱり怒られますので念のため。

●一般の人たちはどうか

じゃ、軍関係じゃない一般市民ならいいのか。

一日あちこち観光して回りながらふと車窓に目をやると
仲良く手をつなぐ買い物帰りの親子、

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公園でのんびりとくつろぐお年寄り、

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ちょっと気になる可愛いオンナノコ(←掲載は自粛w)…


ご立派な建造物や展示施設に正直飽きてきたところで
こうした素朴で自然な風景が見えてくると
つい新鮮に感じて次々と撮りたくなっちゃいます。

ま、走る車内からテキトーに撮ってる分には
あまりストップもかかりませんが
停車中の車内から思いっきり望遠レンズで狙ったり
車外で直接おもむろにカメラを構えたりすると
やっぱりまた注意される、ってなこともあります。

軍人じゃないからいいやんか、というところですが
まぁ一言で言えば、今度は一般の人たちが
「写真に撮られ慣れていないから」と言うわけです。

確かに数年前から北朝鮮でもデジカメなんかが登場して

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お互いに写真を撮りあったりする機会も増えましたし

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最近ではスマホも急速に普及してきたので
ますます写真が身近になってきたのは事実です。
(ピョンヤンの一部富裕層だけかもしれませんが)

それでもやっぱりまだ写真は「記念に撮るもの」。
どこかへ行った時、何か行事やイベントがあった時に
きちんとポーズ付けて撮るもの、なんです。
今でも観光地では「記念写真屋さん」が繁盛している国です。
写真とはそういった改まったものという認識が残ってるので
日常の普段の姿や表情を撮るということが一般的でない。
日本などではそういうスナップ写真も浸透してますよね。
みんながカメラマンのようにあちこちでバシバシ撮るので
どこで誰がカメラを向けていようとあんまり意識しませんし、
そもそも最近は他人に無関心な人が増えました。

しかし、そのへんがやはり北朝鮮は違います。

アイス食べながら歩いてたり、すっぴんでダラけていたり、
「写真を撮るハズがない」ものにカメラを向けると
本人だけではなく周囲の人々も違和感MAX、
どうしても「なんでやねん!」となるわけです。

もちろん恥ずかしがりながらも受け入れてくれたり
あえて知らんぷりで無視したりする人が多いんですが
時にはやっぱり気に障って
「何撮ってんだよオメー」ってな感じで絡む人もいます。
そうなるとまた担当ガイドが面倒なんですよ(苦笑)

とにかく何事もなく無事に旅程を終わらせるのが彼らの使命。
途中にトラブルを起こしたくない一心から
先回りして止めるケースが出てきてしまうんですね。
そのへんの場の空気感はやっぱりガイドがよくわかるので
撮る前に確認するように気を付けることが大切。
そうしていれば大概は大丈夫です。

ちなみに、お店でカワイイ店員さんなどを撮りたくなったときは
きちんと声をかければ撮らせてくれることが多いですよ。

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    我ながらヘタだなぁ(泣)
    せっかくのチャンス、もうちょっと上手に撮らねば…

●日本人は特に…

あと、ガイドがぼそっとボヤいていたところでは
「日本人は何でもかんでも撮ろうとするので疲れる」
とのこと。

たしかに、北朝鮮旅行なんてめったにない機会ですから
見るもの見るものどれもが全て珍しい。
ついついなんでも写真に…という傾向はあります。

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こんなゴミ箱撮ったりね(笑)

なかには建物の裏へ回ったりトイレや物置を覗いてみたり
さらには撮ってないふりしての隠し撮りや突然のゲリラ撮影まで
どんどんと行動がエスカレートする人も少なくないんだとか。
そうなるとますますトラブルのリスクが高まるので
もう最初からウルサく止めておくようになってしまうと。

「欧米人はそんなに撮らないんですか」と聞いたら
「はい。」だって。即ひとことで断言ww
「日本人はずっとカメラを構えていつシャッター切るかわからない」
から、ずっと見ていて疲れるんだと言ってました。
なので、どうしても日本人に対しては対応が辛めになるそうです。
欧米人と日本人では市民が持つ印象が違うのも事実ですしね。

なんだよいろいろメンドくせーな、と思うかもですが
まぁ確かにニッポンの私たちだって
いくらスナップ写真に慣れた文化だとはいえ
例えば中国人などの外国人観光客たちがもし
朝、通勤通学でテンション最低な駅前の歩道で
いきなり黙ってあなたにレンズを向けてきたり、
自宅の近所をカメラ持ってうろついてたりしたら
たとえ直接の抗議まではしなくても
「チッ」と心で舌打ちはするでしょ。
そのへんの感情はおんなじだと思います。

肖像権なんて言葉は北朝鮮には(たぶん)ありませんが
知らない人には撮られたくない気持ちがあるのは一緒。
そのうえ文化も習慣も違うんだから感覚も違う。
やっぱり撮影も時と場所を選ぶマナーと確認は必要でしょうね。

こちら万寿台銅像前での新婚さん夫婦。

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こういう場面だと
一般の人でも快く撮影させてくれます。

●過去の出来事が…

このようにいろいろとウルサイ写真撮影制限ですが
これには以前の一時期にあった日本人の行動が
実は影を落としているんだそうです。

やはり20年ちょっと前のことなんですが
当時はちょうど北朝鮮が海外の観光客を
外貨稼ぎでいよいよ積極的に受け入れ始めたことで
日本でも北朝鮮旅行が一時ミニブームになりました。

そして多くの日本人が北朝鮮へ旅行に行ったり
取材に出かけたりしたんですが、
その際に一部のマスコミ関係者などが
古い農家やオンボロの車、商品が少ない店舗、
そのほか大荷物で買い出しのように列車に乗る市民…
そういうもの撮影した場面ばかりを編集して
ちょっと悪意を持った興味本位な紹介をしたことがあって
これが大変に北朝鮮当局の反感を買ってしまったんです。

で、それ以降ピョンヤン駅の中や第一百貨店へも
撮影どころか立ち入ることすら禁止され、
日本人観光客全体の行動に対しても
厳しい眼が向けられるようになってしまいました。
なので実際、欧米などからの観光客には
いまもそれほどうるさく言わないそうです。
どうやら最初にヘンなイメージを与えてしまったのが
こうした姿勢の原因にもなっているようですね。

そんな経緯も知りつつ、
ガイドや市民の皆さんと
うまくコミュニケーション取りながらカメラを構えれば
「スクープ」は撮れませんが
きっといい写真がいろいろ撮れると思いますよ。


さて、お待たせいたしました。
ではいよいよ次の記事から
今回のワタシの北朝鮮訪問記を綴っていきますね。

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