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推し列伝1『ファイアーエムブレムif』イザナ


私が二次創作活動を始めるきっかけになったのは『ファイアーエムブレム
if』のキャラクター、イザナだ。
中立国イズモ公国の公王であり、神祖竜の末裔で予知の力を持つ。白金色の長髪に細面かつ糸目で神々しい雰囲気だが言動は軽く、だいたい語尾に「〜」がついている。
if』自体はキャラクター人気が高く結構売れたゲームだがイザナはストーリー上1シーンしか出番がなく、拠点のレベルアップによって出現する隠し仲間ユニットで、かなり知名度が低い。「そんなキャラもいたな」程度である。
しかしDLCの第三シナリオ『インビジブルキングダム(通称・透魔ルート)』においては立場が違う。
イザナはかなり序盤に登場し、主人公カムイに非協力的な義兄弟を説得し仲間に引き入れる代わりに死亡する。
正確に言うと自らの命と引き換えに神託を授かりに行って死ぬのだが、この神託、内容が薄くて正直やらなくてもいい代物。
彼が常日頃行う予知の方がよほど核心を突いていたので「義兄弟を全員生存させるストーリーを作るための都合で殺された」ような印象を持った。
そして同時に「カムイのためにイザナが命を張る理由があるのか?」という疑問を抱いた。
隠しキャラクターにそんなものはないと思うが、と興味本位で別ルートのデータをロードし、イザナとカムイの友好度を上げて支援会話を見た。

カムイが男性の場合、イザナは公国の恩人への礼と称して豪華で重すぎる衣装や多すぎて食べきれない量の郷土料理を用意し『究極のおもてなし』を行う。
それはどうやらカムイを試すためのものだったようで「人を思いやれるキミならこれから先に何があっても大丈夫」と太鼓判を押して終わる。意味深ながら、まあ普通に良い話といったところか。
そしてカムイが女性の場合、カムイはイザナに得意の占いを頼む。
これが、かなりイザナという人物に踏み込んだ内容だった。

イザナは喜んで占いを引き受けるが、占いの結果はカムイの体調を気遣うものやあってもなくても良い気休め程度のもので、カムイや軍の動向を決めるような大それたことは告げられない。
カムイはふと、良いことだけでなく悪いことも相手に伝えなければならない占者(イザナ)はつらく大変だろうと思いやる。
するとイザナは「キミは優しいね」と切なげな表情を浮かべ、直後に茶化して立ち去ってしまう。
次に会った時、イザナは弁解する。

キミが気にすることはないよ。
あの時はね、大変な運命を背負っているキミに
的を射たことを言われてしまったからね
何も言えなくなっただけなんだ
「誤魔化そうと思ったのに、
キミには見破られてたようだね~。
心配させちゃったみたいだ」

カムイが今後どうなるか、ある程度把握しているかのようなセリフである。
これにカムイはこう返す。

「これから辛いことがあるとしても
まだそれは未来の話です。
変えられるチャンスなんていくらでもあります。
それに、私には支えてくれる仲間がいる。
だからどんな運命だって、
きっと良い方向に変えてみせますよ」

可能性を信じるカムイの明るい言葉にイザナは同意し、カムイと仲間たちの未来が明るいものであるように祈る。
この言葉はイザナにとってかなり印象に残ったようで、恋愛感情を抱き結婚するという内容の支援Sにおいても触れられている。

キミが未来を変えてみせると言った時、
ボクはキミの力になりたいと思ったんだ。
キミの言葉がボクを強くしてくれた。
キミへの気持ちもその時に生まれたんだ」

これは一部抜粋だが、全文は困難な道を進もうとする人を心から支えようとする誠実な告白である。
ここまでは予想通りだった。
問題は二人がめでたく結ばれた後のやりとりにあった。

if』では3DSのタッチスクリーンを用いて、マイルームに招いた仲間をペンでタッチして絆を深める、俗にifパルレと呼ばれるシステムが存在する。
タッチ中のキャラはLive2Dアニメーションで動くうえにフルボイスであり、キャラの魅力をいっそう高める役割を果たしている。
そしてカムイの伴侶となったキャラクターはマイルームに常駐し「一緒に過ごす」コマンドで夫婦ならではの会話、スキンシップを図れるのだ。
ほとんどは単にイチャイチャしているだけなのだがスキンシップ終了時の一言にパターンがあり、値を最大にした際のものが

「キミは強大な力を持っているけど、辛い時はボクを頼ってね?
キミのためなら命だって差し出せる。
たとえ二人が相容れない世界でもボクは、君のために死んでみせるよ」

である。
さっきも書いたが動くしフルボイスである。
初見の時、愕然としたのを覚えている。

透魔ルートに入る前にイザナのこのセリフを見た人はどれだけいるだろう。
私のように彼の死を不可解に思い、イザナについて深く知ろうと、唯一支援会話があるカムイを関わらせた人もどれだけいるだろうか。
イザナが唯一死亡する透魔ルートが存在しなければ矛盾してしまうセリフが出てくるとは正直、想像していなかった。

『ファイアーエムブレムif』はそもそもキャラクター人気こそあれどストーリー上の説明不足や強引な展開が多く、
透魔ルートにおいてはそれがさらに顕著で、前述の通りイザナも特に死ぬ必要のない場面で退場しているのだが
少ないイザナの発言を全て拾っていくと
「イザナはカムイを愛していたので本当に死んでみせました」と受け取るほかないような心持ちになってくる。
だが透魔ルートのカムイはイザナの「死んでみせる」を聞いていないため、彼の真意を知らずに仲間たちと先へ先へと進んでいく。
イザナもおそらくそれでいいと思っている。

「全員救済ルートっぽかったのにそんなことある?」※イザナのほか女騎士クリムゾンも確定で死ぬ
「カムイへのクソデカ感情が過ぎる」
「同じ設定持ったキャラが仮に風花雪月に出てたら多分とんでもない沼が生まれていた」
「マイナーすぎてどれだけこっちが荒ぶろうとFEHにも無双にも一生出てこないの草」

などイザナへの感情がめちゃくちゃになってしまい『ファイアーエムブレムif』をクリア後、三年くらいイザナ×カムイしか書いてなかった。
イラストや小説を描くことで己の中で整理をつけようとしていたのかもしれないが、未だに精算しきれない想いがある。

あれから月日が経ち、今年(2022年)8月末日に3DSへの残高追加ができなくなり
年末には配信そのものが終了しDLCやダウンロード専用ゲームが新たに遊べなくなる=透魔ルートを遊べない、知らない『if』プレイヤーがいつか現れる。
そう思うと、どうにかイザナ関連のあれこれを書き留めておきたくなった。
出番は少ないけど私の人生において大きな転機となったキャラクターなので
機会があったら遊んだりプレイ動画見たりしてほしい。
Live2Dで笑顔+上下にぴょんぴょん跳ねるとことか天才の発想なので